写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

丸よさらば

2018年12月04日 | 生活・ニュース

 話題としては少し古くはなるが、やはり一度は書いておかなければならない話として、広島カープの丸選手の巨人への入団の話がある。 

 プロ野球セ・リーグで2年連続MVPを獲得した上、FA宣言をして去就が注目されていたが、やはりといおうか巨人への移籍という結末に終わり、カープファンをがっかりさせた。

 今季の成績は「打率.306、39本塁打、97打点」という好成績を記録した。報道によるとカープは「4年総額17億円」(4.2億円/年)で引き留めを図り、また巨人と争うかたちで獲得に動いた千葉ロッテマリーンズは「6年総額30億円」(5億円/年)を提示したとされている。最終的に「5年総額35億円」(7億円/年)を示した巨人を選ぶことになり、スポーツ界の常識通り、金がモノを言った格好になった。

 「スポーツ選手の評価の基準は年俸である」ということは頭の中ではよく理解している。丸選手は、ルールにのっとり自分を最高に評価してくれた巨人を選んだということで、何ら責められる点はない。来シーズンからは巨人の主力として、かつての仲間であるカープの選手と対戦していくことになる。

 ここまではよく理解できているが、どうも今一つ釈然としないところがある。「金の力」に屈した形に見える丸選手が、今までと違って「坊主の袈裟」に見えてきたことである。「可愛さ余って憎さ百倍」の心境である。

 マツダスタジアムでは毎試合3万人強のあれほどまでのカープフアンの声援を受けて3連覇を果たした古巣を蹴って出て行ってしまった。いままで応援グッズを叩いて応援をしていたフアンの両手をどこに持って行けばいいのか。せめて、パ・リーグへ行って欲しかったが、私ならどんな決断をしたかと問われれば、心もとない。

 かくも人の心を惑わす「金の力」の偉大さを噛みしめている。ルールとは言え、FA宣言は、人の心の繋がりを引き裂くものではある。「昨日の友は今日の敵」と、割り切れない気持ちをどう処理すればいいものか。出て行った女房と同じで、丸はもう戻ってはこない。「巨人でも頑張れよ」と素直に言えない男がいる。

 


目 標

2018年12月04日 | 生活・ニュース

 女優の赤木春恵さんが心不全のため94歳で亡くなった。ドラマ「おしん」や「渡る世間は鬼ばかり」などに出演し、テレビや舞台で人間味あふれる役で親しまれたという。

 テレビドラマを殆ど見ない私にとって、赤木さんの演技を見る機会は全くなかったが、逝去を伝えるニュースを見ているとき、赤木さんが生前言葉にしていたことに同感した。「目標というものは簡単に手の届かないほど遠くにあるものがよい」というようなことであった。

 仕事のように短期的、中期的に具体的な目標を掲げて着実に達成していかなければいけない目標は、絵に描いた餅のようなものであってはいけない。ところが、生きていく上での精神的、体力的な目標というようなものは、直ぐに達成できるものではなく、達成は不可能かと思われるくらい遠いところに置いておく方がよい。

 身近な話として自分自身の寿命である。年令が平均寿命まで5年や10年もある時には「平均寿命まで生きればいいか」と思っていた。ところがその平均寿命に近づいてくると「平均余命までは生きたい」と平均寿命にもう5年ばかり先まで生きることを期待している。

 こんなに尺取り虫のように数年ずつ先延ばしにする生き方ではなく、赤木さんが言ったように「この際、思い切って100歳を目標にいきています」と公言しておけば、日々の生き方も、それにふさわしい行動を自然ととるようになるのかもしれない。

 出窓で咲き始めた紅白のクリスマス・カクタスを眺めながら、これといって何もしなかったこの1年を振り返り、「来年こそはまた何かを」と高い目標の設定を考えている。目標の設定だけならだれでもできますけどねえ。