父も息子も、指揮者の親子。父・フランソワ・デュマール(ピエール・アルディティ)は、輝かしいキャリアを誇る大ベテラン。息子のドニ・デュマール(イヴァン・アタル)は指揮者として才能を発揮し、今や飛ぶ鳥を落とす勢い。ある日、父へ一本の電話が。それは夢にまで見た世界最高峰<ミラノ・スカラ座>の音楽監督就任の依頼だった。しかし、ドニは父の偉業を素直に喜ぶことができないでいた。翌日、ドニにスカラ座の総裁から呼び出しが。なんと父への依頼は、息子への依頼の誤りだった。ドニは父に真実を伝えなければいけない苦渋の選択を迫られるーーー。
主人公ドニを演じるのは『ぼくの妻はシャルロット・ゲンズブール』(03)で実生活でも夫婦であるシャルロットと共演・監督を果たしたイヴァン・アタル。ピエール・アルディティやミュウ=ミュウなどフランスを代表する名優たちが家族の葛藤のドラマを見事に描き出す。監督は俳優としても活躍するブリュノ・シッシュ。プロデューサーにはアカデミー賞作品賞受賞『コーダ あいのうた』(22)のフィリップ・ルスレらが参加。親子の対峙と再起の物語を彩るのは、数々のクラシックの名曲たち。世界最高峰<ミラノ・スカラ座>の豪華絢爛、大迫力の熱い演奏シーンは必見!さらに主人公が小澤征爾のスカラ座で指揮をする映像を見るシーンも!子が親を越えるとき、父は、息子は、何を思うのか。初めて二人が親子として向き合った時、誰も見たことのない驚きのステージが生まれる!(公式ウェブサイトより)
<2023年10月15日 劇場鑑賞>
才能があって成功している、というのも大変なことなのですね。この映画の主人公は、父親も高名な指揮者だが自分も成功している指揮者だという設定。二人とも才能があるうえ、社会的にもこれ以上ないほどの恵まれた生活をしています。それなのに、父親と息子は会えば言い争うし、長年のわだかまりは半端ない。息子はそのまた息子がいるのだけれど、どうやら妻と息子は家を出ている模様。そもそも結婚してないのか、離婚したのかはわからなかったけれど。で、その息子(要するに孫)ともうまくいってないみたいで、みなつっけんどんなのです。なんなのかと思いました。何が原因でそんなにお互いを忌避するのだろうと思って。私のような貧乏人は、子供の頃、両親が争うと言えばだいたいお金が原因だったし、なにをやっても何もできない子供を親が責めまくる、という構図でした。自分も勉強ができたわけでもないし、何一つ教えてくれるわけでもないのに、ただ「勉強しなさい」と言うだけで、期待するだけの成績を取らない子供をアホ呼ばわりし、口答えしようものなら「親不孝者が」と罵る、そんな構図で、笑顔の母親(父親もだが)を見たことがない、などという環境で育ったものにとっては、これほど才能にも環境にも恵まれた人たちがいがみあっていることが不思議でなりません。もちろん、お金と才能がある人々にはそれなりの葛藤がある、ということは頭ではわかっているのですが。尚、私たちは親からの言われなき虐待に対抗するため、陰で姉弟が結束しお互いを防御しあっていました。時には結託して嘘をついたり。そのおかげで、精神的に壊れずに来れたのではないか、と思っています。今も仲良しですし。みな家庭を持っていますけども。
話がそれてしまいました。ともかく、一筋縄ではいかない家族の物語。しかも、大きな仕事の電話を苗字が同じの父親の携帯に間違ってかけてしまった、と言う話。憧れの仕事に、大張り切りの父親。「秘書が間違ってしまった。君からお父さんにうまく伝えてくれ」という依頼主。「えぇ~」と思ってしまいました。だって、間違ったのは秘書でしょう?じゃ、間違ってかけてしまった人が自分で謝罪をいれるべきではないですか?なんで息子が言わなきゃならないのですか。「父なら経験も豊富だしちゃんとやれる」という息子に「君に頼みたい。俺だって聞く耳は持ってるんだ」って。じゃ、自分で申し入れるべきでしょう、間違ったことを。私なら絶対そう言うけれど、息子はどう言い出すべきか素直に葛藤していたので、そこは文化の違いかと思いました。
久しぶりにミュウ・ミュウを見れて感激しました。若い頃からファンでした。イヴァン・アタルも好きです。最初に彼に気付いたのは「僕の妻はシャルロット・ゲンズブール」。それからもぼちぼち映画は来ていたと思います。優し気な顔立ちが好きです。
で、展開は、なんだかんだ言ってもやっぱり家族。よくよく話し合えばわかりあえます。意外な事実も飛び出すわけですが(ここは驚いた)、ラストは本当に感動しました。「こういう手があったか~。やられたなぁ」と思いました。素晴らしい。この映画は、クラシックの素養がない私でも聞いたことのある曲も多数登場し、観客に優しい映画にもなってました(笑)。おすすめです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます