小幡歯科医院歯科話

品川区目黒駅前小幡歯科医院の公式ブログです。一般歯科治療の話から体の健康の話まで幅広く語ります。

新型コロナウィルスを正しく恐れましょう。

2020-04-28 10:53:58 | 医科と歯科

今、私たちは100年に一度の「災難」に巻き込まれています。

 

SARS-CoV-2という未知のウィルスによって引き起こされる、COVID-19という新型コロナウィルス感染症(重症急性呼吸器症候群)による恐怖が世の中に蔓延しています。

 

この恐怖はウィルスが未知のものであるために引き起こされているのは明らかで、専門家でさえも未来は予測できない状況です。マスコミでは歯科医院は「最もコロナウィルス感染のリスクの高い職業」と紹介されていました。実際に、現在当院はなるべく休診するようにしていますが、コロナウィルス感染の恐怖を感じることは多いです。

 

ただ、やみくもに恐れるのではなく「正しく恐れる」ことが大切であると思い、いろいろなところで情報を得ていました。「現段階での知見」であり今後状況によって変わっていく可能性はあるのですが、コロナウィルスの対応についてまとめてみます。

 

結論から言うと当たり前なのですが、必要なのは手洗い、うがい、歯磨き、外に出ないこと、です。

            

1 コロナウィルスについて

 

コロナウィルスはちょっと変わったウィルスのようです。亡くなってしまう人もいますが、症状が軽い人も多く、感染していても気がつかないことがあるという点で特異な性質を持っています。パンデミックを起こすようなウィルスは重篤な症状を引き起こすものが多く、感染すればすぐに気がつくものだそうです。そして、宿主の人間が死んでしまうとウィルスも死んでしまうので、最初は凶悪でもその後ウィルスは徐々に「毒性」を弱めていくそうなのです。

 

ところが、コロナウィルスは最初から必ずしも重篤な症状を引き起こさないような「毒性」をもっているために、対応が厄介になってしまいます。一番厄介な点は、気がつかないうちに感染していて気がつかないうちに他人に感染させている恐れがある、という点です。歯科医院の中が正にその状態です。自分が怪しいと思った患者さんは歯科医院を受診しませんが、それでも院内にウィルスを持ち込まれる危険はあるわけです。そして、逆に歯科医院側が患者さんにウィルスをうつしてしまう恐れも否定できません。これが歯科医院における不安要素です。

 

対応としては、すべての患者さんがコロナウィルスを持っているという前提で、そして自分もウィルスを持っているかもしれないと常に疑いながら診療を行うことです。もともと、歯科医院ではB型肝炎ウィルスやエイズウィルスに対する感染防護措置は行ってきていました。ただ後述するように、コロナウィルスに対しては今までの防護のやり方では不十分となります。今後、より感染防護体制を強化することが歯科医院に求められます。

           

2 コロナウィルスの感染経路

 

コロナウィルスが人から人へ感染するのは、「飛沫」と「接触」によるものです。

 

飛沫感染は咳やくしゃみ、場合によっては大声で話すことによって、ウィルスを含む水しぶきが他人の目、鼻、口まで飛んでウィルスが体内に入り込むことです。この対応は、距離をおくことです。一般的には2メートル以上の距離が推奨されています。飛沫感染の最大の防御策は「外に出ないこと」です。

 

接触感染はウィルスのついた手で、自分の目、鼻、口を触ってしまってウィルスが体内に入り込むことです。この対応は顔を触らないことと手をよく洗うことです。そして、外に出た時にはむやみにいろいろなところに手を触れないことです。そういう点で、接触感染の最大の防御策は「外に出ないこと」です。

 

要するに、飛沫と接触を避ければコロナウィルスに感染することはなく、最も確実な予防方法は「外出しないこと」です。そして、飛沫感染予防効果の順位は以下の通りです。

 

外に出ない >> 距離を置く >>>> マスク

 

マスクは思ったよりも予防効果は少ないと考えた方がいいようです。そのため、人と人の距離が近くなる歯科医院はリスクが高くなるのです。ただし、エアゾルによる感染のリスクはそれほど高くないようで、実際に歯科医院がクラスター発生源となった事例はほとんどありません(そして、これまで(4月28日現在)歯科治療を通じて患者さんがコロナウィルス感染した事例は一つもありません)。密閉、密接であっても密集ではないことと、使い捨て製品を多く使うようになったり、すべて滅菌して器具を使う歯科医院の感染防護体制によるものもあると思われます。ただし、血液感染を恐れたB型肝炎ウィルスやエイズウィルスと違って、コロナウィルスは唾液による感染も考慮に入れなければなりません。ここが今までとは異なり、とても困難を伴うところです。アフターコロナでは、歯科医院の体制も変革していかなければなりません。

 

なお、接触感染予防に有効な手洗いですが、アルコールで手を消毒することと同じように石鹸で手を洗うことでウィルスを殺すことができるようです。また、ものについたウィルスは3日で死にます。ウィルスは人間の体内でないと生きられないからです。食品以外のものですぐに家に入れなくてもいいものは、家の外に3日間出しておけば安全なものになります。

            

3 マスクの効果

 

マスクでは飛沫感染を防ぐことができないことは常識です。N95のような密封性の高いマスクならともかく、歯科医院で使うグレードの高いサージカルマスクでも、ウィルスを通さないようにはできません。使ってみるとよくわかりますが、鼻の横や頬の横には空隙ができます。N95は使っていると息苦しくて長く使っていられないそうですが、サージカルマスクは全く苦しくありません。空気中にエアゾルが発生していたら、ウィルスは素通りです。

 

ただし、マスクはエアゾルの発生を少なくするという点で効果が見込めます(科学的にはその効果は証明されていないそうですが)。

 

マスクをしていれば、咳やくしゃみをした時の水しぶきが飛ぶ量を抑えられます。万が一目の前で人に咳やくしゃみをされた場合も鼻や口に直接しぶきが入ることは減らすことができるでしょう。マスクは自分の感染防護のためというよりも、「人のため」と言えます。日本人が猫も杓子もマスクをしていると揶揄された時がありましたが、コロナウィルスに対してはそれが功を奏していると思われます。マスクで感染は防ぐことはできないけれど、感染のリスクを少しは下げることができるということです。一番大切なことは、マスクを過信することなくマスクをしていても人と距離を取ることでしょう。

 

専門家の意見に、マスクは飛沫感染を防ぐものではなく接触感染を防ぐものだ、というのがありました。どういうことかというと、マスクをしていれば鼻や口を直接触ることができないということです。ウィルスのついたものに手を触れるのは外出先ですから、やはり外に出る時にマスクをした方がいいと思います。そして、家に帰ったらすぐに手を洗うことが大切です。

 

5 重篤になる人

 

日本のコロナウィルス感染症の特異的なところですが、高齢者と基礎疾患を有する人が重症化のリスクが高く、乳幼児や小児に重症化例が少ないことが挙げられます。ですから、身の回りの高齢者と有病者にしっかりとターゲットを絞って対応することが大切です。当院でも高齢の方や持病のある方は、早くから受診を控えられていました。とても賢明な判断だったと思います。今後の救急ではない一般の治療の再開については、国内の感染のピークが過ぎて、医療崩壊の危険がなくなり、緊急事態宣言が完全に解除される時まで待たないといけないでしょう。それまでは応急処置的な救急対応しかできないと思われます。

 

ただし、ウィルスが変異する可能性もあって今後もその対応でいいのかはわかりません。

 

6 歯磨きがさらに大切に

 

鶴見大学歯学部の花田信弘教授がNHK「あさイチ」で新型コロナウィルス感染症に舌磨きが有効ではないかと話されていました。その理由は以下の通りです。

 

「新型コロナウィルス感染において症状が重篤化するのは、ウィルス性の肺炎と細菌性の肺炎が合併する場合である。まずはコロナウィルスによって肺炎が起きて、その後に細菌性の肺炎が続発する。その細菌性の肺炎によって症状が重篤になるので、細菌性の肺炎が生じないか軽度になる予防処置が重要である。」

 

誤嚥性肺炎(食べたものが間違って肺に入ってしまい肺炎になってしまうもの。食べ物の飲み込みがうまくいかなくなる高齢者に多い)の予防に歯磨きや口の中のクリーニングが有効であることは証明されています。口の中が清潔になっていれば、肺に悪い細菌が行ってしまうことが減り肺炎が予防されます。番組では舌磨きに注目していましたが、まずは歯磨きです。日頃歯科医院で重要視している歯磨きが、間接的にコロナウィルス感染症予防に有効です。

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いつ、コロナウィルスが収束するか誰にも予測できないでしょう。私はコロナウィルスはインフルエンザウイルスのようなもので、暖かくなる3月頃から収まってくると期待していました。しかし、全世界での流行を見ると高温多湿の国でもコロナウィルスが流行しているところがあるので、夏には収束するのではという期待はもろくも崩れ落ちました。

 

国難ともいえる事態で、すべての人が同じようにつらい思いをすることは今までなかったと思います。

 

それに対して私たちがやるべきことは、今まで通りの当たり前のことに「人と距離を取る」ことが加わりました

 

つまり、手洗い、うがい、歯磨き、外に出ないこと、です。

      

歯科医院からの発信なので、特別に歯磨きを加えました。歯科医院が通常通りの診療ができるようになるまで、今まで以上に意識して日頃の口腔ケアをしっかりと行ってください。

                  

          

 

小幡歯科医院

http://www.obatadc.sakura.ne.jp/

 

 

 

 

 


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お知らせ

2020-04-14 20:38:13 | 歯科話

新型コロナウィルス流行の影響を受けて、当院では、5月6日まで緊急の対応のみと致します。

 


また診療時間は原則11:00~17:30(平日)とさせて頂き、新規の方の受付は5月7日以降とさせて頂きます。

 

救急の対応につきましても、発熱・咳・倦怠感などの症状がある場合は診療をお断りする事があります。

 

今後、臨時休診や一定期間休診する可能性もあります。

 

受診者の皆様にはご不便をおかけ致しますが、ご理解の程、よろしくお願い致します。

 

 

小幡歯科医院 院長 小幡 宏一


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