写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

湖畔の宿

2020年07月03日 | 旅・スポット・行事

 鶴田浩二の「傷だらけの人生」の歌の文句じゃあないが、♪ 何から何まで 真っ暗闇よ 筋の通らぬ ことばかり 右を向いても 左を見ても 馬鹿と阿呆の 絡み合い どこに男の 夢がある ♪を実感するような日々を過ごしている。

 コロナ禍が終息しない現在、律儀に今もって不要不急の自粛生活を続けている。漫然とテレビのワイドショーを見ている一方、もて余す時間をつぶすために新聞は隅から隅まで丹念に読んでいるが、コロナ禍と安倍政権を取り巻く腐敗した政治などの暗い話題ばかりが報じられている。

 政治はまさに歌の文句にある「右を向いても 左を見ても 馬鹿と阿呆の 絡み合い」という様相であるが、かといって我が身一つで何をすることもできないくせに、あまり愚痴ると「あなたが選んだ人たちですよ」とたしなめられる始末。

 こうなると、件の副総理がおっしゃった「日本人は他国とは違って民度が高い」という言葉を信じて、選ばれた人の高い民度に期待するしかなさそうである。とはいうものの、またぞろ期待が裏切られるのはガッテン承知の助。ここは自分で、極度な閉塞感を一掃するしかないと思い立ち、小さな旅をしてきた。

 山口県に住んでいると、お隣の広島県のことは知っているようでよく知らない。呉線沿いにある歴史の町・竹原と、海と坂の町・尾道を巡った後、三原の北西20kmにある白竜湖畔に佇む小さなリゾートホテルに泊まった。

 田舎にしてはお洒落なホテルである。白竜湖とは、椋梨ダムによってできた754万トンの貯水量を持つ湖のことで、ポツンと1軒だけあるホテルであった。部屋からの眺めは思わず「湖畔の宿」を口ずさみたくなるような景色に満足。

 その日の宿泊客はわずか4組。テレビを消すと物音ひとつしない。わずかに聞こえるのは私の耳鳴りだけという、久しぶりの静寂を味わう。たまには、こんな旅もあってもよいと思いながら、ほんの少し生気が養えたように思いながら小さな旅を終えた。