先日、射撃を趣味とする患者さんからこういう話を聞きました。
「射撃をすると顎に衝撃が加わるので、インプラント治療をしてもインプラントが
壊れてしまう。」
仲間うちでこういう認識があるそうです。
私は初耳だったのですが、射撃は相当顎に振動が伝わるらしいです。
この話を聞いたときに、「インプラントが壊れるくらいの衝撃なら、自分の歯も
壊れてしまうだろうな。」と感じました。
実際に射撃でインプラントが壊れたという話を聞いたことはないのですが、インプ
ラントがどういう時に壊れるのか考えてみました。
まず、「インプラント本体」と「インプラントに装着する義歯」に分けて考えます。
インプラント本体
インプラント本体が壊れる(具体的には折れる)ことは考えられなくなりました。
初期のインプラントではインプラント本体が折れてしまったケースを散見しました
が、この10年間ではそのようなことは見受けられません。
インプラントは歯周病になる可能性がありますので、歯周病が進行すれば
インプラントが顎から抜け落ちてしまうという可能性はあります。
ただし、インプラントに直接大きな衝撃が加わらなければインプラントが抜け落ち
てしまうことはありません。
インプラントに装着した義歯
インプラントに装着する義歯とは、通常歯科であつかう材料と同じです。
金属やセラミック系の「かぶせ物」のことです。
この義歯に衝撃が加われば壊れる可能性があります。
金属は「ひしゃげる」だけですが、セラミック系の材料は「割れる」可能性があり
ます。
特にインプラントには「歯根膜」がないので、衝撃を緩衝することができません。
これが、「インプラントが壊れる」という表現につながったのかもしれません。
また歯ぎしりや食いしばりが強くある方では、毎日の歯ぎしり、食いしばりの影響
によって義歯が壊れてしまうことがあります。
結論として、インプラント本体が壊れることは滅多にありませんが、
インプラントに装着した義歯が壊れることはあり得ます。
ただし義歯はいくらでもやりかえることができますので、インプラント本体が壊れ
ない限りインプラントは使用することができます。