写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

西の清里高原

2017年10月02日 | 旅・スポット・行事

 天高く秋晴れの日、岩国から40㎞、「広島の奥座敷」と呼ばれる「湯来温泉」へ向かって家を出た。渡ノ瀬ダム湖の右岸を北上してひた走る。道端にはコスモスが風に揺れ、小さな棚田には美しい黄金色した稲穂が重そうに頭を垂らしている。

 早くも紅葉し始めた木が所々に見られる。川沿いの小さな小学校の校庭には、テントが数張り張られ、白線がきれいに引かれている。どうやら週末は運動会の様子であった。そんな秋の景色を眺めながら、昼前に湯来温泉に着いた。

 数年前に来た時には国民宿舎「湯来ロッジ」の風呂に入ったが、今回は、ホテルの「日帰り温泉」を利用してみることにした。平日であったからか、お客は誰もいない。館内にある大きな湯舟と、露天風呂をしばらく独占した。泉源温度が29.8度の放射能泉と書いてある。肌触りが少しねっとりしているのはそのせいだろうか。

 近くにあるログハウスのレストランで昼食をとった後、「久保アグリファーム」という広い牧場に向かった。「澄みきった空気と美味しい水、清浄な牧草で 牛たちが伸び伸びと育っています」とパンフレットに書いてある。牧場内には、生乳を使用した「アルトピアーノ」というジェラートの工房がある。アルトピアーノとはイタリア語で「高原」を意味しているというだけあって、この辺りでは珍しく標高400mのなだらかな高原が広がっている。

 ミルク、イチゴ、ラムレーズン、チョコレート、抹茶など数種類のジェラートの中からイチゴを選んだ。広がる空の下、はるか遠くの山並みを眺めながら、牧場の生乳ならではの濃厚で新鮮なジェラートを、おいしく頂いた。

 ベンチに座ってのんびりと眺めていた時、ふと似たような景色を思い出した。八ヶ岳連峰の南麓に広がる清里高原である。高原にはソフトクリームが大人気な「清泉寮」があった。ここ、久保アグリファームでは「アルトピアーノ」が「清泉寮」と思えばよい。その瞬間私は決めた。ここを「西の清里高原」と命名することにした。