市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

大同スラグ裁判・・・11月8日の第7回口頭弁論期日に向けて前橋地裁に原告準備書面(11)を提出

2016-11-04 23:13:00 | スラグ不法投棄問題

■群馬県東吾妻町萩生地区の農業地帯にある農道に大量に不法投棄された大量の大同有毒スラグを撤去もせずに、公金で舗装して蓋をした問題で当会が2015年4月30日に提訴してからすでに1年半が経過しています。これまでに6回の口頭弁論期日を経ましたが、未だに裁判の行方は見通せない状況にあります。



 また、群馬県が大同有毒スラグをサンパイと認めて無許可で中間処理をしたとして2015年9月7日に大同特殊鋼、大同エコメット、佐藤建設工業の3者とを群馬県警に告発し、その後同9月11日に県警による強制立入捜査が関係先で行われてから約14カ月が、2016年4月26日に県警は3者とその役員らを前橋地検に書類送検してから半年が経過しました。しかし、依然として地検は慎重に裏付け調査をしており、こうしている間にも、どんどん不法投棄の犯行事案が時効を徒過しつつあります。

 こうした中で、来る11月11日(金)午前10時30分から前橋地裁で第7回口頭弁論が開催されるため、前回9月16日の裁判長の訴訟指揮に基づき、当会は原告住民として11月4日に原告準備書面(11)を前橋地裁に提出しました。内容は次のとおりです。

*****原告準備書面(11)*****
事件番号 平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原告  小 川  賢 外1名
被告  群馬県知事 大澤正明

                            平成28年11月4日
前橋地方裁判所民事2部合議係 御中

           原告準備書面(11)

                           原告  小 川  賢  ㊞

                           原告  鈴 木  庸  ㊞

 平成28年9月16日の第6回口頭弁論期日における裁判長の指揮に基づき、原告として次のとおり陳述する。

第1 被告第6準備書面に対する反論

 被告は平成28年7月1日付の第6準備書面で次のように主張している。
「3 ステージコンストラクションと敷砂利で用いられる砕石の異同
 ステージコンストラクションで用いられる砕石は,下層路盤工となることが予定されるため,道路舗装用下層路盤材(RC40)を用いて施工するものとされている(乙17・7-548頁「12-1-4-1 7項1」)。 」

 原告はこの被告の主張について、何度も読み返してみたが、公共事業に係る設計や積算のプロである被告が、何を主張しているのか、混乱してしまい、よく理解できないのである。
 どうやら「道路舗装用下層路盤材(RC40)を用いているから下層路盤工だ」とする趣旨のようにも受け取れる。もし、そうであるとすれば、それは間違いである。
 なぜなら、使用された材料が工種を規定するのではなく、設計図書でどの工種を選択するのかにより工種が指示されるはずだからである。
 お役所=公共事業の設計・積算のプロフェッショナルである被告が、計画平面図(甲19)で、「敷砂利」と記入した以上、どこまでいっても「敷砂利」なのである。
 このことは、群馬県監査委員による事実関係の確認結果においても、設計書類における積算は「下層路盤工としてではなく、路面敷き砂利として積算され、使用されていた」(甲10、15ページ下から5行目)ということが確認されている。
 すなわち、被告の主張は次のとおりであると思われる。
 ①被告は、第6準備書面で、「ステージコンストラクションで用いられる砕石は道路舗装用下層路盤材(RC40)だ。」と主張している。
 ②また、被告は、第6回口頭弁論期日で提示した乙第17号証のなかで、「第4節 道路工12-1-4-1 道路工 7.敷砂利は、特に指示があった場合を除き、道路舗装用下層路盤材(RC40)を用い、極端な材料分離を起こさぬよう施工するものとする。」と陳述している。
 これら2つの事項を合わせて考えると、農業土木ほ場整備工においては、下層路盤工でも敷砂利工でもこの2つの工種では、「道路舗装用下層路盤材(RC40)を用いて施工する」と考えられる。
 ところで群馬建設工事必携では、下層路盤について以下の5つが規定されていることが分かる(甲49)。
 このなかで、「群馬建設工事必携 7.群馬県土木工事標準仕様書 第3編 土木工事共通編」の「第2章 一般施工 第6節 一般舗装工」の「表2-12 下層路盤の品質規格」が次の通り掲げられている(甲51)。



 これによれば、「クラッシャラン」「砂利」「砂」「再生クラッシャラン等」「高炉徐冷スラグ」「製鋼スラグ」の5つが規定されていることがわかる。
 言わずもがなであるが、「高炉徐冷スラグ」と「製鋼スラグ」は道路用鉄鋼スラグである。「砂利」「砂」は、枯渇が懸念されている希少な資材であるため、余り下層路盤材に使用されないことから結局、「クラッシャラン」「再生クラッシャラン等」「道路用鉄鋼スラグ」の3種類が下層路盤材として規定されている。
 しかし、それぞれを混ぜ合わせることはどこにも規定されていない。
 「クラッシャラン」とは天然石を砕いたものであり、「再生クラッシャラン」がコンクリートなどを砕いたリサイクル材(RC40等)を、そして「道路用鉄鋼スラグ」が文字通りスラグを意味している。
 南波建設が施工した本件農道工事には、「再生砕石RC40」という商品名でスラグが混合された天然石が使用されているが、この実態は、上記で示した下層路盤材の3種類のうち、「クラッシャラン」と「道路用鉄鋼スラグ」が混ぜ合わされたものと考えるほかはない。これは、「再生クラッシャラン等」に該当しないものであるので、「道路舗装用下層路盤材(RC40)」を使用するとした群馬県土木工事標準仕様書(乙17)に反している。
 また、群馬建設工事必携(甲49)では、JISの規格に適合することを求めているが、道路用鉄鋼スラグには、わざわざ特別にJIS A5015を適用することが明記されている。
 使用材料の事前承認を被告に願い出るために本件農道工事の工事打ち合わせ書(甲17)に添付された(株)佐藤建設工業の試験成績表の末尾には「スラグ混合再生路盤材(RC-40)」試験成績表がしれっと添付されている(甲17、最後のページ)。これは、佐藤建設工業にとって自分たちに都合の良いように大同エコメットの名前で作成された試験成績表である。
 天然砕石とスラグを混合した状態で試験したのでは、天然石とスラグを混合することを規定していない群馬建設工事必携やJIS A5015そのものにも反する。
 また、この(株)佐藤建設工業の試験成績表には、環境基準適合性が示されているが、溶出量試験・含有量試験とも「六価クロム・セレン・鉛・フッ素・ほう素」の5項目の試験しかなされていない。
 これは「カドミウム・鉛・六価クロム・ひ素・水銀・セレン・ふっ素・ほう素」の8項目からなる環境安全形式検査を行っていないことを意味している。したがって、このようないかがわしい使用材料を被告が承認したことや、それによって本件農道工事に使用されたことは、JIS A5015に違反しており、ひいては群馬建設工事必携に準拠していないことを意味する。

第2 プロファ設計の環境調査業務報告書(乙14)の安全宣言に関する疑義

 群馬県の建設工事マニュアルたる群馬建設工事必携(甲49、甲50)には以下の記述がある。すなわち、「第1節 骨材 2-2-3-1 一般事項」において、
「1.道路用砕石、コンクリート用砕石及びコンクリート用スラグ粗(細)骨材は、以下の規格に適合するものとする。
JIS A 5005(コンクリート用砕石及び砕砂)
JIS A 5011-1(コンクリート用スラグ骨材(高炉スラグ骨材))
JIS A 5011-2(コンクリート用スラグ骨材(フェロニッケルスラグ骨材))
JIS A 5011-3(コンクリート用スラグ骨材(銅スラグ骨材))
JIS A 5011-4(コンクリート用スラグ骨材(電気炉酸化スラグ骨材))
JIS A 5015(道路用鉄鋼スラグ)
JIS A 5021(コンクリート用再生骨材H) 」
というように、道路用砕石の適合すべき規格が示してあるが、道路用鉄鋼スラグは特別にJIS A5015が示してありこの規格に適合することが求められている。このJIS A5015は2013年に改定され道路用スラグに環境安全品質及びその検査方法(環境安全形式検査 と環境安全受渡検査)が導入された。
平成25年(2013年)に施工された本件農道工事に使用された(株)佐藤建設工業が販売した再生砕石は、群馬県が廃棄物処理法違反に関して行った行政処分(甲31)によると産業廃棄物たるスラグ(種類:鉱さい)と天然砕石を無許可で混合したいかがわしい材料である。
この混合材料について、道路用鉄鋼スラグの規格が特別に示されている以上、規格については天然砕石とスラグは分けて、スラグのみでJIS A5015(道路用鉄鋼スラグ)の規格に適合しなければならない。このことはJIS A5015(道路用鉄鋼スラグ)がスラグのみを扱い、天然砕石とスラグを混合することを規定していないことからもうかがい知れる。
JIS A5015(道路用鉄鋼スラグ)の定めを踏まえた上で、被告がこれまでに鉄鋼スラグを混合した規格不適合のいかがわしい「混合再生砕石(RC40)」なるシロモノに関して受領、通達、あるいは発表した次の文書について、検証してみる。
 ①(株)佐藤建設工業の試験成績表について
 ②監理課通達について
 ③プロファ設計の安全宣言について
 上記①については、前章で説明したので、②と③について以下に述べる。

(1)監理課通達について
甲9号証の監理課通達には以下の記述がある。
「②5品目の溶出・含有試験結果(ブレンドした後、使用1年以内)
5品目成分名/土壌環境基準値【溶出量(mg/|)注1・含有量(mg/kg)注2】
六価クロム化合物  /  ≦0.05 ・≦250
セレン及びその化合物/  ≦0.01 ・≦150
鉛及びその化合物  /  ≦0.01 ・≦150
ふっ素及びその化合物/  ≦0.8  ・≦4,000
ほう素及びその化合物/  ≦1 ・≦4,000 」
 監理課通達では、砕石骨材(クラッシャラン)つまり天然砕石にクラッシャラン鉄鋼スラグをブレンドブレンドした後に5品目の溶出・含有試験を行うとなっているが、スラグのみを取り出しJIS A5015への準拠を求めている群馬建設工事必携に反している。
また、平成25年(2013年)以降JIS A5015は改定されているので、5品目の溶出・含有試験を行うのみでは、8品目の溶出・含有試験を行うことを定めた環境安全形式検査に合致していない。このことはJIS A 5015に違反し、ひいては群馬建設工事必携に反していることを意味する。

(2)プロファ設計の安全宣言について
 プロファ設計(株)の環境調査業務報告書(乙14)では試料の分析の結果、フッ素等の有害物質が環境基準を下回っているとして安全を宣言し、被告もそれを引用して安全を宣言している。乙14では、佐藤建設工業(株)が被告に提出した大同エコメットによる試験成績書(甲17)と異なり、確かに8品目の溶出・含有試験を行っている。
 ところが、サンプル試料を採取する際の写真を見ると、ボーリングマシンで掘削した試料をそのまま均等混合して分析試験をしていることが窺える。
 本件農道工事は平成25年(2013年)になってから施工されている。このため、ボーリングマシンで掘削した試料からスラグのみを取り出し、道路用鉄鋼スラグとしてJIS A5015に規定される環境安全品質を検査しなければならない。ここで言う環境安全品質とは、道路用スラグの出荷から、道路の施工時及び利用時までのみならず、その利用が終了し、解体後の再利用時又は最終処分時も含めたライフサイクルの合理的に想定しうる範囲において、道路用スラグから影響を受ける土壌や地下水等の環境媒体が、各々の環境基準等を満足できるように、道路用スラグが確保すべき品質のことである。
 したがって、本件農道工事に「再生砕石RC40」という商品名でスラグが任意の割合で混合された天然石が使用されているが、このようないかがわしいシロモノ、つまり道路用鉄鋼スラグとそれ以外のものを一緒に測定したプロファ設計(株)の環境調査業務報告書の分析結果を類推適用することは、JIS A5015の定めからも許されてはいない。
 平成28年9月8日付のプロファ設計(株)による「平成28年8月22日付調査嘱託書(事件番号 平成27年(行ウ)第7号)にて照会のあった件についての回答」(甲52)によれば、「5 本業務に関しては、発注者(群馬県)からの特記仕様書に基づくもので、担当部署は県土整備部建設企画課です」としており、このようなJIS違反の検査手順が被告の指示によるものであることは明らかである。
 被告は、原告らを含む住民の納めた血税300万円を使って、スラグ混合砕石の環境安全性を調べて「安全性が確認できた」などと縷々主張する。
 ところが、特に平成25年(2013年)以降は、スラグ混合砕石のうちスラグのみを抽出して環境安全分析調査をしなければ、JIS A5015に定めた定義に反することになるのである。ひいては、被告自身が定める群馬建設工事必携において示された環境安全分析調査という考え方に反しているということが言える。
 このことから、原告らと被告の共同立会いの下で、ぜひとも被告の費用負担で、例えば支道27号のアスファルト舗装脇からスラグのみを採取し、環境安全分析調査をやり直すことを提案する。

第3 被告第7準備書面の求釈明に対する回答

 被告は平成28年8月30日付の第7準備書面で求釈明をしているが、これに対して原告らは次のとおり回答する。
(1)試験報告書(甲42、乙18)は政党団体により、当該現場付近で任意に採取された検体を分析した結果を入手したものであるため、採取者については不詳である。
(2)したがって採取者からの聴取が困難であるため、原告らは分析検体の採取場所について正確に特定できないが、分析結果から見て、フッ素が環境基準値を大幅に超えているところから、天然砕石との混合物から有害スラグのみを拾い出したものと推定される。
(3)以上のことから、本件農道工事の現場に大同特殊鋼渋川工場から排出された大量の有害物質を含んだスラグが存在することは事実であるが、その試験試料の具体的な採取場所等について証明できない現状にある。
(4)原告らは前章で示した通り、またこれまでも再三主張してきたとおり、原告らと被告の双方立会いの下で、本件農道工事でスラグが敷砂利として投棄された現場において、調査のやり直しをする必要があると考えている。
(5)もっとも、調査のやり直しについての原告らの提案については、被告のこれまでの姿勢から実現されない可能性もある。たとえもし被告の同意が得られずに調査のやり直しが実現されなくても、プロファ設計の環境調査業務報告書(乙14)に基づく被告のスラグ安全宣言は、虚構に過ぎないことから、もはやその正当性の裏付けを失った被告の主張に対して、原告として対抗する必要がないので、甲42号証は取り下げることとする。

                              以 上

*****証拠説明書*****
事件番号 平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原告  小 川  賢 外1名
被告  群馬県知事 大澤正明

平成28年11月4日
前橋地方裁判所民事2部合議係 御中

          証 拠 説 明 書

                         原告  小 川  賢  ㊞
                         原告  鈴 木  庸  ㊞

 号証/標目/原本・写しの別/作成年月日/作成者/立証趣旨
〇甲49/群馬建設工事必携(H23版)(抜粋)/写し/平成23年/被告/「道路用砕石、コンクリート用砕石及びコンクリート用スラグ粗(細)骨材は、それぞれJISの規格に適合するものとする」と定めている。
〇甲50/群馬県土木工事標準仕様書 第2編材料編 第2章土木工事材料 第3節骨材 2-2-3-1一般事項/写し/平成23年/被告/「道路用砕石は、以下の規格に適合するものとする」とするなかで、特別に道路用鉄鋼スラグにJIS A5015が指示されている。
〇甲51/群馬県土木工事標準仕様書 第3編土木工事共通編 第6節一般舗装工 3-2-6-3アスファルト舗装の材料/写し/平成23年/被告/「7.下層路盤に使用する粒状路盤材は、以下の規格に適合するものとする。
(1)下層路盤に使用する粒状路盤材は、粘土塊、有機物、ごみ等を有害量含まず、表2-12の規格に適合するものとする。」として下層路盤の品質規格を定めている。
〇甲52/平成28年8月22日付調査嘱託書(事件番号 平成27年(行ウ)第7号)にて照会のあった件についての回答/写し/平成28年9月8日/プロファ設計株式会社/JIS A5015の定めからも許されていない測定仕様と手順が被告の特記仕様書に基づいて行われたことを示している。
**********

■裁判長は被告の群馬県に対しても、現行の準備書面の内容について反論があれば提出するように前回指揮をしており、今週初めに何らかの反論文書が原告にも送られてくる可能性があります。

 こうして11月11日(金)午前10時30分から開催される第7回口頭弁論では、原告と被告の主張が再び陳述されることになるため、裁判長が今後どのように争点をまとめるのか、それともさらに別の視点から双方の主張をさらに確認しようとするのか、注目したいと思います。

【市民オンブズマン群馬事務局からの方向】

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