タイトルは専門用語なのでものものしいですが、「歯が原因でない歯の痛み」のことです。
具体的には歯に全く問題がないのに歯が痛く感じて、時にはいても立ってもいられないくらいの痛みになります。
歯科医院ではレントゲンを撮っても問題が見当たらず、その対応に苦慮します。その原因の特定が難しいからです。
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非歯原性歯痛が起こるメカニズムは大きく二つに分けられます。
1 脳の勘違い
痛みはすべて脳で感じ取ります。脳が体のどの部分が痛いのかを判断しています。
歯が痛いときに「どの歯が痛いか自分でもわからない」ことは多いです。患者さんに問診しても、実際に痛い歯から2,3個ずれていたり、上下で間違える(本当は下の歯が痛いのに、上の歯が痛いと感じている)こともあります。さすがに左右で間違えることはありませんが。
これが口の中ではなく、顎の周りのところの痛みが歯の痛みと勘違いされることがあります。関連痛ともいいます。
顎周りの筋肉の炎症からくるもの
頭痛からくるもの
蓄膿からくるもの
心臓病からくるもの
などがあります。歯と関係のないところの病気が歯の痛みを引き起こすのです。
特に、心臓の病態から歯にくる痛みは歯科医院で診断することは難しいです。
2 神経の状態に問題がある
歯には脳からくる三叉神経という脳神経がつながっています。脳では大脳の体性感覚野で痛みの判断をしています。その途中に三叉神経脊髄路核という基地局みたいなところがあるのですが、この部分が先ほどの勘違いをおこすところです。
こちらは、先ほどと違って神経が傷ついたことによる痛みです。神経障害性疼痛といいますが、腫瘍や糖尿病や帯状疱疹、ストレスなどがその原因にあげられます。
もう一つ、神経変調性疼痛というのもあります。
神経は傷ついていなくて変調をきたしているだけです。昔の傷が治っているはずなのに痛んだり(痛みの記憶といいます)、やはりストレスが原因で脳の痛みを感じるシステムに変調をきたします。
これらの非歯原性疼痛は歯の治療では治りません。といいますか、歯の治療をしてはいけません。
そして、一般的な痛み止めの薬が効きません。
神経に直接効かせる薬やうつ病の薬が有効な場合があります。
一般的な歯科医院では対応が難しく、専門(多くは大学病院)の機関へご紹介することになります。
小幡歯科医院