写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

鏡の間

2010年09月04日 | 生活・ニュース
 今住んでいる家を建てたのは22年前。人並みに仕事で忙しい中、設計から調度品の好みまですべて奥さんに任せっぱなしの建築であった。住んでいるのは実質10年ばかりだが、ここはこうすればよかった、あそこはこうした方が良かったなど、住んでみて反省するところはたくさんある。 
 その中でも、ここだけは何とか改善したいと、奥さんが強く思っているところがある。リビングルームである。リビングルームとは家族がくつろぐ憩いの部屋をいうが、我が家では来客があった場合には、応接間に早変わりをする。
 さて、そのリビングルーム、南向きに幅2間、奥行き2間半の広さがあるが、窓は南側にしか開いていない。天気の悪い日には部屋は少し暗く感じることがある。「もうひとつ大きな窓があったらいいね」、奥さんがいつも言う愚痴である。
 「よし、それなら窓を付けようじゃあないか!」。日曜日の朝、意見はまとまった。広島に向かって出かけた。行き先は家具屋さん。窓は簡単には付けられない。大きな鏡を取り付けることにした。
 クラシック家具屋さんだけあって、趣あるいろいろな鏡が置いてある。ふところ具合と相談し、気にいったものを1面買って帰った。窓と反対側の北壁の真ん中に横長にして掛けた。すると、今まで何の変哲もない白い壁に、南側の窓から見える庭の景色と同じ景色が明るくみえた。まさに、大きな窓を取り付けたような感じになった。
 愚痴の多かった奥さんも満足の笑顔。薄暗かったリビングルームが、あっという間にヴェルサイユ宮殿の鏡の間のように光輝いたと思うのは、家主のひいき目か。
 一方、この部屋に入るたびに、わが全身がどんと映し出される。それを見て思わずぎょっとする。ガマの油のガマではないがこの鏡、ひょっとするとダイエット効果もあるかもしれないと余分なものを期待している。
  (写真は、リビングルームにかけた「鏡よ鏡、鏡さん」)