地元群馬県で唯一の県域地方新聞(県紙)として、大手紙を上回る公称30万部の発行部数を誇る上毛新聞は、なぜか週末になると渋川市議会の様子を2週に渡り報道しました。その様子というのは、正式な手続きなしに公園の周辺整備を進めた市議の「了解を得ている」に対し渋川市長の「聞いていない」を面白おかしく報道するというものでした。
口頭による「了解」VS「聞いていない」という低次元な愉快な報道はその後どうなったのでしょうか?その後2週間、上毛新聞を読み続けましたが「正式な手続きなしに公園の周辺整備」報道はありませんでした。
ところがその続報が毎日新聞でありましたのでお伝えいたします。
↑毎日新聞に掲載された硯石の整備の様子=市議提供。「歴史的価値のある硯石の掘り起こしに関する特別委員会」が設置された問題の行為はこの写真の通り。毎日新聞によると、なんと市議本人から写真提供があったらしい。生々しく石が削れ、石煙がたっている。郷土の人に愛される神聖な石がかわいそう。↑
**********毎日新聞2019年12月3日 地方版
硯石問題 「公式なものでない」 渋川市長、整備了解を否定 /群馬
渋川市北橘町の市有地にある岩「硯石(すずりいし)」が市の正式な手続きなしに市議の男性らによって整備された問題で、高木勉市長は11月29日の市議会特別委員会に出席し、当事者の市議が整備に関して「市側から口頭で了解を得て、市長も知っていた」などと主張していることについて反論、否定した。
特別委で、高木市長は「(硯石は)公有財産だ。変更があれば住民の要望などがあるはず。立ち話程度で公式なものとは受け止めていなかった」と説明した。
さらに問題が起きた背景について高木市長は「市議が人事に口をはさんだり、恫喝(どうかつ)めいた発言を受けたりした市職員もいる。仕事を円滑に進めるため、言うことに従うという意識が生まれ、事態を招いたのではないか」と話した。【庄司哲也】
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■いつものように報道のポイントを整理してみましょう。
ポイント①「硯石」の整備について渋川市長の反論報道であること。
ポイント②問題の市議は恐ろしい人?であるらしい。
ポイント③問題の市議の発言がないので上毛新聞では報道されないこと。
それではそれぞれのポイントについて検証してみましょう。
ポイント①
「硯石」の整備について渋川市長の反論報道であること。
↑歴史的価値のある「硯石」の周辺整備後の様子。この周辺整備工事は、渋川市の正式な手続きなしに行われたことは上毛新聞でも毎日新聞でも報道されているが、なぜか上毛新聞はそれだけにとどまらず、「話をした」VS「聞いていない」のワイドショー並みの演出をやってのけた。↑
渋川市議会の「歴史的価値のある硯石の掘り起こしに関する特別委員会」で、高木市長は「『(硯石は)公有財産だ。変更があれば住民の要望などがあるはず。立ち話程度で公式なものとは受け止めていなかった』と説明した」と公有財産の周辺整備工事は、正式な手続きを経て行われるもので、立ち話程度では公式な手続きではない、という至極当たり前な答弁をしたことが紹介されています。
高木市長としては、市行政は、その意思決定に至る過程並びに事業の実績を合理的に跡付け、後から検証することができるようにするため「公文書」により進められるもので、特別委員会のあまりにもくだらない質問にさぞかし困惑したことでしょう。
また高木市長は「変更があれば住民の要望などがあるはず」と公文書に要望の記載がないことも説明しています。「硯石」に歴史的価値があるのなら文化財保護の観点から動かすことは価値を損ないます。
「硯石」を無慈悲に傷つけながら、元あった場所から移動してしまうことなど住民から要望が出るはずなどあり得ない、と思っていたところ、やはり住民の要望とは関係ない身勝手な「硯石」周辺整備工事との説明なのです。
ポイント②
問題の市議は恐ろしい人?であるらしい。
報道では問題が起きた背景が説明されています。群馬県が誇るクオリティーペーパーの上毛新聞報道では、硯石問題を低俗な「話をした」VS「聞いていない」のワイドショー張りの演出にされてしまいましたが、毎日新聞では、正式な手続きを経ていない硯石周辺整備の背景が報道されています。
議会の活動とは別に渋川市では、この問題について弁護士ら3人の外部委員による調査委員会が設置されています。その委員会の調査が進んだのか?上記報道記事によれば、次のような高木市長の説明が紹介されています。
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「市議が人事に口をはさんだり、恫喝(どうかつ)めいた発言を受けたりした市職員もいる。仕事を円滑に進めるため、言うことに従うという意識が生まれ、事態を招いたのではないか」と話した。
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なんと問題の市議は、市長でも公務員でもないのに、渋川市職員(もちろん公務員)の「人事に口をはさんだり」、公務員に言うことを聞かせようと「恫喝(どうかつ)めいた発言」を浴びせかけたりしている日常が紹介されています。
恐ろしいことです法律に則り粛々と仕事が進められるイメージのある地方役場で「恫喝(どうかつ)めいた」怒号がこだまする様は、世にも恐ろしい光景であることでしょう。
大同有害スラグ事件で有名な渋川市では、金に物を言わせる大企業が闊歩し、フッ素まみれなスラグが平気でばら撒かれ、市民を守るべき市役所では「恫喝(どうかつ)めいた発言」がこだましているのです。スラグが産業廃棄物に認定されても撤去が進まないのは、こういった背景が行政内で影響しているかもしれません。
ポイント③
問題の市議の発言がないので上毛新聞では報道されないこと。
歴史的価値のある「硯石」が正式な手続きを経ないで周辺整備された問題で、地方行政のトップである渋川市長の説明が毎日新聞で報道されました。しかし問題の市議の発言が、上毛新聞の報道では見当たりません。まるで、渋川市長より問題の市議の方が上!?であるかのような報道ぶりが気になります。
群馬県が誇るクオリティーペーパーの上毛新聞では、渋川市で起きた「話をした」VS「聞いていない」という低俗な報道を2週に渡り報道しました。
であるならば今回の渋川市長の説明に対し、問題の市議に取材をしてコメントを紹介するなど、前回同様、愉快な低俗報道をするものと期待しましたが、報道がないため、上毛新聞の一連の報道は、問題の市議に加担した報道であった?と考えざるを得ません。皆様はどうお感じになったでしょうか。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※参考資料:硯石をめぐる報道
**********上毛新聞2019年8月22日
北橘の「硯石」見に来て 整地や駐車場確保 巨石周辺を住民が力
↑整備後の硯石。車を止めて見学できるようになった。↑
↑整備前におはらいをする関係者。周囲に草木が茂っている。↑
地名の由来にもなった巨石「硯石(すずりいし)」を広く知ってもらおうと、群馬県渋川市北橘町赤城山の近隣住民らが周辺整備に動きだした。草木を伐採して整地し、駐車スペースを確保。将来、憩いの場になるようサクラの苗木も植えた。有志は「地域の宝を観光客らにも見てほしい」と話している。
硯石は赤城南麓広域農道(からっ風街道)沿いにある。地上に出ていた部分は高さ1.4メートルで、幅は2.2メートルほど。赤城山が噴火した際に押し流されてきたとされ、上のくぼみに常に水がたまっていることから硯(すずり)に見立てて呼ばれているという。親鸞がくぼみの水を使って墨をすり、一首詠んだとの伝承も残る。
**********毎日新聞2019年9月17日
親鸞上人伝説の岩「硯石」、地域おこしの目玉に 渋川市議が無償で整備 住民賛否「見えやすい」「あんなに傷」 /群馬
↑整備が終わり地中から掘り起こされた硯石=群馬県渋川市北橘町で8月24日↑
渋川市北橘町の岩「硯石(すずりいし)」を地域おこしの目玉にしようと、渋川市議の望月昭治氏(67)らが整備に入った。親鸞上人がこの地に立ち寄った際、岩のくぼみにたまった水で墨をすり歌を詠んだという伝説が残されている。市指定文化財ではないが「市の文化的財産」(市職員)といい、望月氏が整備を企画し実現した。
硯石は、通称「からっ風街道」と呼ばれる市道沿いの市有地にあり、岩の脇には市教育委員会が立てた説明書きの看板もあった。
望月氏らが整備に入ったのは7月下旬。土木建築会社の役員も務める望月氏が、会社の重機を使って岩を掘り返した。やぶも伐採し、桜の苗木を現地に植えた。望月氏は「硯石を世に出してやりたいと思った。今後は市の指定文化財になれればいい」と話す。
ただ、地元では賛否が分かれている。「硯石が見やすくなった」と歓迎の声がある一方、重機で掘り返した際に岩に傷が付いたことから、「あんなに傷つくとは思わなかった」「文句が無いわけではないが、ボランティアでやってくれたのだから仕方がない」などという意見もある。
市文化財保護課の担当者は「もう少し傷が付かないように強く要望すべきだった」と話している。【西銘研志郎】
**********毎日新聞2019年9月25日
硯石整備、正式許可なし 市議の要請、口頭のみ 渋川市 /群馬
渋川市北橘町の市有地にある岩「硯石(すずりいし)」を市議が「地域おこし」を名目に移動させた件で、この整備行為に市の正式な許可がなかったことが24日分かった。高木勉市長もこの整備行為を報道されるまで把握しておらず、毎日新聞の取材に対し、整備に必要な手続きを経ていないことを認めた。この整備で岩には傷が付いており、地元住民からは「誰がその責任を追うのかが分からない」との声も上がっている。【西銘研志郎】
硯石は「からっ風街道」と呼ばれる市道沿いにある。親鸞上人がこの地に立ち寄った際、岩のくぼみにたまった水で墨をすり歌を詠んだという伝説が残されており、市指定文化財ではないが、岩の脇には市教委が立てた説明書きの看板がある。7月下旬に、土木建築会社の役員を務める男性市議らが地域おこしの目玉にしようと、会社の重機を使って無償で硯石近辺を整備。その際に重機で岩に傷が付いた。
市関係者などによると、通常、地元からの要望で市が事業化する場合、地元自治会長が組織する連合会が市の行政センターに要望書を提出し、センターが市の関係部署に要望を届ける。その後に市役所内での検討を経て、予算案に計上し、議会の承認を得る。
だが今回の整備行為は男性市議が主導したもので、地元からの要望書は行政センターには提出されていなかった。市側は市議からの要請を受けて、「市議の善意」として受け取り、事業化するための起案書などを作成せず、市議と複数の関連部署の課長との間で話が進められた。担当課長の説明では「上司にも口頭では伝えた」というが、正式な書類は作成されず、決済などの手続きもされていなかった。
高木市長は毎日新聞の取材に対し「硯石の整備は新聞で報道されるまで知らなかった。もしこうしたことをするなら正式な手続きが必要だが、適正な処理ではなかった。行政として責任はある」と述べた。担当課長は「市議の善意として受け取ったので特に問題視はしなかった。結果的にこうなってしまったのは残念」と話している。
**********毎日新聞2019年9月27日
渋川市議会 硯石問題で特別委 掘り起こしの経緯調査
↑硯石の整備の様子=市議提供↑
渋川市北橘町の市有地にある岩「硯石(すずりいし)」が市の正式な手続きを経ずに市議の男性らによって整備された問題で、渋川市議会は26日、この問題を調査する特別委員会を設置することを決めた。設置理由は「硯石の掘り起こしに関する許可手続きと掘り起こしの経緯について市議会として調査が必要」としている。
硯石は市指定文化財ではないが、親鸞上人がかつてこの地に立ち寄った際に岩にたまった水で墨をすり歌を詠んだという伝説が残されており、そばには市教委の説明書きの看板も立てられている。長年、北橘地区の住民らに親しまれてきた。
今年7月下旬に土木建築会社の役員を務める男性市議が中心となってこの会社の重機を使い、硯石周辺を整備した。この際に、硯石を掘り起こし、岩に傷が付いた経緯がある。
この整備行為については、市の正式な手続きが一切とられておらず、起案書などの書面も作られていなかったため、問題視されている。【西銘研志郎】
**********毎日新聞2019年10月8日
「硯石」特別委が視察 複数の傷を確認 渋川市議会
↑硯石について傷跡を確認する市議=群馬県渋川市北橘町で↑
渋川市北橘町の市有地にある岩「硯石(すずりいし)」が市の正式な手続きなしに市議の男性によって整備された問題で、同市議会特別委員会(田辺寛治委員長)が7日、現場を視察し、岩の移動と作業時に付いたとみられる複数の傷があることを確認した。
視察したのは、委員8人と委員外の市議2人の計10人。岩には浄土真宗の宗祖・親鸞に関する伝説があり、視察した市議からは「移動によって文化的な価値が損なわれる」などの声が出た。田辺委員長は「事実関係を明らかにし、12月の定例市議会での報告を目指したい」と話した。委員会は今後、週1回開く予定で、必要があれば関係者の参考人招致も行うとしている。
一方、高木勉市長は同日の定例会見で、昨年6月に岩の移動・整備を持ち込んだ市議の男性に、担当外の水道部長(当時)が対応していたことを明らかにした。高木氏は「なぜ、水道部長が対応したのかは分からない」と話した。【庄司哲也】
**********上毛新聞2019年11月15日
硯石周辺整備の市議「市の了解得ている」
渋川市議会特別委
渋川市北橘町の市有地にある巨石「硯石」の周辺整備が市の正式な手続きを経ずに行われた問題で、同市議会の「歴史的価値のある硯石の掘り起こしに関する特別委員会」が14日、開かれた。
作業した市議が委員の質疑に応じ、作業前の地鎮祭の日時を高木勉市長に伝えていたとした上で、「市の了解を得ている」との認識を示した。
市議は、作業に関し議会事務局職員を通じて、石の説明板を掲示している市教委文化財保護課と市有地を管理する資産経営課に連絡をしたと説明。「市がくいを打ち、草を刈った場所に(作業)に入った。市長にも話しており、100パーセント市の了解を得ていると思っている」などと述べた。
高木市長は上毛新聞の取材に「からっ風街道の石を動かすからと日程の都合を聞かれたが、市有地にある石の作業とは聞いていなかった」と認識の違いを示し、「どこに問題があったのかを現在調べているところだ」と述べた。
**********毎日新聞2019年11月19日 地方版
「硯石」問題 外部委員による調査委が初会合 渋川市 /群馬
渋川市北橘町の市有地にある岩「硯石(すずりいし)」が市の正式な手続きなしに市議の男性らによって整備された問題で、渋川市が設置した弁護士ら3人の外部委員による調査委員会の初会合が18日、開かれ、委員からは「公文書がないことは問題」などの意見が寄せられた。
市が設置した調査委員会は、すでに関係職員から聞き取り調査を実施しており、外部委員の初会合は、この内容を基に非公開で話し合った。
委員からは「(整備は)まずは地元の要望として持ってくるべきで、それをどう扱ったか文書として残すべきだ」「市有地内であり、(整備の)必要性があるか市側が主体的に精査しなければならない」などの声が上がったという。【庄司哲也】
**********上毛新聞2019年11月23日
硯石周辺整備問題 報告遅れる可能性
渋川市議会特別委
渋川市北橘町の市有地にある巨石「硯石」の周辺整備が市の正式な手続きを経ずに行われた問題で、同市議会の「歴史的価値のある硯石の掘り起こしに関する特別委員会」が22日、開か
れた。 報告書の取りまとめ方を話し合った結果、当初の目標としていた市議会12月定例会での報告がずれ込む可能性が出てきた。
前回までに、関係する市職員や市議ら8人から話を聞いた。取りまとめに慎重を期すため、当初の目標時期にはこだわらないことで一致した。
「(作業前の)地鎮祭の日時を市長に伝えた」とする市議の発言と、報道による高木勉市長の見解に相違があることから、特別委として市長の認識について文書で回答を求めることも決めた。
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口頭による「了解」VS「聞いていない」という低次元な愉快な報道はその後どうなったのでしょうか?その後2週間、上毛新聞を読み続けましたが「正式な手続きなしに公園の周辺整備」報道はありませんでした。
ところがその続報が毎日新聞でありましたのでお伝えいたします。
↑毎日新聞に掲載された硯石の整備の様子=市議提供。「歴史的価値のある硯石の掘り起こしに関する特別委員会」が設置された問題の行為はこの写真の通り。毎日新聞によると、なんと市議本人から写真提供があったらしい。生々しく石が削れ、石煙がたっている。郷土の人に愛される神聖な石がかわいそう。↑
**********毎日新聞2019年12月3日 地方版
硯石問題 「公式なものでない」 渋川市長、整備了解を否定 /群馬
渋川市北橘町の市有地にある岩「硯石(すずりいし)」が市の正式な手続きなしに市議の男性らによって整備された問題で、高木勉市長は11月29日の市議会特別委員会に出席し、当事者の市議が整備に関して「市側から口頭で了解を得て、市長も知っていた」などと主張していることについて反論、否定した。
特別委で、高木市長は「(硯石は)公有財産だ。変更があれば住民の要望などがあるはず。立ち話程度で公式なものとは受け止めていなかった」と説明した。
さらに問題が起きた背景について高木市長は「市議が人事に口をはさんだり、恫喝(どうかつ)めいた発言を受けたりした市職員もいる。仕事を円滑に進めるため、言うことに従うという意識が生まれ、事態を招いたのではないか」と話した。【庄司哲也】
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■いつものように報道のポイントを整理してみましょう。
ポイント①「硯石」の整備について渋川市長の反論報道であること。
ポイント②問題の市議は恐ろしい人?であるらしい。
ポイント③問題の市議の発言がないので上毛新聞では報道されないこと。
それではそれぞれのポイントについて検証してみましょう。
ポイント①
「硯石」の整備について渋川市長の反論報道であること。
↑歴史的価値のある「硯石」の周辺整備後の様子。この周辺整備工事は、渋川市の正式な手続きなしに行われたことは上毛新聞でも毎日新聞でも報道されているが、なぜか上毛新聞はそれだけにとどまらず、「話をした」VS「聞いていない」のワイドショー並みの演出をやってのけた。↑
渋川市議会の「歴史的価値のある硯石の掘り起こしに関する特別委員会」で、高木市長は「『(硯石は)公有財産だ。変更があれば住民の要望などがあるはず。立ち話程度で公式なものとは受け止めていなかった』と説明した」と公有財産の周辺整備工事は、正式な手続きを経て行われるもので、立ち話程度では公式な手続きではない、という至極当たり前な答弁をしたことが紹介されています。
高木市長としては、市行政は、その意思決定に至る過程並びに事業の実績を合理的に跡付け、後から検証することができるようにするため「公文書」により進められるもので、特別委員会のあまりにもくだらない質問にさぞかし困惑したことでしょう。
また高木市長は「変更があれば住民の要望などがあるはず」と公文書に要望の記載がないことも説明しています。「硯石」に歴史的価値があるのなら文化財保護の観点から動かすことは価値を損ないます。
「硯石」を無慈悲に傷つけながら、元あった場所から移動してしまうことなど住民から要望が出るはずなどあり得ない、と思っていたところ、やはり住民の要望とは関係ない身勝手な「硯石」周辺整備工事との説明なのです。
ポイント②
問題の市議は恐ろしい人?であるらしい。
報道では問題が起きた背景が説明されています。群馬県が誇るクオリティーペーパーの上毛新聞報道では、硯石問題を低俗な「話をした」VS「聞いていない」のワイドショー張りの演出にされてしまいましたが、毎日新聞では、正式な手続きを経ていない硯石周辺整備の背景が報道されています。
議会の活動とは別に渋川市では、この問題について弁護士ら3人の外部委員による調査委員会が設置されています。その委員会の調査が進んだのか?上記報道記事によれば、次のような高木市長の説明が紹介されています。
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「市議が人事に口をはさんだり、恫喝(どうかつ)めいた発言を受けたりした市職員もいる。仕事を円滑に進めるため、言うことに従うという意識が生まれ、事態を招いたのではないか」と話した。
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なんと問題の市議は、市長でも公務員でもないのに、渋川市職員(もちろん公務員)の「人事に口をはさんだり」、公務員に言うことを聞かせようと「恫喝(どうかつ)めいた発言」を浴びせかけたりしている日常が紹介されています。
恐ろしいことです法律に則り粛々と仕事が進められるイメージのある地方役場で「恫喝(どうかつ)めいた」怒号がこだまする様は、世にも恐ろしい光景であることでしょう。
大同有害スラグ事件で有名な渋川市では、金に物を言わせる大企業が闊歩し、フッ素まみれなスラグが平気でばら撒かれ、市民を守るべき市役所では「恫喝(どうかつ)めいた発言」がこだましているのです。スラグが産業廃棄物に認定されても撤去が進まないのは、こういった背景が行政内で影響しているかもしれません。
ポイント③
問題の市議の発言がないので上毛新聞では報道されないこと。
歴史的価値のある「硯石」が正式な手続きを経ないで周辺整備された問題で、地方行政のトップである渋川市長の説明が毎日新聞で報道されました。しかし問題の市議の発言が、上毛新聞の報道では見当たりません。まるで、渋川市長より問題の市議の方が上!?であるかのような報道ぶりが気になります。
群馬県が誇るクオリティーペーパーの上毛新聞では、渋川市で起きた「話をした」VS「聞いていない」という低俗な報道を2週に渡り報道しました。
であるならば今回の渋川市長の説明に対し、問題の市議に取材をしてコメントを紹介するなど、前回同様、愉快な低俗報道をするものと期待しましたが、報道がないため、上毛新聞の一連の報道は、問題の市議に加担した報道であった?と考えざるを得ません。皆様はどうお感じになったでしょうか。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※参考資料:硯石をめぐる報道
**********上毛新聞2019年8月22日
北橘の「硯石」見に来て 整地や駐車場確保 巨石周辺を住民が力
↑整備後の硯石。車を止めて見学できるようになった。↑
↑整備前におはらいをする関係者。周囲に草木が茂っている。↑
地名の由来にもなった巨石「硯石(すずりいし)」を広く知ってもらおうと、群馬県渋川市北橘町赤城山の近隣住民らが周辺整備に動きだした。草木を伐採して整地し、駐車スペースを確保。将来、憩いの場になるようサクラの苗木も植えた。有志は「地域の宝を観光客らにも見てほしい」と話している。
硯石は赤城南麓広域農道(からっ風街道)沿いにある。地上に出ていた部分は高さ1.4メートルで、幅は2.2メートルほど。赤城山が噴火した際に押し流されてきたとされ、上のくぼみに常に水がたまっていることから硯(すずり)に見立てて呼ばれているという。親鸞がくぼみの水を使って墨をすり、一首詠んだとの伝承も残る。
**********毎日新聞2019年9月17日
親鸞上人伝説の岩「硯石」、地域おこしの目玉に 渋川市議が無償で整備 住民賛否「見えやすい」「あんなに傷」 /群馬
↑整備が終わり地中から掘り起こされた硯石=群馬県渋川市北橘町で8月24日↑
渋川市北橘町の岩「硯石(すずりいし)」を地域おこしの目玉にしようと、渋川市議の望月昭治氏(67)らが整備に入った。親鸞上人がこの地に立ち寄った際、岩のくぼみにたまった水で墨をすり歌を詠んだという伝説が残されている。市指定文化財ではないが「市の文化的財産」(市職員)といい、望月氏が整備を企画し実現した。
硯石は、通称「からっ風街道」と呼ばれる市道沿いの市有地にあり、岩の脇には市教育委員会が立てた説明書きの看板もあった。
望月氏らが整備に入ったのは7月下旬。土木建築会社の役員も務める望月氏が、会社の重機を使って岩を掘り返した。やぶも伐採し、桜の苗木を現地に植えた。望月氏は「硯石を世に出してやりたいと思った。今後は市の指定文化財になれればいい」と話す。
ただ、地元では賛否が分かれている。「硯石が見やすくなった」と歓迎の声がある一方、重機で掘り返した際に岩に傷が付いたことから、「あんなに傷つくとは思わなかった」「文句が無いわけではないが、ボランティアでやってくれたのだから仕方がない」などという意見もある。
市文化財保護課の担当者は「もう少し傷が付かないように強く要望すべきだった」と話している。【西銘研志郎】
**********毎日新聞2019年9月25日
硯石整備、正式許可なし 市議の要請、口頭のみ 渋川市 /群馬
渋川市北橘町の市有地にある岩「硯石(すずりいし)」を市議が「地域おこし」を名目に移動させた件で、この整備行為に市の正式な許可がなかったことが24日分かった。高木勉市長もこの整備行為を報道されるまで把握しておらず、毎日新聞の取材に対し、整備に必要な手続きを経ていないことを認めた。この整備で岩には傷が付いており、地元住民からは「誰がその責任を追うのかが分からない」との声も上がっている。【西銘研志郎】
硯石は「からっ風街道」と呼ばれる市道沿いにある。親鸞上人がこの地に立ち寄った際、岩のくぼみにたまった水で墨をすり歌を詠んだという伝説が残されており、市指定文化財ではないが、岩の脇には市教委が立てた説明書きの看板がある。7月下旬に、土木建築会社の役員を務める男性市議らが地域おこしの目玉にしようと、会社の重機を使って無償で硯石近辺を整備。その際に重機で岩に傷が付いた。
市関係者などによると、通常、地元からの要望で市が事業化する場合、地元自治会長が組織する連合会が市の行政センターに要望書を提出し、センターが市の関係部署に要望を届ける。その後に市役所内での検討を経て、予算案に計上し、議会の承認を得る。
だが今回の整備行為は男性市議が主導したもので、地元からの要望書は行政センターには提出されていなかった。市側は市議からの要請を受けて、「市議の善意」として受け取り、事業化するための起案書などを作成せず、市議と複数の関連部署の課長との間で話が進められた。担当課長の説明では「上司にも口頭では伝えた」というが、正式な書類は作成されず、決済などの手続きもされていなかった。
高木市長は毎日新聞の取材に対し「硯石の整備は新聞で報道されるまで知らなかった。もしこうしたことをするなら正式な手続きが必要だが、適正な処理ではなかった。行政として責任はある」と述べた。担当課長は「市議の善意として受け取ったので特に問題視はしなかった。結果的にこうなってしまったのは残念」と話している。
**********毎日新聞2019年9月27日
渋川市議会 硯石問題で特別委 掘り起こしの経緯調査
↑硯石の整備の様子=市議提供↑
渋川市北橘町の市有地にある岩「硯石(すずりいし)」が市の正式な手続きを経ずに市議の男性らによって整備された問題で、渋川市議会は26日、この問題を調査する特別委員会を設置することを決めた。設置理由は「硯石の掘り起こしに関する許可手続きと掘り起こしの経緯について市議会として調査が必要」としている。
硯石は市指定文化財ではないが、親鸞上人がかつてこの地に立ち寄った際に岩にたまった水で墨をすり歌を詠んだという伝説が残されており、そばには市教委の説明書きの看板も立てられている。長年、北橘地区の住民らに親しまれてきた。
今年7月下旬に土木建築会社の役員を務める男性市議が中心となってこの会社の重機を使い、硯石周辺を整備した。この際に、硯石を掘り起こし、岩に傷が付いた経緯がある。
この整備行為については、市の正式な手続きが一切とられておらず、起案書などの書面も作られていなかったため、問題視されている。【西銘研志郎】
**********毎日新聞2019年10月8日
「硯石」特別委が視察 複数の傷を確認 渋川市議会
↑硯石について傷跡を確認する市議=群馬県渋川市北橘町で↑
渋川市北橘町の市有地にある岩「硯石(すずりいし)」が市の正式な手続きなしに市議の男性によって整備された問題で、同市議会特別委員会(田辺寛治委員長)が7日、現場を視察し、岩の移動と作業時に付いたとみられる複数の傷があることを確認した。
視察したのは、委員8人と委員外の市議2人の計10人。岩には浄土真宗の宗祖・親鸞に関する伝説があり、視察した市議からは「移動によって文化的な価値が損なわれる」などの声が出た。田辺委員長は「事実関係を明らかにし、12月の定例市議会での報告を目指したい」と話した。委員会は今後、週1回開く予定で、必要があれば関係者の参考人招致も行うとしている。
一方、高木勉市長は同日の定例会見で、昨年6月に岩の移動・整備を持ち込んだ市議の男性に、担当外の水道部長(当時)が対応していたことを明らかにした。高木氏は「なぜ、水道部長が対応したのかは分からない」と話した。【庄司哲也】
**********上毛新聞2019年11月15日
硯石周辺整備の市議「市の了解得ている」
渋川市議会特別委
渋川市北橘町の市有地にある巨石「硯石」の周辺整備が市の正式な手続きを経ずに行われた問題で、同市議会の「歴史的価値のある硯石の掘り起こしに関する特別委員会」が14日、開かれた。
作業した市議が委員の質疑に応じ、作業前の地鎮祭の日時を高木勉市長に伝えていたとした上で、「市の了解を得ている」との認識を示した。
市議は、作業に関し議会事務局職員を通じて、石の説明板を掲示している市教委文化財保護課と市有地を管理する資産経営課に連絡をしたと説明。「市がくいを打ち、草を刈った場所に(作業)に入った。市長にも話しており、100パーセント市の了解を得ていると思っている」などと述べた。
高木市長は上毛新聞の取材に「からっ風街道の石を動かすからと日程の都合を聞かれたが、市有地にある石の作業とは聞いていなかった」と認識の違いを示し、「どこに問題があったのかを現在調べているところだ」と述べた。
**********毎日新聞2019年11月19日 地方版
「硯石」問題 外部委員による調査委が初会合 渋川市 /群馬
渋川市北橘町の市有地にある岩「硯石(すずりいし)」が市の正式な手続きなしに市議の男性らによって整備された問題で、渋川市が設置した弁護士ら3人の外部委員による調査委員会の初会合が18日、開かれ、委員からは「公文書がないことは問題」などの意見が寄せられた。
市が設置した調査委員会は、すでに関係職員から聞き取り調査を実施しており、外部委員の初会合は、この内容を基に非公開で話し合った。
委員からは「(整備は)まずは地元の要望として持ってくるべきで、それをどう扱ったか文書として残すべきだ」「市有地内であり、(整備の)必要性があるか市側が主体的に精査しなければならない」などの声が上がったという。【庄司哲也】
**********上毛新聞2019年11月23日
硯石周辺整備問題 報告遅れる可能性
渋川市議会特別委
渋川市北橘町の市有地にある巨石「硯石」の周辺整備が市の正式な手続きを経ずに行われた問題で、同市議会の「歴史的価値のある硯石の掘り起こしに関する特別委員会」が22日、開か
れた。 報告書の取りまとめ方を話し合った結果、当初の目標としていた市議会12月定例会での報告がずれ込む可能性が出てきた。
前回までに、関係する市職員や市議ら8人から話を聞いた。取りまとめに慎重を期すため、当初の目標時期にはこだわらないことで一致した。
「(作業前の)地鎮祭の日時を市長に伝えた」とする市議の発言と、報道による高木勉市長の見解に相違があることから、特別委として市長の認識について文書で回答を求めることも決めた。
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