最近、当院では歯の移植をすることが多くなったような実感があります。
http://www.obatadc.sakura.ne.jp/ishoku.html
私が歯学部を卒業したのが1991年です。
その頃は、インプラント治療にまだ信頼性がなく、日本では歯のないところに歯を植えるといえば、歯の移植が主流でした。
歯の移植は海外から日本に入ってきた治療方法ですが、ものを大切にする民族性や日本人特有の器用さがマッチしたのか、日本ではかなり「流行った」といえる治療です。
1990年代の専門誌には移植の話がよく載っていました。ただし、歯科全体で見れば移植治療を行っているドクターの方が少なく、またほぼ保険適応でなかったために(若年者の移植は保険適応)、一般的な治療としては世の中に認められていませんでした。
1990年代後半から、インプラント治療において材料の質や手術方法が確立されて、インプラント治療が世の中に認知されるようになりました。
その後、インプラントブームと呼ばれるような時期があって、素晴らしい治療方法だとマスコミにもよく取り上げられました。
しかし、インプラント治療が流行るにつれて、うまくいかないトラブル症例も増えていきました。そこに2012年放送のNHK「クローズアップ現代」で、インプラントのトラブルに関する特集が組まれました。そして、マスコミのインプラントバッシングがそれに続きました。
ここで、インプラントのブームは去り、インプラント治療に拒否反応を示す人も増えたのです。
このマスコミの手のひらを返したようなバッシングに対しては、歯科界からもクレームのような意見がありましたが、私はヒートアップしたブームから目を覚ますのによかったと思っていました。
現在でもインプラント治療に拒否反応を起こす人もいますが、納得してインプラント治療を受ける人もいます。
リスクのない治療方法はありません。
そいう言う意味で、現在は世の中がインプラント治療に冷静になっていると言えるでしょう。
さて、そんな経緯の中で「歯の移植」は依然として日本で続けられていますし、インプラントを行いたくない人には最適の治療となります(ただし、条件が整わないとできない治療ですので、誰にでもできるものではありません)。
最近、当院でも増えてきた理由に「歯の移植治療も進歩している」ことが挙げられます。
日本では歯の移植治療の臨床的な研究は続いているのです。
海外でもいまだに移植治療は行われていますが、日本ほどではありません。歯の治療にも細かい契約書を交わすようなアメリカでは、移植のような状況によって成功率が変わるようなものよりも、確実性の高いインプラント治療が選ばれます。
実際にインプラント治療は手術を行った際にどれくらいもちそうか予想がつきます。が、移植治療は手術を行った日には将来どのようになるか予想がつきません。術後3か月くらい経つとだいたい予想がつきますが、それでもインプラントでたてる予想には及びません。
しかし、人工の歯よりも自分の歯(移植治療の多くは親知らずを使う)の方がいいと思うのは万人に共通でしょう。さらに、抜いてもいいと思われる親知らずを使うのは、ものを大切にする気持ちが感じられます。
そんな理由もあってか、歯の移植は日本独自に進化を遂げた治療となっています。
「歯の移植」でネット検索すれば、たくさんヒットします。
インプラントを考えている人も、一度調べてみるといいでしょう。
小幡歯科医院
http://www.obatadc.sakura.ne.jp/