写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

小積の河津桜

2021年02月24日 | 旅・スポット・行事

 毎年この季節に「川津桜を見に行った」という話を聞くことがある。河津桜と言っても、伊豆の河津町まで出かけてきたという話ではない。近くに植樹されている所があり、このシーズンに一般の人に解放されているのを見に行ったという話である。

 この年になるまで、ソメイヨシノの下では毎年花見をしてきたが、ついぞ河津桜のお世話になったことはない。ネットで調べてみると、近くの周防大島町の小積(おつみ)、下松市の笠戸島、上関町の城山歴史公園などで見ることが出来ることを知り、小積に行ってみることにした。

 その前に河津桜についても少し調べてみた。「河津桜とは、日本固有種のオオシマザクラとカンヒザクラ
の自然交雑から生まれた日本原産の栽培品種の桜のこと。一重咲きで4cmから5cmの大輪の花を咲かせ、花弁の色は紫紅。早咲きが大きな特徴で、2月から3月上旬に開花し花期は1ヶ月と長い。1955年に伊豆の河津川沿いの雑草の中で1mほどの原木を偶然発見し、庭先に植えたことが由来である」。

 これくらいの予備知識を携えて、周防大島にわたり時計回りに走って、まずは我が家から60kmのところにある片添ガ浜を目指す。ここまでくれば小積まではあと3kmである。11時に着いたが、すでに30人ばかりの観光客が来ている。私有地の山の斜面に50~60本の河津桜が満開に近い状態で咲いている。

 ソメイヨシノが淡いピンクであるのに比べると、紫がかった濃い赤色で、花の大きさも2回りほど大きい。今が満開のようであるが、この状態はまだしばらく続くという。

 もう少し先にも同じように植樹してあるところがあり、訪れた客で賑わっている。伊豆の河津で見つけられた桜が、こんな遠くまでやってきて、多くの人を楽しませてくれている。これならわざわざ河津まで出かけなくてもいいようだ。

 春の瀬戸内海は、あたかもガラスの破片を散りばめたようにきらきらと光っている。デジカメを取り出して海をバックに河津桜を写した後、奥さんを撮っているとき、後ろから「お二人お揃いで撮りましょうか」という声がかかってきた。

 同年配の見知らぬご夫婦であったが、お言葉に甘えて久しぶりにツーショットで収まってみた。河津桜の長い花期にあやかって、末永く仲良く過ごしたいと思いながら、お返しに撮って上げましょうと言うと、やんわりと断られた。ひょっとすると、訳ありの2人だったかも?と、ゲスの勘繰りをしてみた。