■長年にわたり大同特殊鋼から排出された鉄鋼スラグや汚泥など製鋼副産物が埋め立てられていた処分場の下方の地下水から、環境基準を大幅に上回る猛毒物質が検出されたことが2017年8月24日の朝日新聞で報じられました。まずはこの記事の内容を検証して見ましょう。
**********2017年8月24日朝日新聞デジタル群馬版
処分場地下水に六価クロム 渋川、環境基準の8倍超 /群馬県
渋川市金井にある民間の最終処分場下の地下水から、環境基準の8倍を超える有害物質六価クロムが検出されたことが、県の調査で23日までに分かった。業者が計画を逸脱して埋め立てたことも地下水汚染につながった一因とみて、県は原因を調査している。
この処分場は、県の許可を得て1981年ごろから大同特殊鋼渋川工場から出た鉄鋼スラグや汚泥などを埋め立てている。汚染を防ぐため、水を通さない「不透水層」より上に廃棄物を埋め立てる計画だったのに層より下に埋められていることが分かり、県は2005年、産廃処理会社「小林製工運送」(渋川市)に改善命令を出した。不透水層の一部も失われていた。命令に基づく工事後、県が調べたところ今年4月、地下水から環境基準の8倍超にあたる1リットル当たり0・42ミリグラムの六価クロムが検出された。
同処分場の問題にからみ、共産党県議団などは23日、大沢正明知事に対し、詳細な調査実施などを求める文書を提出した。
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↑当会に提供された、実質的に大同の有害スラグ埋立最終処分場の写真。奥の繁みの向こうが川となっている。提供された情報によると「川よりも低く穴を掘っていて、下の水から有毒物質が検出されている」とのこと。地下水といっても相当深く、一体どこまで汚染されているのだろう。近隣及び下流住民の生活環境保全はどのように担保すればよいのか。↑
※拡大して見よう JPEG ⇒ 2017n08.jpg
■上武国道などに投棄されたスラグ問題で、「地下水をモニタリングしていく」などと、地下水が汚染されていなければ、撤去などの対策は行わない、としてきた群馬県ですが、今回の報道で、地下水汚染が現実に発覚したわけです。この、とんでもない事象について、報道内容をもとに、いつものように問題点をポイント別に整理してみましょう。
ポイント①
県の調査で、「最終処分場の地下水汚染が分かった」と報道されていること。
ポイント②
大同が計画を逸脱して埋め立てたことについて、県から改善命令が発出されていること。
ポイント③
改善命令の後、12年も経って、「県の調べで汚染が発覚した」などと、とても違和感を覚える報道であること。
■新聞報道は、「同処分場の問題にからみ、共産党県議団などは23日、大沢正明知事に対し、詳細な調査実施などを求める文書を提出した。」と締めくくられていますが、今回当該団体から情報提供がありました。その資料を交えて、今回の重大事件の問題点をポイント別に見ていきます。
ポイント①「県の調査で、『最終処分場の地下水汚染が分かった』と報道されていること」
報道では“県の調査で、実質大同の最終処分場直下の地下水が汚染されていることが分かった”と報道されています。ところが、当会に寄せられた情報によれば、当該団体が8月23日、群馬県環境部局に「詳細な調査実施などを求める」旨の申し入れを行い、記者クラブで会見を行ったところ、その後、どういう風の吹き回しか分かりませんが、冒頭の記事にあるとおり「環境基準の8倍を超える有害物質六価クロムが検出されたことが、県の調査で23日までに分かった。」という状況に変化したとことが時系列的に伝わってきました。県環境部局の本音としては、「触れてもらいたくなかった事件だ」と言えそうです。
ポイント②「大同が計画を逸脱して埋め立てたことについて、県から改善命令が発出されていること」
この処分場は「小林製工運送」(渋川市)の管理型最終処分場ですが、専ら「大同特殊鋼渋川工場から出た鉄鋼スラグや汚泥などを埋め立てている」ことが報道の中で説明されています。後に大同特殊鋼がこの処分場の経営権を取得しており、実質的には「大同の処分場」ということです。
さて大同が「計画を逸脱して埋め立てた」ことが分かり「群馬県は2005年、改善命令を出した。」となっています。これを分かりやすくまとめると、次の構図となります。
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○水を通さない「不透水層」が標高410m付近にあることになっており、
その上に廃棄物を埋設する計画のところ
○地下水脈標高395m付近を超えて、深く廃棄物が埋め立てられていた
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この最終処分場の計画と実際が異なることが発覚したことから、「群馬県は2005年、改善命令を出した。」と報道されているのです。この改善命令について、当会は強い違和感を禁じ得ません。
PDF ⇒ 20101207_haikibutu_shorisisetsu_henkoukyoka_kyokasinseisho.pdf
↑情報提供された「産業廃棄物処理施設変更許可申請書」。改善命令が2005年であるのに、5年後の平成22年(2010年)にこの最終処分場の変更が申請されている、5年も経てからの申請で時系列がおかしくなっている。また変更の理由も「平成10年6月に公布された新構造基準にあわせて人工の遮水層による安全性を高めるため」となっていて、改善命令を受けたことを微塵も感じることができない変更理由となっている。↑
ポイント③「改善命令の後、12年も経って、県の調べで今度は汚染が発覚したと、報道されていること」
さて、改善命令の内容、つまり「計画を逸脱して」水を通さない不透水層を超えて産業廃棄物を埋め立てた場合でも、無毒の廃棄物を埋め立てている限りは、改善命令後、廃棄物を掘り出して、ゴム製遮水シートなどの人工的な不透水層を設ければ、問題解決となったはずです。
今回の新聞報道は、それだけに留まりません。“計画を逸脱した事”に加えて「命令に基づく工事後、県が調べたところ今年4月、地下水から環境基準の8倍超にあたる1リットル当たり0・42ミリグラムの六価クロムが検出された。」と報じられたからです。
当会が独自に手に入れた情報によれば、大同特殊鋼は2008年(平成20年)7月の時点で、当該処分場の地下水汚染が深刻な値を示していたことを認識しています。
PDF ⇒ 20080719_daido_slugs_keiryo_shoumeisho.pdf
↑2008年7月9日に高崎市にある㈱環境技研が、大同の依頼で当該処分場の地下水を採取し、同7月18日までに分析試験を終えて、同7月19日に大同に提出した計量証明書。六価クロムは0.44mg/L(土染法の地下水基準上限値0.05mg/Lの8.8倍、ふっ素は9.3mg/L (地下水基準上限値0.8mg/Lの11.6倍)となっている。↑
群馬県が2005年に改善命令を出そうが、大同は馬耳東風の構えで、何の対策も取るつもりのなかった様子が分かります。そして群馬県も、その後何のフォローアップ調査もせずに、「大同様がきちんと対応しているはずだ」とばかりに何のチェックもしていなかった状況が目に浮かぶようです。今更、2005年に改善命令を出してから12年も経って、「県の調べで汚染が発覚した」などと、恥ずかしげもなくよく言えたものです。県環境部局としては、「古傷に触られてもらいたくなかった」などと内輪同士で感想を述べ合っているかもしれませんが、大同に対して最近また、強くものが言えない体質に戻っていることが懸念されます。
PDF ⇒ 20170502_naibu_kokuhatsu_mizu_noudo_keiryou_shoumeisho.pdf
↑当会に寄せられた情報によれば、渋川市の政党団体宛てに内部告発があり、汚染水が持ち込まれ、その水を分析調査したところ、2017年5月2日付で提出された濃度計量証明書が示す当該処分場の浸出地下水(同4月6日採取)の分析結果として、焦点となっている六価クロム濃度が0.43mg/L(地下水基準上限値0.05mg/Lの8.6倍)、ふっ素の濃度は2.4mg/L (地下水基準上限値0.8mg/Lの3倍)となっている。六価クロムの濃度は9年間で少しも減っておらず、ふっ素も依然として高濃度で地下浸透し続けていることが分かる。↑
■これで大同スラグの毒性が周辺部や下層の土壌汚染の連鎖を引き起こすのみならず、水を介して表流水のみならず地下水にも汚染が浸透している実態がはっきりしました。群馬県はこれでもまだ、当会との間で係争中の東吾妻町萩生地区の農道に不法投棄された大同スラグの撤去を巡る住民訴訟で、直ちに人体に影響はない、などと主張続けるつもりなのでしょうか。
きたる9月8日(金)午前10時から前橋地裁2階21号法廷で開かれる第11回口頭弁論で、被告群馬県が最終の主張をしたためた準備書面を陳述する予定です。既に被告の準備書面は先週末に原告当会にも届いていますが、今回の大同スラグ最終処分場における地下水汚染については、全く触れられていません。9月8日の口頭弁論の1週間前にあたる9月1日(金)までに、当会では今回の衝撃的な事実を踏まえて、最終反論を試みたいと考えております。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
**********2017年8月24日朝日新聞デジタル群馬版
処分場地下水に六価クロム 渋川、環境基準の8倍超 /群馬県
渋川市金井にある民間の最終処分場下の地下水から、環境基準の8倍を超える有害物質六価クロムが検出されたことが、県の調査で23日までに分かった。業者が計画を逸脱して埋め立てたことも地下水汚染につながった一因とみて、県は原因を調査している。
この処分場は、県の許可を得て1981年ごろから大同特殊鋼渋川工場から出た鉄鋼スラグや汚泥などを埋め立てている。汚染を防ぐため、水を通さない「不透水層」より上に廃棄物を埋め立てる計画だったのに層より下に埋められていることが分かり、県は2005年、産廃処理会社「小林製工運送」(渋川市)に改善命令を出した。不透水層の一部も失われていた。命令に基づく工事後、県が調べたところ今年4月、地下水から環境基準の8倍超にあたる1リットル当たり0・42ミリグラムの六価クロムが検出された。
同処分場の問題にからみ、共産党県議団などは23日、大沢正明知事に対し、詳細な調査実施などを求める文書を提出した。
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↑当会に提供された、実質的に大同の有害スラグ埋立最終処分場の写真。奥の繁みの向こうが川となっている。提供された情報によると「川よりも低く穴を掘っていて、下の水から有毒物質が検出されている」とのこと。地下水といっても相当深く、一体どこまで汚染されているのだろう。近隣及び下流住民の生活環境保全はどのように担保すればよいのか。↑
※拡大して見よう JPEG ⇒ 2017n08.jpg
■上武国道などに投棄されたスラグ問題で、「地下水をモニタリングしていく」などと、地下水が汚染されていなければ、撤去などの対策は行わない、としてきた群馬県ですが、今回の報道で、地下水汚染が現実に発覚したわけです。この、とんでもない事象について、報道内容をもとに、いつものように問題点をポイント別に整理してみましょう。
ポイント①
県の調査で、「最終処分場の地下水汚染が分かった」と報道されていること。
ポイント②
大同が計画を逸脱して埋め立てたことについて、県から改善命令が発出されていること。
ポイント③
改善命令の後、12年も経って、「県の調べで汚染が発覚した」などと、とても違和感を覚える報道であること。
■新聞報道は、「同処分場の問題にからみ、共産党県議団などは23日、大沢正明知事に対し、詳細な調査実施などを求める文書を提出した。」と締めくくられていますが、今回当該団体から情報提供がありました。その資料を交えて、今回の重大事件の問題点をポイント別に見ていきます。
ポイント①「県の調査で、『最終処分場の地下水汚染が分かった』と報道されていること」
報道では“県の調査で、実質大同の最終処分場直下の地下水が汚染されていることが分かった”と報道されています。ところが、当会に寄せられた情報によれば、当該団体が8月23日、群馬県環境部局に「詳細な調査実施などを求める」旨の申し入れを行い、記者クラブで会見を行ったところ、その後、どういう風の吹き回しか分かりませんが、冒頭の記事にあるとおり「環境基準の8倍を超える有害物質六価クロムが検出されたことが、県の調査で23日までに分かった。」という状況に変化したとことが時系列的に伝わってきました。県環境部局の本音としては、「触れてもらいたくなかった事件だ」と言えそうです。
ポイント②「大同が計画を逸脱して埋め立てたことについて、県から改善命令が発出されていること」
この処分場は「小林製工運送」(渋川市)の管理型最終処分場ですが、専ら「大同特殊鋼渋川工場から出た鉄鋼スラグや汚泥などを埋め立てている」ことが報道の中で説明されています。後に大同特殊鋼がこの処分場の経営権を取得しており、実質的には「大同の処分場」ということです。
さて大同が「計画を逸脱して埋め立てた」ことが分かり「群馬県は2005年、改善命令を出した。」となっています。これを分かりやすくまとめると、次の構図となります。
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○水を通さない「不透水層」が標高410m付近にあることになっており、
その上に廃棄物を埋設する計画のところ
○地下水脈標高395m付近を超えて、深く廃棄物が埋め立てられていた
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この最終処分場の計画と実際が異なることが発覚したことから、「群馬県は2005年、改善命令を出した。」と報道されているのです。この改善命令について、当会は強い違和感を禁じ得ません。
PDF ⇒ 20101207_haikibutu_shorisisetsu_henkoukyoka_kyokasinseisho.pdf
↑情報提供された「産業廃棄物処理施設変更許可申請書」。改善命令が2005年であるのに、5年後の平成22年(2010年)にこの最終処分場の変更が申請されている、5年も経てからの申請で時系列がおかしくなっている。また変更の理由も「平成10年6月に公布された新構造基準にあわせて人工の遮水層による安全性を高めるため」となっていて、改善命令を受けたことを微塵も感じることができない変更理由となっている。↑
ポイント③「改善命令の後、12年も経って、県の調べで今度は汚染が発覚したと、報道されていること」
さて、改善命令の内容、つまり「計画を逸脱して」水を通さない不透水層を超えて産業廃棄物を埋め立てた場合でも、無毒の廃棄物を埋め立てている限りは、改善命令後、廃棄物を掘り出して、ゴム製遮水シートなどの人工的な不透水層を設ければ、問題解決となったはずです。
今回の新聞報道は、それだけに留まりません。“計画を逸脱した事”に加えて「命令に基づく工事後、県が調べたところ今年4月、地下水から環境基準の8倍超にあたる1リットル当たり0・42ミリグラムの六価クロムが検出された。」と報じられたからです。
当会が独自に手に入れた情報によれば、大同特殊鋼は2008年(平成20年)7月の時点で、当該処分場の地下水汚染が深刻な値を示していたことを認識しています。
PDF ⇒ 20080719_daido_slugs_keiryo_shoumeisho.pdf
↑2008年7月9日に高崎市にある㈱環境技研が、大同の依頼で当該処分場の地下水を採取し、同7月18日までに分析試験を終えて、同7月19日に大同に提出した計量証明書。六価クロムは0.44mg/L(土染法の地下水基準上限値0.05mg/Lの8.8倍、ふっ素は9.3mg/L (地下水基準上限値0.8mg/Lの11.6倍)となっている。↑
群馬県が2005年に改善命令を出そうが、大同は馬耳東風の構えで、何の対策も取るつもりのなかった様子が分かります。そして群馬県も、その後何のフォローアップ調査もせずに、「大同様がきちんと対応しているはずだ」とばかりに何のチェックもしていなかった状況が目に浮かぶようです。今更、2005年に改善命令を出してから12年も経って、「県の調べで汚染が発覚した」などと、恥ずかしげもなくよく言えたものです。県環境部局としては、「古傷に触られてもらいたくなかった」などと内輪同士で感想を述べ合っているかもしれませんが、大同に対して最近また、強くものが言えない体質に戻っていることが懸念されます。
PDF ⇒ 20170502_naibu_kokuhatsu_mizu_noudo_keiryou_shoumeisho.pdf
↑当会に寄せられた情報によれば、渋川市の政党団体宛てに内部告発があり、汚染水が持ち込まれ、その水を分析調査したところ、2017年5月2日付で提出された濃度計量証明書が示す当該処分場の浸出地下水(同4月6日採取)の分析結果として、焦点となっている六価クロム濃度が0.43mg/L(地下水基準上限値0.05mg/Lの8.6倍)、ふっ素の濃度は2.4mg/L (地下水基準上限値0.8mg/Lの3倍)となっている。六価クロムの濃度は9年間で少しも減っておらず、ふっ素も依然として高濃度で地下浸透し続けていることが分かる。↑
■これで大同スラグの毒性が周辺部や下層の土壌汚染の連鎖を引き起こすのみならず、水を介して表流水のみならず地下水にも汚染が浸透している実態がはっきりしました。群馬県はこれでもまだ、当会との間で係争中の東吾妻町萩生地区の農道に不法投棄された大同スラグの撤去を巡る住民訴訟で、直ちに人体に影響はない、などと主張続けるつもりなのでしょうか。
きたる9月8日(金)午前10時から前橋地裁2階21号法廷で開かれる第11回口頭弁論で、被告群馬県が最終の主張をしたためた準備書面を陳述する予定です。既に被告の準備書面は先週末に原告当会にも届いていますが、今回の大同スラグ最終処分場における地下水汚染については、全く触れられていません。9月8日の口頭弁論の1週間前にあたる9月1日(金)までに、当会では今回の衝撃的な事実を踏まえて、最終反論を試みたいと考えております。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】