「ハリー・ポッター」シリーズ、「スイス・アーミー・マン」のダニエル・ラドクリフ主演による、実際にあった脱獄劇をもとに描くスリラー。南アフリカ人のティム・ジェンキンは、白人でありながら反アパルトヘイト組織「アフリカ民族会議」の隠密作戦をおこなった罪のより、同胞のスティーブン・リーとともにプレトリア刑務所に投獄される。ティム、スティーブンたちは、自由と平等を手にするため、最高警備を誇る刑務所からの脱獄を決意する。さまざまな脱獄方法を模索した結果、ティムたちが最後に選んだ手段は木片を集めた鍵を使った脱獄だった。鍵を作っては解錠を繰り返し、徐々に出口までの鍵が完成していった。投獄から18カ月、彼らは木鍵による鉄製扉の突破を試みる。(映画.comより)
最近は本当に珍しい映画が田舎でも間髪を入れずに上映されてます。上映作品の不足によるものだと推測されるので、喜んでいいのかわかりませんが、とりあえずうれしい悲鳴です。
さて、脱獄ものというと、たいがいは屈強な凶悪犯たちが「地下トンネルを掘る」とか「暴動が起きる」とか「看守を張り倒す」とか(いや、そんなのないか)力や体格にまかせたものが多いイメージですが、今回は違います。ラドクリフ君たちは政治犯。よって、線の細いインテリが多く、看守たちも気のせいか、締め付けがゆるい感じがします(いや気のせいです)。冒頭、やや大きな袋を置いて立ち去るラドクリフ君、その後爆発音がするので「えっ、まさかラドクリフ君が爆破魔?」とビビるのですが、違うんです。ボーンという勢いでチラシを撒いているんですね。アパルトヘイトに反対する思想をつづったものです。ここでまず、少し脱力。しかしそもそもが素人のインテリ。悪事の経験もなく育ちもいいのに、いっぱしの主張をしようとして仲間と共に即逮捕。裁判長にも「必要な教育は受けて育ったはず。わきまえもないこのようなことがまかり通るものなのか、頭を冷やして考えなさい」という意味のことを言われて(もちろん、この裁判長の言葉も偏見に満ち満ちているわけですが)、刑務所に収監されることになります。しかし、思いのほか刑期が長く、人生の一番大事な時期をこんなところでつぶすわけにはいかない、と一念発起した彼らは、自分の得意分野を生かして脱獄を試みます。
ラドクリフ君は、物事に対するこだわりや記憶力が人並みではないようです。それは普通に暮らしていれば「障害」と呼ばれる類のものかもしれないのですが、今回はプラスに働きました。すなわち、看守が持っている鍵の形状を正確に記憶し、周りのありとあらゆるものを使って復元するのです。生来のおとなしさも看守が警戒しないという面ではプラスでした。そしてここから外までにはいくつの鍵があるのか、それはどういうふうに開けられるのか。看守の人数が減るのはいつなのか。仲間と共に年月をかけ、じっくりと取り組んでゆきます。
なるほど~。鍵を一つ一つ空けてゆくなんて、想像もしなかった。地味な展開に見えて、ハラハラドキドキでした!ただ、ここで逃げたからと言って、全国手配になるのに、そして家族・恋人すべてが監視されているだろうに、どうやって生きてゆくんだろうとは思いました。それは脱獄者すべてに言えることなんでしょうが、なにぶん彼らは”地下の組織”を知らないだろうし、”ワルの仲間”もいないだろうに。果たして、史実は「恩赦を受けるまでの50年(?)、家族には会えなかった」あるいは「一生恋人に会うことはなかった」と記されるのです。これってどうなんだろうと思いました。8年あるいは15年の刑期を終えて出た方が幸せだったかも。まぁ何かを「やるぞー」という目標を持つことは、生きてゆくうえで不可欠なんでしょうけれど。
そうそう、イアン・ハートを見ました!久しぶり!すっかり老けちゃって、刑務所仲間の長老を演じてました。スペイン革命を描く映画で、若気の至りの兵士(?)を演じていた若者と同じとは思えない(笑)。私も、長く映画を見てるんだなぁ・・・。
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