中京11R高松宮記念
◎14.ナムラクレア
○1.マッドクール
▲10.サトノレーヴ
△6.ルガル
△12.トウシンマカオ
土曜の中京芝は渋化残りで、メインの豊橋Sでメルトユアハートは内2~3頭ぶんを避けてスローで逃げ、逃げきれそうだったが最後外からバウンシーステップに差された。メルトユアハートの内を走った馬たちは直線失速した。日曜は良に回復するだろうが、このバイアスに変化があるかどうかは何ともいえない。そして今年は確たる逃げ馬が大外のペアポルックスだけで、これが内を見ながらハナまでいくのかいかないのか。マッドクールやルガルは3番手ぐらいでOKだから、あまりペースが上がらず昨年(前後半34.9-34.0)のような後傾ラップになる可能性も十分だろう。
ルガルとサトノレーヴはピュアスプリンターと言っていいタイプで、この2頭は前傾ラップでガンガン行ったほうが持ち味は活きると思う。いっぽうトウシンマカオとナムラクレアはしなやかストライドで差す1400質で、1200ならば後傾ラップのほうが差しやすい(外差しが届くバイアスという前提だが)。マッドクールは昨年後傾ラップで勝っているし、阪神C2着を見てもアホヌーラ4×3らしいトゥルビヨン系独特のしなやかさで走るので、後傾ラップをイン番手から抜け出すのが最も勝ちパターンかもしれない。明日は最高気温11℃という予報なので、クロフネの夏馬のママコチャは下げてみた。
1人気だが◎はナムラクレア。3代母クードジェニーはマキャベリアンの全妹の仏2歳女王で、その孫娘で父ストームキャットのサンクイーンは繁殖牝馬として最高に近い名血といえる。G1を勝つ馬を産んで何ら不思議はない。ディープインパクト×ストームキャットのしなやかさで走るので大箱1400が最も斬れるが、1200なら後傾ラップで追走して斬れ味に賭けたい。斬れる牝馬に乗せたらルメールが最も達者なのは阪神Cを見てのとおり。昨年の高松宮が重で前後半35.7-33.2で走破して惜しい2着。昨年のセントウルSが良で、勝ったトウシンマカオは34.6-33.1で走破し大外一気を決めた。1400質のレースで一番強いのはナムラクレアだから、35秒を切るぐらいで入って32秒台で上がれば届くだろう、という結論で。
----------
例によってNETKEIBAの全頭血統解説より1~3着を
サトノレーヴ
快速ハクサンムーンやバーバリアンクラシック(独G3・芝2000m)勝ちWarring Statesの半弟で、シャルルゲランの甥。母チリエージェはJRA5勝(芝ダ1000~1400)。ロードカナロア×サクラバクシンオーはファストフォース、キルロード、テイエムトッキュウなどが出る短距離×短距離の黄金配合。スプリンターズSは後手に回ってしまったが、香港スプリントはモレイラがインを捌いてさすがの3着。大型馬でパワー兼備だが良馬場のほうがいいだろう。(距離◎スピード◎底力○コース◎)
ナムラクレア
ナムラムツゴローの妹でナムラクララの姉。3代母Coup de GenieはMachiavellianの全妹の仏2歳女王で、子孫にバゴやファンディーナなど活躍馬多数の名繁殖。父ミッキーアイルはマイルG1を2勝し、メイケイエールやララクリスティーヌなど牝駒は芝短距離でよく走る。しなやかで1400質なのもメイケイと似ていて、スプリンターズより高松宮の着順が良いのは後傾ラップになりやすいのもあるだろう。晴雨兼用だし馬群も割れる。阪神Cのように斬れに賭けるか。(距離○スピード◎底力◎コース○)
ママコチャ
ソダシの全妹で、ユキチャンやシロニイの姪で、アマンテビアンコやハヤヤッコのイトコで、メイケイエールも近親。母ブチコはJRA4勝(全てダ1800)。父クロフネはカレンチャンやアエロリットなどを出した名フィリーサイアー。良血でデビュー当初から注目を集めてきたが、古馬になって馬体重が増え短距離トップクラスに完成。クロフネ産駒らしい夏馬で、前走オーシャンSは最高気温20℃で快勝。昨年の高松宮記念は肌寒い小雨で動けなかった。(距離○スピード◎底力○コース◎)
今年の高松宮はマッドクールかペアポルックス、どちらかが行くにしても前半はゆっくり入るとみて、ならば1400質のナムラクレアがルメールでついに差し届くのだ、という予想でいこうと
ゲートが開くと、ビッグシーザーやウイングレイテストなども先行争いに加わり公式ラップは前後半33.8-34.1、ナムラクレアで前後半34.7-33.3です
1400質の追走で、直線は勝ち馬の直後から満を持して追い出して、ルメールさんならこう乗るだろうというまさに思い描いたとおりのレース運びで、美しいストライドでしなやかに斬れたのですが、躍動するピュアスプリンターをとらえることはできなかった
こんな名血のナムラクレアでも、名手が完ぺきに乗っても勝てないんやなあ…という思いと、まあ繁殖として母ちゃんぐらい大成功するのは間違いないので、サトノレーヴが種牡馬になれるならそれはそれでよい結末じゃないか…という思いが交錯
1~4着まで6歳が独占という結果になりましたが、最近でもファストフォースは7歳、ジャンダルムは7歳、ナランフレグは6歳にしてスプリントG1初制覇ですからね
チャンピオンスプリンターというのは鍛えられながらCCの筋肉を増してスプリンターとして完成するので遅咲きが多く、ロードカナロアだって4歳春の高松宮は3着に負けているし、天才スプリンターのサクラバクシンオーだって3歳のスプリンターズは6着に負けてます
3歳時にスプリントの頂点まで駆け上がったのは最近じゃピクシーナイトぐらいじゃないかと思いますが、香港短距離界もウェリントンとかなんちゃらプローンとかラッキーなんちゃらとか、トップクラスは7歳ぐらいまで毎年香港スプリントに出てますよね(まあほとんどがセン馬というのもありますが)
上表はロードカナロア×サクラバクシンオーのJRA勝ち馬一覧で、サトノレーヴの出現で問答無用の最強の短距離配合に認定されました
ロードカナロア×サクラバクシンオーが短距離で大成功した最大の理由は、Nureyevとテスコボーイを通じるナスペリオンのクロスになること、Storm Bird≒ノーザンテーストのニアリークロスになること、そしてSecretariat≒Sir Gaylordのクロスにならないことで、ようするに両者のCCスプリンターとしての頑強さがONになりやすいという解釈でいいと思います(牡が圧倒的に走るのも頑強さという観点で説明できる)
ロードカナロアはその母レディブラッサムがSecretariat=Syrian Seaの全きょうだいクロス3×4をもつので、世界の短距離王としては非常にしなやかな体質でしたが、だから産駒においてSecretariatやSecretariat≒Sir Gaylordの3/4同血クロスをやると、マイル以下を走るには柔らかすぎるような体質になりがちであまりプラスにならないのです
以下はロードカナロア産駒の母父別成績ですが、出走数10頭以上で勝馬率や1走当賞金がカナロア産駒全体を上回るのは、サクラバクシンオー、ファルブラヴ、サンデーサイレンス、ハーツクライ、フレンチデピュティ、スペシャルウィーク、シンボリクリスエスで、ロードカナロアと比較的相性が良い母父は、いずれもSecretariat≒Sir Gaylordの血はもっていません
ロードカナロア産駒全体(平地勝ち馬486頭/JRA出走1145頭)勝馬率42.4%、1走当賞金234万円
サクラバクシンオー(17/28)勝馬率60.7%、1走当賞金505万円、サトノレーヴ、ファストフォース
ファルブラヴ(9/18)勝馬率50.0%、1走当賞金403万円、ステルヴィオ、ミッキーワイルド
サンデーサイレンス(32/65)勝馬率49.2%、1走当賞金389万円、アーモンドアイ、ダイアトニック
ハーツクライ(20/41)勝馬率48.8%、1走当賞金314万円、コスタノヴァ、ケイデンスコール
フレンチデピュティ(11/24)勝馬率45.8%、1走当賞金285万円、レッドルゼル、アンヴァル
スペシャルウィーク(20/40)勝馬率50.0%、1走当賞金274万円、サートゥルナーリア、グルーヴィット
シンボリクリスエス(19/27)勝馬率70.4%、1走当賞金254万円、レッドガラン、ダノンスプレンダー
サクラバクシンオー(テスコボーイ)、ファルブラヴ(Special)、ハーツクライ(トニービン)が1走当賞金で上位であることからも、カナロア産駒はナスキロよりナスペリオンのクロスなのだと、ナスキロでは最柔のSir GaylordよりはナスペリオンでもあるMill Reefのクロスのほうが跳ねます
ディープインパクト(62/133)勝馬率46.6%、1走当賞金223万円、ブレイディヴェーグ、レッドモンレーヴ
これらと比較すると母父ディープインパクトは上のように1走当賞金が高くなく、短距離~マイルの大物が出ていないことがこの数字につながっているといえます
ご存じのように、ディープインパクトの母父の母父はSir Gaylord直仔Sir Ivorで、ディープ×Storm Catの黄金配合はSecretariat≒Sir Gaylord的な柔らかさによって成功したといえるのですが、カナロア産駒でマイル以下の大物を出すにはSecretariat≒Sir Gaylord的柔らかさはあまり必要ないというわけで、ブレイディヴェーグやサートゥルナーリアみたいな馬をつくるにはいいんですけどね
以下はロードカナロア産駒のJRA重賞距離別成績で、Secretariat≒Sir Gaylordのクロスの有無で分けてみました
Secretariat≒Sir Gaylordのクロスをもたないロードカナロア産駒の重賞成績
Secretariat≒Sir Gaylordのクロスをもつロードカナロア産駒の重賞成績
Secretariat≒Sir Gaylordのクロスをもたないロードカナロア産駒は、芝1200は[140-105-80-766]連対率22.5%、1走当賞金324万円、重賞勝ちはG1(3)、G2(1)、G3(9)
Secretariat≒Sir Gaylordのクロスをもつロードカナロア産駒は、芝1200は[88-86-59-597]連対率21.0%、1走当賞金209万円、重賞勝ちはG3のみ(4)
これだけ見ても、ロードカナロア産駒におけるSecretariat≒Sir Gaylordのクロスは、少なくとも高松宮記念や安田記念を狙う上では、プラスに働くことはあまりないといえるでしょう
そして先ほどのロードカナロア×サクラバクシンオーのJRA勝ち馬一覧ですが、馬名が青塗りになっているのはSecretariat≒Sir Gaylordのクロスをもつもので、この最強配合においてもSecretariat≒Sir Gaylordのクロスはやっぱり跳ねていないというべきかと
アパッシメントとベルジュロネットは4戦2勝の3歳馬ですから今後の成長次第でトップスプリンターに完成する可能性もないとは言わないですが、どちらも現状ダ1400で活躍していて、やっぱりCCパワースプリンターというよりはしなやか1400型というタイプに見えるんですよね
ディープインパクト×Storm Catの黄金配合は、リアルインパクト(ラウダシオン、モズメイメイ)、ディープブリランテ(ラプタス、モズベッロ)、ディスクリートキャット(オオバンブルマイ)、アジアエクスプレス(ピューロマジック)、そしてミッキーアイル(ナムラクレア)の代表産駒が出たように、ディープ孫の代でもSecretariat≒Sir Gaylord的な柔らかさで成功しているのですが、ロードカナロア×ディープインパクトは柔らかすぎてマイル以下では跳ねないのです
そんなことを考えているとね、ミッキーアイル×Storm Catでスプリンターとしてはしなやかすぎて大箱1400で最も斬れるナムラクレアが、ロードカナロア×サクラバクシンオーの新短距離王を差せなかったというのは、たしかに順当な結果なのだろうと受け入れるしかないんですよねえ…サトノレーヴもモレイラも素晴らしかった
ちなみにSecretariat≒Sir GaylordのクロスをもつJRA短距離G1勝ち馬というのは、私が思いつくのはグランアレグリア、キングヘイロー、ウルトラファンタジー、この3頭ぐらいですかね、グランアレグリアとキングヘイローはまさにA級マイラーの脚で追い込んだというべきですな
それはキングカメハメハとサクラユタカオーでまず考えるべき関係ですよね
ちなみにバクシンオーを経由しないロードカナロア×サクラユタカオーは成功しているとはいえないデータですね(5頭全て未勝利)
カナロアはネジを締める方向で、アーサーは緩める方向で
だいたい頑強さを増すようなことしかやってないですよね