市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

公害汚染土壌の始末を被害住民に負わせ新スラグ置き場の造成に躍起な東邦亜鉛の公害企業体質の健在ぶり

2016-06-06 22:53:00 | 東邦亜鉛カドミウム公害問題
■現在、東邦亜鉛安中製錬所の周辺の畑地を対象に、公害防除特別土地改良事業(通称「公特事業」)と呼ばれる汚染土壌の撤去と新鮮土壌の客土を兼ねた土地改良事業計画が、平成7年から、安中市野殿、岩井地区で行われています。すでに20年以上が経過しているにも関わらず、未だに本格的な事業着手に至っていません。
 その理由として、東邦亜鉛による政官への根回しと、一部の地域住民の懐柔による地域共同体の分断工作が功を奏していることが挙げられます。
 そうした最中、数年前に念願の産廃最終処分場を構内に設置した東邦亜鉛は、今度はかつて農民をだまし討ちにして分捕った土地に、新しいスラグ置き場を設置するための届出を提出し、さらなる工場の拡大を実現しようとしています。
 この新スラグ置き場がどのようなものなのか、東邦亜鉛からの説明が断片的で不十分なため、ひらく会の事務局長が、2016年5月17日付で、次の内容の情報開示請求を群馬県知事に行いました。

5月中旬に突然設置された大型バリケード。中を見せたくないという東邦亜鉛の秘密体質をひしひしと感じさせる。




現場に搬入された重機類が樹木の間から見える。6月2日朝撮影。

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<開示を請求する公文書の内容又は件名>
現在、東邦亜鉛㈱が安中製錬所の東端に、「新K砕保管・出荷場」の整備を計画していて、今年4月頃、群馬県に対して「設置届」を提出したという。この件に関する次の情報。
設置届の写し(計画の内容が分かる情報)
設置届が必要だとする国や群馬県の法令や条例そのた規則等が分かる情報(大気汚染防止法なども含まれると思われる)
東邦亜鉛が超高圧受電・変電等設備の整備のために入手した土地が、別の目的に使用されても問題ないということが分かる情報

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 その結果、上記のうち(1)大気汚染防止法第18条第1項に基づく一般粉塵発生施設設置届出書の写し、(2)大気汚染防止法、同法施行令及び同法施行規則の該当条項について、2016年6月2日(木)午前8時30分から高崎市台町にある西部環境森林事務所4階執務室で、事務担当課である「環境森林部 西部環境森林事務所 環境保全係 電話番号 027-323-530」によって、当該情報の部分開示がありました。

※開示された資料
1.公文書部分開示決定通知書
  PDF ⇒ 20160602mxoujm.pdf
2.一般粉塵発生施設設置届出書
  PDF ⇒ 20160602mxoujo.pdf
2-1 第1図 安中製錬所一般粉塵発生施設位置図
  JPEG ⇒ 20160602mxoujp.jpg

2-2 第2図 K砕保管・出荷場及び散水装置
  JPEG ⇒ 20160602mxoujq.jpg

2-3 安中製錬所位置図
  JPEG ⇒ 20160602mxoujn.jpg

3.関連法令
  PDF ⇒ 20160602mxouja.pdf

 なお、部分開示だったので、次の個所は不開示とされました。

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<開示しない部分の概要及びその理由>
群馬県情報公開条例第14条第2号 該当
(担当者氏名)
 特定の個人を識別することができる情報であるため。
群馬県情報公開条例第14条第3号イ 該当
(法人の印影)
 当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。

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■開示された情報を見ると、次のことが分かります。

(1)新しいスラグ置き場設置の届出書は5月19日付で県知事あてに提出されていたこと。

(2)着手予定年月日は5月23日、使用開始予定年月日は7月30日であること。

(3)面積は10,864㎡で、退席能力は66,300tであり、東邦亜鉛安中製錬所から年間排出される5万トンのスラグ量に対して、それが全量滞貨したとしても、さらに30%強もの余裕が見込んであること。

(4)新しいスラグ置き場の構造は、西岩井側では、農免道路にそって、幅6mの植栽エリアを設置。隣接地の畑との間も同様。周囲を幅4mのL型擁壁で四方を囲い、その上に高さ2mのフェンスを、北側の協立精工㈱側と東側の西岩井地区方向の2方向のみに設置。擁壁の最上部に直径50Aの散水配管を設置するが、散水バルブは北側の協立精工㈱側と、南側の山林及び畑側のみに設置。なぜ、すぐ近くに人家のある西岩井側には散水バルブを設置しないのか、その理由が不明。

(5)環境森林部によれば、東邦亜鉛は、新スラグ置き場の中央にある旧・変電所施設の既存建物等は撤去しない計画だというが、図面をみるかぎり、既存建物等の周囲に描かれている二点鎖線が何を意味しているのかは、不明。もし、ここにも擁壁を設置するとなると、その構造がどのようなものかについても、図面に明示がなく不明。

(6)新スラグ置き場へのアクセス道路は新電解工場側から幅10mの斜路を設置し(すでに完成)、入口付近にダンプトラック用タイヤ洗浄のための深さ40㎝、斜路部5m+水平部10m+斜路部5m=全長20mの窪地を設置するようだが、底面をどの程度の厚さのコンクリートにするのか、それとも、浸透タイプの舗装なのか、不明。同様に、擁壁の下部の捨コンの厚さや、新スラグ置き場全体の地表面の舗装の有無やその仕様についても記載がなく不明。
 ちなみに、東邦亜鉛安中製錬所では2016年4月9日の工場視察会後の意見交換の席上、この新スラグ置き場について、副所長が「まあ、井上道路さんの場合でしたら、あのう、何を置いてもいいというか、まあ、あんまり規制はないんですけど、当社の場合は、そのう、雨水の対策だとか、今言ったホコリの対策だとかですね、この辺きちっとやっぱりやって、地域の皆さんにもご理解をいただかなくちゃいけないということから、えー、考え方としては、あのう、要は地下浸透しないセメントの厚みのですね、えー、床にして、今言った塀を4m、高さ2mのフェンスで囲んで、えー、ホコリと音ですね。これを遮断して、えー、これは法的にはですね、あのう、一般・・・大気汚染防止法の一般・・・えー、えー、粉塵発生施設という、まあ、それ、今も、あのう、山の中腹にある置き場も同じなんですけれども、そういったものの法律が掛かります。で、まあ、当社としてはそれ以上の、ものをちゃんと作ってですね、それと、まあ道路の、あの、トラック、とにかくデカかくなっちゃってますんで、その、あのう、道路についても、会社側につくって、岩井のほうはもう完全に止めて、もう、そこにトラック・・・あそこ農免道路ですから、あっちのほうにトラックが、あのう、行き来しないような形にしたいということで、計画ができています。で、ですね、えー、大気汚染防止法の一般、えー、発塵施設については、えー、図面を出して、1カ月後に着工と言うことになっています。ですから、今はまだ、そのう、塀とか作る段階にはなっていません。井上道路さんから返してもらって、今、その事前のですね、あの、現況復帰を今、してもらっているところです。で、えー、図面を早急に出して、1カ月後に着工したいと思います。で、最終的には、えー、今年の10月に全部を完成させたいというふうに考えております」という発言がありました。次のブログ記事参照ください。

○2016年4月23日:近年になく紛糾した東邦亜鉛安中製錬所における4.9第25回工場視察会の参加報告(その2)↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1969.html
 これによれば、新スラグ置き場の床はすべて、有害物質が地下浸透しないように一定の厚みでセメントを打設することを示唆しているが、その工事要領が開示された情報にはどこにも見当たらないこと。

(7)スラグ(東邦亜鉛は「K砕」と呼ぶ)はロータリーキルンから約300mのベルトコンベアで運ばれて、新スラグ置き場の西南側に設置されるスラグ初期堆積場にある長さ約40mの給配用コンベアで、数か所に積み上げられ、移動式と思われるノズル散水設備で、余熱を持つスラグに散布するらしい。しかし、このあとスラグは重機によって、面積1ヘクタール余のスラグ置き場全体に移動されるのか、それとも、逐次ダンプトラックにより、速やかに出荷されるのか、何も記載がないこと。

(8)東邦亜鉛安中製錬所の副所長と環境管理室長が2016年4月26日に、地元の安中緑の大地を守る会の事務局を訪れて説明した際には、「現在、鉱物商品市況が下がっており、利益が非常に少なくなったことと、亜鉛を回収したあとのスラグが、かつては鉄原料として売れたが、今はほとんど価値がなくなってきてしまっていること。そのため、出来たら遊休土地に鉱滓置き場を作って、分別処理をすることで、少しでも資源ごみとして、価値を高めて、有価物として販売することで、利益の目減りを抑えたい」という意向が示された。次のブログ記事参照。

○2016年5月16日:安中緑の大地を守る会総会でわかった東邦亜鉛安中製錬所スラグ置き場新設計画の驚くべき概要
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1998.html
 これによれば、分別処理のためのスペースが必要と思われるが、開示された届出書を見る限り、分別処理を行う場所が特定されておらず、分別処理のために使用する機材も記されていない。本当にスラグを分別するのかどうか、極めて懐疑的にならざるを得ないこと。

(9)一連の手続きは2016年1月12日付で、東邦亜鉛㈱本社の手島達也社長から、同社安中製錬所の秋山武郎所長あてに出された委任状に基づいていること。

**********

■2016年4月9日の安中製錬所工場視察会後の意見交換会で、新スラグ置き場に隣接して畑を所有する安中緑の大地を守る会会員のNさんが次の意見を発表しました。それに対する東邦亜鉛安中製錬所幹部らの回答とその後のやり取りをもう一度見てみましょう。

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会員「Nです。あのう、今度ほら、鉱滓置き場というんですかね。あの隣がうちの、いま竹ヤブになっているんですけれど、あれは公特事業で(汚染土を)剥ぐんですよね。で、畑にするんですよ。で、そこの隣に、そういうもの(=新スラグ置き場)を置かれると、また畑が汚染されちゃうんじゃないかと思うんですよ。」

会社副所長「まあ、絶対そんなことがあってはいけないんで、えー、十分その辺も配慮します。で、まあ、あのう、バスの中でも説明しましたけれど、境目から1mぐらい下がったところに、えー、4mぐらいのですね、擁壁を作って、さらにその上に20mぐらいの鉄のフェンスで、それをホコリが飛ばないように、えー、十分するつもりであります。で、あのう、鉱さいというふうに言われましたけれども、ケイ滓については、もうそんなに、あのう、亜鉛の濃度も高くなくてですね、まあ、鉄が40パーセントぐらいのものなんですけれども、ホコリは出しちゃいけないっていう、あれになっているんですけれども、その辺は十分、あのう、配慮して、えー、せっかく公特事業をやるところを、また汚すようなことがあったり、あるいは、もうだいぶ住居もできているんでですね、そういう人たちに音とかホコリとか、嫌な思いはさせないようにしたい、ということで、一応、計画しています。」

会員「そういう、デカいものを作ると、今度は畑に対して風通しが悪くなるんじゃないかな?」

副所長「そ、その辺はあるかも・・しれないですね。ちょっと・・・まあ、それはちょっと、また話合いをさせてもらったりしてもらいたい。」

会員「この前も言ったんじゃあねえけれども、お墓のところと交換っつーことはできなえんかね?」

副所長「で、ですね、そのう、公特事業の土地については、えー、まあ、そのう、対会社と個人と・・やらないように行政のほうから指導もあってですね、気持ちはよーく分かるし、うちもそうしてほしいとは思うんですけれども、やっぱし個別にいろいろやっちゃうといろんな問題が起きるということので、そうしないでほしいと言われています。ということなんで、全体の中で、あのう、推進委員会の中で認めてもらうんであれば、いいと思うんですけれども、あのう、今個別でそれをやるということは、ちょっとできないんで、ご容赦いただきたいと思うんです。」

会員「あと、野殿に緑地帯をあんなに作るのに、岩井の、岩井の、こう人家と東邦亜鉛の間に、ちょうどあの辺は緑地帯にしても良いんじゃないかなんて、俺は思うんだけれどね。

副所長:そ、その件は会社として、ちょっとコメントできないので、あのう、まあ、そちらの対策委員会の方でですね、推進委員会の方で、えー、いろいろご討議していただければなというふうに思います。会社としては、その決まったことについて精一杯、協力をしていくような姿勢で臨んでいきたいと、いうふうに思っております。」
**********

■以上のように、東邦亜鉛側の受け答えを見る限り、地元住民からの意見に対して、真剣に対応する気持ちが希薄ではないかと懸念する向きがあります。無理もありません。長年にわたり、地元住民は東邦亜鉛に騙され続けて来たからです。

 とりわけ、東邦亜鉛安中製錬所からこれまでに排出された膨大な重金属を含む降下煤塵が周辺の住宅地、畑地、山林に降り注いだため、北野殿や西岩井、東岩井地区では土壌汚染が深刻になっています。そのため、汚染土壌を排土して、新鮮な土壌を客土として被覆すため、現在公特事業と称して、土地改良事業が進められています。

 ところが、平成7年当時は、重金属汚染のひどい土壌が分布する個所は、割合地表に近かったのですが、公特事業による土地改良事業を進める準備のため、最近、群馬県が汚染土壌の実際を調査したところ、重金属汚染のひどい土壌がさらに深い場所に移行していることが判明したのです。

 この結果、排土量がほぼ倍増したため、あろうことか群馬県はそれらの汚染土壌を、土地改良地内の窪地に埋め込む案を提示してきています。しかし、この方法は簡単ですが、重金属汚染土壌を残置することになり、将来を見据えたときに、なんら根本的な改善にはならないことから、筆者は今年4月12日に開かれた公特事業推進委員会の野殿地区委員会の席上、反対の意見を述べました。

 その結果、参加役員からは、「東邦亜鉛からの重金属による汚染土壌畑地問題なのに、群馬県が、汚染土壌の深化による排土量の増加を原因者である東邦亜鉛に負担を求めず、被害地区内に埋め込むというやりかたはおかしい。東邦亜鉛にも応分の負担を求めるべきだ」という意見が出されました。この意見は、推進委員会の総意として、行政を通じて東邦亜鉛に伝えることが決まりました。

■上記の通り、4月9日の工場視察会後の意見交換会で、会員のNさんが「野殿に緑地帯をあんなに作るのだから、西岩井の人家と東邦亜鉛の間には、スラグ置き場ではなく緑地帯にしてもらいたい」と東邦亜鉛側に要望しました。

 そして、4月12日の公特事業推進委員会の野殿地区委員会で、「倍増した汚染土壌の排土の受け入れ先として、原因者の東邦亜鉛にも応分の負担を求めるべきだ」とする決議が出されたのです。

 このような経緯を踏まえれば、会社の社会的責任(CSR)の立場から、東邦亜鉛は、新しくスラグ置き場など設置せずに、その場所を、汚染土壌の排土置き場にするのが、CSRに合致する唯一の方策ということになります。

 しかし、その僅か1か月後、東邦亜鉛は、新スラグ置き場の設置届出書を群馬県知事あてに提出してしまいました。

 そして、本日、現場を見ると、重機がすでに入って土砂を掘り返し始めているではありませんか。

■東邦亜鉛の新スラグ置き場設置届出書を受領した西部環境森林事務所の3階にある農村整備課によれば、5月の最終週に、職員が東邦亜鉛を訪問し、汚染土壌の排土置き場の受け入れについて相談したそうです。

 その際、東邦亜鉛では本社から部長が2名やってきて会議に同席し、北野殿地区にある安中運輸(東邦亜鉛の100%子会社)名義で所有する森林に、汚染土壌の排土を受け入れるかどうかについて、検討する姿勢を仄めかせたとのことです。

 この森林の場所は北野殿のカクレという場所にあるようですが、どこにあるのか定かではありません。面積もわかりません。

 それよりも、21万5334㎥(内訳:Ⅰ地区(排土厚30㎝)126,008㎥、Ⅱ地区(排土厚45㎝)33,687㎥、Ⅲ地区(排土厚45㎝)55,639㎥)もの膨大な重金属汚染土壌を少しでも多く原因者として責任をもって処理するという気概が、東邦亜鉛には全く見られないのはどういうことでしょうか?

 やはり、公害企業として40年前まで悪名を馳せた体質をいまだに引き継いでいるのかもしれません。だとすれば、由々しき問題です。また、行政側も、そのような体質の東邦亜鉛にメリットをもたらすような土地改良案を平然と打ち出してきていることも、非常に遺憾です。

【6月8日追記】
 今回の東邦亜鉛による安中製錬所の工場拡幅となる新スラグ置き場に関して、当会は「東邦亜鉛が超高圧受電・変電等設備の整備のために入手した土地が、別の目的に使用されても問題ないということがわかる情報」について、公文書開示請求書を2016年5月17日付で群馬県知事に対して提出していました。先日6月2日朝に届出書類が開示されましたが、残った上記の情報はまだでした。
 ところが、6月2日付で、群馬県知事から「(関係部署と思しき※消防保安課、森林保全課、農業構造政策課、建築課に確認したが)当該請求に係る公文書を作成又は取得していないため」という理由で、ご覧のように不存在通知書が郵送されてきました。



 どうやら、いったん第三者に賃貸ししておけば、ほとぼりが冷めるので、かつて農民を騙し討ちにした行状は行政内で忘れ去られてしまい、今や何でもあり、の状態にあるようです。

PDF ⇒ 20160602smimvxouj.pdf

【ひらく会情報部】




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