栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第167回天皇賞回顧~淀の春天、今年もディープと下る

2023-05-02 10:07:52 | 血統予想

京都11R天皇賞
◎6.アスクビクターモア
○9.ヒュミドール
▲3.タイトルホルダー
△13.ボルドグフーシュ
×1.ジャスティンパレス
×12.ブレークアップ
×16.シルヴァーソニック
新装京都の芝レースをみていると、コーナーが少し緩やかになったぶんの影響はありそうだが、サーゲイロードやプリンスリーギフトの血を引く前輪駆動な馬がバンバンきているから、そこは旧京都のイメージ、旧春天のイメージでよさそうだ。
タイトルホルダーはまさにハイペリオンが体現された名馬で、頑強なピッチ走法で同じフォームでいつまでも走りつづけることができるが、同じ3200なら京都外より阪神内がベターには違いない。そこを凌駕するだけの現役ナンバーワンのスタミナと地力があるのは認めるが、京都の春天ならディープインパクトにブラッシンググルームとロベルトとグロースタークが入って、重厚なマヤノトップガンというべき走りを見せるアスクビクターモアのほうに◎を打ちたい。
繋ぎが長くて弾む走りなので、日経賞のようなノメる道悪はダメだが、土曜夕方から降り出した雨は日曜の午前中にはあがってそこからは晴れ予報。上滑りする馬場でなければ我慢するのではないかとみる。武史が下りで和生に接近するシーンが今年のハイライトだろう。
阪神大賞典組では、ジャスティンパレスは外回りに替わるのがプラスだが、下りが巧いのはトムフール走法のボルドグフーシュという気がする。ヒュミドールは父オルフェーヴルで、母父チチカステナンゴの母スマラがサーゲイロード=スワンシー3×3。出走馬のなかで最も前輪駆動で走るし、さすがに勝つとは思えないので◎は打てなかったが、今年の春天で一番買いたいのはこれ。

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例によってNETKEIBAの全頭血統解説より1~3着を

ジャスティンパレス
母パレスルーマーは優秀な繁殖で、本馬の他にもベルモントS(米G1・ダ12F)勝ちPalace Maliceスやアイアンバローズを産んでいる。近親にハリウッドゴールドCのRail Tripなど。母父Royal AnthemはTheatrical産駒で芝10~12FのG1を3勝。この影響が強いNureyev的な野太いストライドは坂コース向きで大箱向き。母系にはRelaunchも入るので、ある程度前々で持続力を活かすレース運びがいいだろう。京都でも前走のようなケイバで。(距離○スピード◎底力◎コース○)



ディープボンド
ダンケシェーンの半弟でローレルゲレイロのイトコでノースブリッジやタッチウッドも近親。Storm Catの血脈構成をニアリークロスで増幅し、キズナ産駒の走る配合パターンといえる。無駄なく燃費よい走りで、スタミナと機動力を兼備していて、長距離ならいつでもどこでもしぶとく好走するが、大一番で2着が多いのは母母父カコイーシーズの面影も…。春天も2年連続2着でここは三度目の正直。ただ京都外回りに替わるのはプラスではないか。(距離◎スピード○底力○コース○)



シルヴァーソニック
キャプテントゥーレ、アルティマトゥーレ、クランモンタナなどの弟で、ゴールデンチケットやロワジャルダンのイトコで、母エアトゥーレは阪神牝馬S勝ち。母母スキーパラダイスはムーランドロンシャン賞(仏G1・芝1600m)勝ち。オルフェーヴルの牡駒で「父スタミナ×母スピード」の配合だから長距離先行型に出たのは順当。無駄肉のない体質もいかにもステイヤーで、3000m以上では[2-0-4-1](着外は春天の落馬)と好走がつづく。鞍上も3連続騎乗で手の内に。(距離◎スピード○底力◎コース○)



前夜に強い雨が降ったにしては稍重まで乾くのが早かった日曜の京都芝ですが、けっきょくメインまで良には回復せず、8R9Rの連対馬をみても、高速馬場よりちょっと時計かかる馬場のほうが…というメンツ

当日はブログにコメントを書き込める環境じゃなかったんですが、天皇賞のパドックがはじまると「タイトルホルダー良く見えない」ラインが何件か入ってきて、私もバタバタしてたので「同意」としか返せなかった

日経賞とは悪い意味で違うなというのが第一印象やったんですが、後で見返してみると有馬ともちょっと違う感じで、もともとHyperion体質なのでパドックの歩きはそんなに良く見せるほうじゃないんですが、有馬はいかにも冬場で体が硬くなってゴトゴトという歩き、日経賞は暖かくなったらそれがほぐれてくるんやなというスムーズさ

そして天皇賞はというと、ゴトゴトというよりも何か疲れが残ってるかのような躍動感のなさで、望田のおっさんがボウリング3ゲームやってしまった翌々日みたいな動きの悪さといえば近いのかな、近くないか(^ ^;)

憶測であれこれ言ってもはじまりませんが、日経賞で極悪馬場を力走しすぎた反動、というのが最も有力ですかね…アスクビクターモアもスムーズさを欠くレースになったとはいえ、直線全然伸びてないですからね

逃げ宣言のアフリカンゴールドが行ったものの心房細動で早々と後退、タイトルが押し出されてハナに立ってからも行きっぷりがよくないので、残り1200mから13秒台が二つつづき、そこからゴールまで12.3-11.9-11.5-11.9

この坂を下って直線に入るところで最もスムーズに加速していたのは、ディープインパクトの血を引くジャスティンパレスとディープボンド、そしてオルフェーヴル産駒のシルヴァーソニックでした

ディープボンドは京都の高速上がりだと例によって鋭さ負けするんじゃないかとみたんですが、ちょっと時計のかかる馬場で上がり35秒台の世界ならというしぶとさで、あとSir Ivor≒Terlingua≒Drone4・6×5・5でナスキロが多い配合ですから、下るときの前の駆動はいいですよね

ジャスティンパレスはディープインパクトをNureyev的なナタのストライド仕様にしたようなイメージで、オルフェ+Robertoらしいピッチで走る兄アイアンバローズとはかなり走りが異なり、阪神内回りより京都外回りのほうが断然走りやすいですね



配合のポイントとしては、Royal Anthemの母父Ack Ackの母Fast Turn、これがAlzaoの母Lady Rebeccaと3/4同血で、このLady Rebecca≒Fast Turn4×5でスムーズに下ったという印象もあるし、Nantallah≒Nashua的機動力に傾注したアイアンバローズとの配合の違いともいえるのでは(ちなみにディープインパクト産駒では、ワグネリアンがLady Rebecca≒Fast Turn4×5ですね)

いずれにしてもパレスルーマーはTheatricalとRobertoとHerbagerのスタミナをよく伝える名繁殖で、ベルモントSのPalace Malice、阪神大賞典2着アイアンバローズ、そして春天のジャスティンパレスを産んだことになります

ボルドグフーシュは勝ち馬の後ろにいたんですが、下りから川田の手が動きはじめてむしろ離され気味で、下りの巧拙のぶん阪神大賞典より更に着差が拡がってしまったという印象

ヒュミドールのユタカはダイヤモンドのようにイン狙いやったようですが、それだけにタイトルが後退したときにいっしょにポジションが下がってしまった

というわけで3年ぶりの京都春天も、Sir Gaylord(ディープインパクト)とPrincely Gift(オルフェーヴル)で下り、でもトニービン(シルヴァーソニック)は2着3着までで、カコイーシーズ(ディープボンド)はまたまた2着だったという結果でしたが、これでルメールは京都の春天と菊合わせて[5-1-2-5]、そしてディープインパクトの血を引く馬に限れば[4-1-1-1]

23年春天ジャスティンパレス2人気1着
20年菊アリストテレス4人気2着
19年春天フィエールマン1人気1着
18年春天フィエールマン7人気1着
17年菊アルアイン2人気7着
17年春天サトノダイヤモンド2人気3着
16年菊サトノダイヤモンド1人気1着

ディープの血で淀の長距離を下って差すのは、フレンチの鉄人のオハコの一つですな

コメント (1)
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