かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

初めてテルミンを聴いて

2008-04-06 03:24:17 | 歌/音楽
 話には聞いていたが、テルミンを初めて聴いた。
 テルミンとは、楽器に触れないで演奏できるという電子音楽。1920年にロシアで発明されたというから、シンセサイザーより遥かに歴史は古い。
 木の箱のようなものがあり、そこから垂直と水平にアンテナが出ている。その間の空間に電磁場が形成されていて、そこに手をかざすことによって、音が作成されるというものだ。つまり、発信されている電磁波を手で受けとめて、それを楽器のように音階に変奏するというものだ。

 4月5日、多摩センター・三越デパート内の新都市センターホールにて、テルミンによるコンサートが行われた。テルミン奏者は濱田佳奈子さん、ピアノ演奏は小川枝里子さん。
 濱田さんによる簡単なテルミンについての説明のあと、この楽器を聴いたことがあるかと会場の人(約百数十人)に訊いたところ、やはり聴いたことがある人はわずかだった。
 テルミンのアンテナ空間にただ手を当てて、その音だけを聴くと、何とも奇妙な音で決して気持ちいい音色ではない。スリラーやサスペンス映画の音楽に使われることもあるというのも尤もだ。
 ところが、これを正しい音階にそって音を作り演奏すると、独特の楽器の音色に変わるのである。
 曲は、サン・サーンスの「白鳥」から始まった。
 フォーレの「夢のあとで」と、クラシックが続く。
 見ていると、まるでエアハープ(エアギターというのがあるが)のようである。見えないハープを奏でているかのようだ。右手は鍵盤、左手は弦を弾いているように、優雅に手が動く。
 音色は、少しチェロに似ている。
 「蘇州夜曲」になると、二胡のようだ。この曲は服部良一の作曲だが、中国風のメロディが、最もぴったり合っているように思えた。
 途中、マトリョミンでの演奏もあった。
 マトリョミンとは、ロシアの民芸品入れ子人形のマトリョーシカの中に、エレクトロンの電子音楽を収めたもの。テルミンと同じ要領で奏でる。
 
 テルミンは、楽器のように形があるのではない。いわんやピアノやギターのように、ここを押せばドとかレとかの位置があるわけではない。すべて手と指の感覚である。だから、純粋なアナログだといえる。
 だからだろう。演奏しているというより演じているように見える。今日の演者の濱田さんが演劇科出というのも頷けるのだった。
 演奏を聴き終えて、この奇妙な独特の楽器は音楽プラスアルファの可能性があるのではと感じた。
 この楽器に何か演劇的、視覚的なものとコラボレーションすると、違ったものが生まれるかもしれない。例えば、人形劇とか、バリ島の影絵芝居(ワヤン・クリッ)とか、中国の京劇的なものとか。
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