写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

チラッと立ち読み

2018年01月07日 | エッセイ・本・映画・音楽・絵画

 久しぶりに書店を覗いてみた。年末の慌ただしさにかまけて、書店に出かけることもなかったが、ちょっと見ぬ間のなんとやら、見かけたことのない本が、これでもかというほど置いてある。

 年のせいだろう、日野原先生の「生きていくあなたへ 105歳」「今日すべきことを精一杯」や佐藤愛子の「90歳 何がめでたい」「それでもこの世は悪くない」など、人生の大先輩が著した本に目が留まる。

 そのほか「定年後をどう生きるか」というような類の本も、新しく何冊も出版されている。正月だからだろうか若い客が多いが、このような本のコーナーには私以外誰もいない。それを良いことにして、少しの間、興味がある個所をチラッと立ち読みしてみた。

 著者名は記憶していないが、「定年後をどう生きるか」を書いた本の1冊には面白いことが書いてあった。定年後に私が思い実行してきたことと真反対のことが書いてある。「趣味なんか持たなくてもいい」「地域社会で活動なんかしなくてもいい」「友達なんかいなくてもいい」「ボランティアはしなくてもいい」「社会貢献なんかしなくてもいい」などなど、社会参加や人間関係の構築などせず孤独を楽しめと言っているようだ。

 今朝の新聞広告に、五木寛之著の「孤独のすすめ」という本の副題として「あなたは孤独な老人ですか? それなら、人生は豊かになります」と意表をついたキャッチフレーズが書いてある。

 人生の後半は、前向きに生きることにあくせくせずに、来し方に思いをはせ、自分を再評価しながら、ゆったりとした気持ちで過去を友に、孤独を楽しむのが新たな老い方だという。歳を重ねれば重ねるほど、人間は「孤独」だからこそ豊かに生きられると実感する気持ちが強くなってくる。

 人生を山登りに例え、一生懸命に頂上を目指す上りのときには見えなかった景色が、下山、すなわち老後には広範囲にはっきりと見えるものがある。孤独でその景色を楽しむことができるのが老人だ、といっているようである。

 でも、孤独に縁側で猫のひげをそろえるだけでなく、時には誰かと会話も楽しみたい。私はやっぱり孤独には耐えられない淋しがりやである。