■ドイツを代表する自動車メーカーのフォルクスワーゲン(VW)社を巡る不正ソフト問題で、企業モラルが問われています。VW社は今年4月に米国の評価格付会社であるレピュテーション・インスティチュート社(以下RI)が、世界各地の各企業の評判・評価のランキングで14位になりましたが、今回の不祥事で一気にその順位を下げてしまいました。
↑9月4日に高崎駅東口にオープンしたばかりのフォルクスワーゲン高崎店。いきなり逆風に見舞われた感じだ。↑
最初にVWの不正ソフトについて報じられたのは9月18日でした。米環境保護局(EPA)が同日、排ガス規制を逃れるソフトウェアを搭載していたとして、独自動車大手のVW社に対して、米国で販売された約48万2千台のシステムを改修するように求め、EPAなどは大気浄化法に違反する疑いがあるとして調査に着手したという記事でした。
報道では、米当局は同法違反で1台あたり最大3万7500ドルの制裁金を課すことができ、VWへの制裁金は単純計算でも最大180億ドル(2兆1600億円)に上る可能性があるということでした。
EPAによれば、対象はVWとVW傘下のアウディの直列4気筒ターボディーゼル「TDI」エンジンを搭載した車で、該当車種は2009年から15年までに発売されたVWのゴルフ、ビートル、ジェッタ、アウディのA3と、14年から15年に発売されたパサートの計5車種。いずれもVWグループを代表する人気シリーズです。
問題になった不正なソフトウェアは、当局の排ガス試験が行われていることを、ハンドルの動きの有無や速度パターンなどから自動的に検知し、テストをしている間だけ排ガスを低減する仕組みになっており、通常走行の場合は排ガスを抑える効果が限られ、最大で基準の40倍の窒素酸化物(NOX)を排出していたのだそうです。
■筆者もかつて青年海外協力隊に参加した1970年代末ころ、途上国で小型の舶用機関の整備の指導を行っていましたが、実際には自動車のエンジンの不具合の修理もしばしば依頼されたりしました。当時の自動車や船のエンジンは、機械的な構造で、非常に分かりやすく、修理し易かったのを覚えています。
自動車のボンネットを開けても、ボルトを締めたり緩めたりするスパナを突っ込む隙間が十分あり、エンジンの簡単な調整や修理は自分ですることが可能でした。
当事は、ガソリンエンジンの点火装置として、機械制御式点火装置であるコンタクトブレーカーがしょっちゅう摩耗して、隙間ゲージで定期的に調整しなければなりませんでした。ところが、CDIと呼ばれる電子制御式点火装置が登場し、煩わしいタイミング調整が不要となり、画期的な技術だと驚いたことがあります。
その後、瞬く間に電子点火方式が普及し、間もなくエンジン全体の制御も電子化され、さらにコンピュターを使った人工知能により、エンジン各部の様子をセンサーで計測し、そのデータをもとに最適な運転条件を自動的に設定できるようになりました。
自動車用ガソリンエンジンでは、ガソリンを空気と混ぜる気化器(キャブレーター)が姿を消して、燃焼制御がやりやすい燃料噴射方式が主流となりました。
■そのため、かつてはいかに不具合を迅速に的確に把握して、その原因をつきとめ、最小限の部品交換や適切な調整により、不具合を改善するのがエンジニアとしての責務と思われていました。しかし、今や、そんなことをしていたら、時間ばかりかかって作業効率がアップしません。
今は部品ごとそっくり交換する、いわゆる「チェンジニア」が周流となりました。エンジンの調整も、全てマイコンチップとよばれるマイクロコンピューターが司り、中身は完全にブラックボックス化しています。
■先日、ドイツ製の船舶用高速ディーゼルエンジンを間近に見る機会がありました。軽量で高出力のエンジンですが、ディーゼルエンジンの場合、スタートと同時に真っ黒な黒煙が排気ガスとして立ち上るのが常ですが、今のこのドイツ製ディーゼルエンジンは全く黒煙が出ません。アイドリング速度も、自動的にぴったりと毎分600回転ちょうどで安定するのです。
このドイツ製エンジンはかつて、第2次大戦中に砂漠のキツネと呼ばれたロンメル将軍の機甲師団が使っていた戦車に搭載されていたことで知られており、現在、世界中で、産業用、輸送用に使用されています。
ドイツのエンジン技術水準の高さに驚かされましたが、今回のVWの不正ソフト事件をきいて、再び驚かされました。
■VWの不正ソフト事件はその後、大きな広がりを見せて現在に至っています。不正ソフトのエンジンを搭載した車が世界に1100万台もあること、不正関与を否定していた前会長が実は不正行為を知らされていたこと、数年前から不正ソフト使用について告発情報があったがそれらが握りつぶされてきたこと。あの、生真面目なドイツ人気質からは極めて想像しにくい数々の出来事です。
■不正があったとされたのが、VWとVW傘下のアウディの直列4気筒ターボディーゼル「TDI」エンジン。該当する車種は2009年から15年までに発売されたVWのゴルフ、ビートル、ジェッタ、アウディのA3と、14年から15年に発売されたパサートの計5車種。いずれもVWグループを代表する人気シリーズです。VWは、この問題に対応する間、対象車種の米国での販売を中止するはめに追い込まれました。そして、制裁課徴金は2兆円超になると言われます。
上記5車種はエンジン制御ECUのソフトトウエアの中に「defeat device」プログラムを挿入し、米国環境保護局(EPA)の排ガス試験の際にこのプログラムが稼働し、NOx(窒素酸化物)を無効化して試験をクリアしていたということです。米国EPAは、該当車は実際には排出ガス基準の40倍のNOxを排出していたと説明しえいます。
今回の制裁課徴金は1台当たり3万7500ドル(約450万円)、リコール該当台数は約48万台と見られており、そうなるとVWが支払う制裁課徴金は最大180億ドル(約2兆1600億円)に上る計算になります。
VWは9月22日になって、対策費用として65億ユーロ(約8700億円)を特別損失に計上すると発表しましたたが、今回の問題は米国だけにとどまるかどうか、予断を許しません。このエンジンを搭載した車は全世界で約1100万台販売されており、これらがすべて不正とされた場合、VWに与える影響は極めて深刻だからです。
■日本をはじめ世界市場への影響は必至と考えられます。フォルクスワーゲン グループ ジャパン(VWJ)がミドルサイズセダンの新型「パサート」と、同ステーションワゴンの新型「パサート ヴァリアント」を発売してから1カ月後の7月末に、既にシリーズとして約1500台を受注。好調なスタートを切っていたばかりでした。
折から、高崎駅東口の群馬トヨタの向かい側に、フォルクスワーゲン正規販売店「フォルクスワーゲン高崎」 が新規オープンしたのは9 月5 日(土)でした。新規オープンしたばかりなのに、この様な問題が発生し、出鼻をくじかれた形です。グローバル企業の持つ光と影の面が紙一重という観があります。
ビジネスの世界では、このように虚偽の情報を流すことは極めて大きなリスクを伴いますが、なぜか我が国の行政では、虚偽の公文書が堂々とまかり通っています。当会では、日本社会の閉鎖性の元凶の一つである行政体制のオープン化をめざし、微力ながら全力を傾注してゆく所存です。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
↑9月4日に高崎駅東口にオープンしたばかりのフォルクスワーゲン高崎店。いきなり逆風に見舞われた感じだ。↑
最初にVWの不正ソフトについて報じられたのは9月18日でした。米環境保護局(EPA)が同日、排ガス規制を逃れるソフトウェアを搭載していたとして、独自動車大手のVW社に対して、米国で販売された約48万2千台のシステムを改修するように求め、EPAなどは大気浄化法に違反する疑いがあるとして調査に着手したという記事でした。
報道では、米当局は同法違反で1台あたり最大3万7500ドルの制裁金を課すことができ、VWへの制裁金は単純計算でも最大180億ドル(2兆1600億円)に上る可能性があるということでした。
EPAによれば、対象はVWとVW傘下のアウディの直列4気筒ターボディーゼル「TDI」エンジンを搭載した車で、該当車種は2009年から15年までに発売されたVWのゴルフ、ビートル、ジェッタ、アウディのA3と、14年から15年に発売されたパサートの計5車種。いずれもVWグループを代表する人気シリーズです。
問題になった不正なソフトウェアは、当局の排ガス試験が行われていることを、ハンドルの動きの有無や速度パターンなどから自動的に検知し、テストをしている間だけ排ガスを低減する仕組みになっており、通常走行の場合は排ガスを抑える効果が限られ、最大で基準の40倍の窒素酸化物(NOX)を排出していたのだそうです。
■筆者もかつて青年海外協力隊に参加した1970年代末ころ、途上国で小型の舶用機関の整備の指導を行っていましたが、実際には自動車のエンジンの不具合の修理もしばしば依頼されたりしました。当時の自動車や船のエンジンは、機械的な構造で、非常に分かりやすく、修理し易かったのを覚えています。
自動車のボンネットを開けても、ボルトを締めたり緩めたりするスパナを突っ込む隙間が十分あり、エンジンの簡単な調整や修理は自分ですることが可能でした。
当事は、ガソリンエンジンの点火装置として、機械制御式点火装置であるコンタクトブレーカーがしょっちゅう摩耗して、隙間ゲージで定期的に調整しなければなりませんでした。ところが、CDIと呼ばれる電子制御式点火装置が登場し、煩わしいタイミング調整が不要となり、画期的な技術だと驚いたことがあります。
その後、瞬く間に電子点火方式が普及し、間もなくエンジン全体の制御も電子化され、さらにコンピュターを使った人工知能により、エンジン各部の様子をセンサーで計測し、そのデータをもとに最適な運転条件を自動的に設定できるようになりました。
自動車用ガソリンエンジンでは、ガソリンを空気と混ぜる気化器(キャブレーター)が姿を消して、燃焼制御がやりやすい燃料噴射方式が主流となりました。
■そのため、かつてはいかに不具合を迅速に的確に把握して、その原因をつきとめ、最小限の部品交換や適切な調整により、不具合を改善するのがエンジニアとしての責務と思われていました。しかし、今や、そんなことをしていたら、時間ばかりかかって作業効率がアップしません。
今は部品ごとそっくり交換する、いわゆる「チェンジニア」が周流となりました。エンジンの調整も、全てマイコンチップとよばれるマイクロコンピューターが司り、中身は完全にブラックボックス化しています。
■先日、ドイツ製の船舶用高速ディーゼルエンジンを間近に見る機会がありました。軽量で高出力のエンジンですが、ディーゼルエンジンの場合、スタートと同時に真っ黒な黒煙が排気ガスとして立ち上るのが常ですが、今のこのドイツ製ディーゼルエンジンは全く黒煙が出ません。アイドリング速度も、自動的にぴったりと毎分600回転ちょうどで安定するのです。
このドイツ製エンジンはかつて、第2次大戦中に砂漠のキツネと呼ばれたロンメル将軍の機甲師団が使っていた戦車に搭載されていたことで知られており、現在、世界中で、産業用、輸送用に使用されています。
ドイツのエンジン技術水準の高さに驚かされましたが、今回のVWの不正ソフト事件をきいて、再び驚かされました。
■VWの不正ソフト事件はその後、大きな広がりを見せて現在に至っています。不正ソフトのエンジンを搭載した車が世界に1100万台もあること、不正関与を否定していた前会長が実は不正行為を知らされていたこと、数年前から不正ソフト使用について告発情報があったがそれらが握りつぶされてきたこと。あの、生真面目なドイツ人気質からは極めて想像しにくい数々の出来事です。
■不正があったとされたのが、VWとVW傘下のアウディの直列4気筒ターボディーゼル「TDI」エンジン。該当する車種は2009年から15年までに発売されたVWのゴルフ、ビートル、ジェッタ、アウディのA3と、14年から15年に発売されたパサートの計5車種。いずれもVWグループを代表する人気シリーズです。VWは、この問題に対応する間、対象車種の米国での販売を中止するはめに追い込まれました。そして、制裁課徴金は2兆円超になると言われます。
上記5車種はエンジン制御ECUのソフトトウエアの中に「defeat device」プログラムを挿入し、米国環境保護局(EPA)の排ガス試験の際にこのプログラムが稼働し、NOx(窒素酸化物)を無効化して試験をクリアしていたということです。米国EPAは、該当車は実際には排出ガス基準の40倍のNOxを排出していたと説明しえいます。
今回の制裁課徴金は1台当たり3万7500ドル(約450万円)、リコール該当台数は約48万台と見られており、そうなるとVWが支払う制裁課徴金は最大180億ドル(約2兆1600億円)に上る計算になります。
VWは9月22日になって、対策費用として65億ユーロ(約8700億円)を特別損失に計上すると発表しましたたが、今回の問題は米国だけにとどまるかどうか、予断を許しません。このエンジンを搭載した車は全世界で約1100万台販売されており、これらがすべて不正とされた場合、VWに与える影響は極めて深刻だからです。
■日本をはじめ世界市場への影響は必至と考えられます。フォルクスワーゲン グループ ジャパン(VWJ)がミドルサイズセダンの新型「パサート」と、同ステーションワゴンの新型「パサート ヴァリアント」を発売してから1カ月後の7月末に、既にシリーズとして約1500台を受注。好調なスタートを切っていたばかりでした。
折から、高崎駅東口の群馬トヨタの向かい側に、フォルクスワーゲン正規販売店「フォルクスワーゲン高崎」 が新規オープンしたのは9 月5 日(土)でした。新規オープンしたばかりなのに、この様な問題が発生し、出鼻をくじかれた形です。グローバル企業の持つ光と影の面が紙一重という観があります。
ビジネスの世界では、このように虚偽の情報を流すことは極めて大きなリスクを伴いますが、なぜか我が国の行政では、虚偽の公文書が堂々とまかり通っています。当会では、日本社会の閉鎖性の元凶の一つである行政体制のオープン化をめざし、微力ながら全力を傾注してゆく所存です。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます