ルネ・クレマン監督 ジェラール・フィリップ ヴァレリー・ホプソン ジョーン・グリーンウッド ナターシャ・パリー 1954年仏
アラン・ドロンが「太陽がいっぱい」で、世界的に有名になったのは1960年である。その後、美男子ナンバーワンの冠は彼の頭に置かれていると、僕は今でも思っている。監督は、「しのび逢い」でジェラール・フィリップを起用したルネ・クレマン。
ドロンが出てくる前の美男子の代名詞といえば、ジェラール・フィリップだった。彼が死んだのは1959年で、ドロンとバトンタッチをするかのように消えていった。まだ36歳の若さであった。
死ぬ前年には、彼は「モンパルナスの灯」で主人公の画家モディリアーニを演じた。この薄幸の画家とジェラール・フィリップがいつまでも重なっている。
「しのび逢い」は、ジェラール・フィリップの甘いルックスが最大限に生かされた映画といえる。というのは、女の口説き方を描いているのである。
女を口説くしか能のない落ちこぼれのサラリーマンを、彼が演じている。
まともな仕事もなく、しがない生活をしていた彼が口説いて結婚した女性は、知性も金もある申し分のない女性だった。その妻が留守の間に、彼は妻の親友(ヴァレリー・ホプソン)を口説き始める。真面目な妻の親友はその手に乗らないが、彼は自分の女性遍歴を告白することで、彼女の心に訴えようとする。
物語は、彼が披瀝する自分の女性遍歴と、妻の親友への誘惑が同時に進む。
この映画には、ラテン系のフランス人の口説くテクニックが各所に散りばめられている。こんな他愛ない台詞でも、甘いジェラール・フィリップが囁けば、女は揺れ動くに違いないと思わせる。
男の妻は、男のことを親友にこう言う。
「彼は世界中の女を“君だけだ”って、言いたい人なの」
「女が陥落しないと諦める。陥落しても諦める」
男は、妻がいない間に、過去の自分の女性遍歴を告白しながら、妻の親友に熱心に言う。
「僕の求めているものが君にはあるんだ」
「助けてくれ。僕を救えるのは君だけだ」
そして、妻と結婚したのは金がなかったのでやむを得なかったと身の上話をした上で、こう告白する。
「あのとき(結婚式場で)、初めて君を見た」
「今までの哀れな人生は、話した通りだ。僕は真の愛を知らない。やっと、真の愛に巡りあえた」
「君がいなければ、僕は破滅だ。君だけが、僕を救える」
「君に恋してから、以前の僕と違うんだ」
「信じてくれ。今から、それを証明する」
「僕のすべてを告白した。それが愛の証だ」
心が揺れ動いた女だが、きっぱりと断わって帰ろうとする。
すると、男は「君なしでは死ぬ」と、建物の窓から飛び降りようと演技をする。ところが、本当に落ちてしまう。
男が女を口説くには、狂言自殺をするくらい真剣でないといけないという教訓かもしれない。
アラン・ドロンが「太陽がいっぱい」で、世界的に有名になったのは1960年である。その後、美男子ナンバーワンの冠は彼の頭に置かれていると、僕は今でも思っている。監督は、「しのび逢い」でジェラール・フィリップを起用したルネ・クレマン。
ドロンが出てくる前の美男子の代名詞といえば、ジェラール・フィリップだった。彼が死んだのは1959年で、ドロンとバトンタッチをするかのように消えていった。まだ36歳の若さであった。
死ぬ前年には、彼は「モンパルナスの灯」で主人公の画家モディリアーニを演じた。この薄幸の画家とジェラール・フィリップがいつまでも重なっている。
「しのび逢い」は、ジェラール・フィリップの甘いルックスが最大限に生かされた映画といえる。というのは、女の口説き方を描いているのである。
女を口説くしか能のない落ちこぼれのサラリーマンを、彼が演じている。
まともな仕事もなく、しがない生活をしていた彼が口説いて結婚した女性は、知性も金もある申し分のない女性だった。その妻が留守の間に、彼は妻の親友(ヴァレリー・ホプソン)を口説き始める。真面目な妻の親友はその手に乗らないが、彼は自分の女性遍歴を告白することで、彼女の心に訴えようとする。
物語は、彼が披瀝する自分の女性遍歴と、妻の親友への誘惑が同時に進む。
この映画には、ラテン系のフランス人の口説くテクニックが各所に散りばめられている。こんな他愛ない台詞でも、甘いジェラール・フィリップが囁けば、女は揺れ動くに違いないと思わせる。
男の妻は、男のことを親友にこう言う。
「彼は世界中の女を“君だけだ”って、言いたい人なの」
「女が陥落しないと諦める。陥落しても諦める」
男は、妻がいない間に、過去の自分の女性遍歴を告白しながら、妻の親友に熱心に言う。
「僕の求めているものが君にはあるんだ」
「助けてくれ。僕を救えるのは君だけだ」
そして、妻と結婚したのは金がなかったのでやむを得なかったと身の上話をした上で、こう告白する。
「あのとき(結婚式場で)、初めて君を見た」
「今までの哀れな人生は、話した通りだ。僕は真の愛を知らない。やっと、真の愛に巡りあえた」
「君がいなければ、僕は破滅だ。君だけが、僕を救える」
「君に恋してから、以前の僕と違うんだ」
「信じてくれ。今から、それを証明する」
「僕のすべてを告白した。それが愛の証だ」
心が揺れ動いた女だが、きっぱりと断わって帰ろうとする。
すると、男は「君なしでは死ぬ」と、建物の窓から飛び降りようと演技をする。ところが、本当に落ちてしまう。
男が女を口説くには、狂言自殺をするくらい真剣でないといけないという教訓かもしれない。
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