栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第72回安田記念回顧~スローの後傾戦、Halo的マイラーが軽快に

2022-06-06 14:43:30 | 血統予想

東京11R安田記念
◎9.シュネルマイスター
○7.ファインルージュ
▲4.ダノンザキッド
△17.サリオス
×1.カフェファラオ
×8.イルーシヴパンサー
×13.ソングライン
×14.ソウルラッシュ
土曜の東京芝は内枠同士の決着がひと鞍もなく、直線は各馬広がって外に持ち出した馬が伸びていた。パワーのない馬が荒れたインを通ると苦しい。
レシステンシアは高松宮で行って失敗しているから、ここも番手で折り合ってペースを落として後続を封じたい。ミルコがテン乗りのG1でハナを切るイメージもないから、坂井瑠星のホウオウアマゾンがハナだろう。3頭の隊列が早めに決まれば、昨年(46.4-45.3)ぐらいの後傾ラップも十分ありうる。
その昨年は後傾ラップで1800質のレースになって、毎日王冠と中山記念の勝ち馬ダノンキングリーがマイルの女王グランアレグリアを押さえた。外目が伸びる馬場で1800質の差し比べを想定すると、いろいろ考えてみてもけっきょくシュネルマイスターに着地するしかない。母母父がフレンチな斬れを伝えるハイエストオナーで、東京でルメールとのコンビはまさに最強。中間は種馬のような体つきになっているが、むしろ晩成というべき血統だからマイラーとしてパワーアップしてきたと解釈する。
スローの府中牝馬をとても勝ちそうなファインルージュから入る手も考えたが、母父ボストンハーバーだからクロコスミアのように大一番で2着キャラやと思うし、そういう馬をG1で◎で狙うのははばかられるので大本線の○。府中1800重賞で強い勝ち方をしているサリオスとダノンザキッドまでを上位視。
イルーシヴパンサーも本格化しているが、ハーツ産駒は安田記念やマイルCSやヴィクトリアマイルを勝ったことがない。いや厳密にいえば不良馬場のジャスタウェイがあるが…。ソウルラッシュは母がマンハッタンカフェ×ストームキャットだからショウナンマイティのようなイメージだが、父がルーラーシップのぶんちょっともっさりしているので高速決戦になってどうか。カフェファラオはこの枠なら祐一がポンと出して注文をつける可能性がある。セリフォスはNHKでかかっただけに折り合いを気にしているが、有力馬と同じところから差し比べをやったら、ダイワメジャーだから足りないと思う。

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例によってNETKEIBAの全頭解説より1~3着を

ソングライン
ジューヌエコールやルミナスウイングの姪で、母ルミナスパレードはJRA4勝(芝ダ1200~1400m)。母母ルミナスポイントはノーザンリバーの全姉でJRA5勝のオープン馬。牝祖ソニンクからはディアドラ、ロジユニヴァース、ランフォルセなど活躍馬が多数出る。キズナ×シンボリクリスエスはアカイイトと同じ。NHKマイルで1.31.6で走破してシュネルマイスターと大接戦が光る。キズナ産駒のマイラーだから、バスラットレオンのように高速巡行で。(距離◎スピード◎底力○コース○)



シュネルマイスター
モーリスラクロアT(独G3・芝1400m)勝ちSerienhoeheの甥で、母セリエンホルデは独オークス(独G1・芝2200m)勝ち。サリオスやサラキアも同じドイツ牝系だ。母父Soldier Hollowはバイエルンツフトレネン(独G1・芝2000m)勝ち馬で独リーディングサイアー。父Kingmanは[7-1-0-0]の名マイラーでPersian Kingなどを輩出。父を重厚にしたイメージの差しだが、Hペースのドバイターフは直線伸びず。東京マイルでジックリ差す形で巻き返す。(距離○スピード○底力◎コース◎)



サリオス
母サロミナは独オークス馬で、産駒にサラキアやエスコーラなど。シュネルマイスターも近親。母系にデインヒルとNiniskiが入るのはワーケアと同じで、最近は母方のデインヒルのパワーが表現されたハーツクライ産駒がよく走っている。マイル路線に舵を切ってから煮えきらない内容がつづいており、1800の毎日王冠が鮮やかな勝ち方だっただけにここも評価が難しい。たしかに550キロの肉付きは長いところ向きとは言いがたいのだが…。(距離○スピード○底力◎コース◎)



東京芝Cコースは見た目にインが荒れていて、日曜8Rの芝1600戦は外に持ち出したフォティノースが差し切り、9Rの芝2000戦は超スローの行った行ったで、8Rでラチ沿いを粘って2着だったユタカは9Rではハナを切って直線では外目に出しながら追っていて、インがノーチャンスというわけではないけれど直線はできれば馬場のいい外に持ち出したい、というバイアスだったかと

ホウオウアマゾンの逃げなら昨年(46.4-45.3)ぐらいの後傾ラップも十分ありうると書きましたが、前後半は46.7-45.6で、昨年と比較しても中盤2Fが12秒台に緩んで上がり3Fが11.2-11.0-11.4ですから上がり3F特化、しかし前残りにはならず外差し比べになりました

「好位置に押し上げられたが、外に持ち出すチャンスがなく馬場の悪いところを走らされてしまった」とユタカはコメントしており、好手応えで直線に向いたファインルージュとダノンザキッドの先行2騎の叩き合いの外から、ソングライン、シュネルマイスター、サリオス、セリフォスが脚を伸ばしてきたところがゴール

ソングラインはこれで通算[5-2-1-3]となりましたが、着外3回(ヴィクトリアマイル5着、阪神C15着、桜花賞15着)は道中不利があったり馬場の悪いところを走らさせたりでいずれもハッキリした敗因があり、今日は外枠もよく終始馬場のいいところを通ってこれました

昨年のNHKマイルはシュネルマイスターにハナ差の2着、あれも直線併せ馬で叩き合っていたグレナディアガーズが失速したので内にヨレてしまい、そのぶんの負けともいえるぐらいの惜敗でしたから、あの借りも返したことになります

パドックのシュネルマイスターは気合い乗りに乏しく、体の張りも昨秋と比較すると一息に見え、いろんな人が指摘していたように決して絶好調とは言えなかったと思うし、この2着はやっぱり強いの一語

サリオスは-22キロの528キロ、良いか悪いかは判断しかねましたが、まあ毎日王冠仕様というべきつくりではあったかと

あと明らかにデインヒルの影響が強い馬ですから、オージーの名手レーンとも手が合いますな(これで5回騎乗して新馬1着、皐月2着、ダービー2着、香港マイル3着、安田3着)

セリフォスは折り合いはついて能力の高さを見せましたが、ダイワメジャーがマイルG1で差しに回ってもG1級はなかなか差せないのだ…という4着でもあったかと

スローで馬群が一団ですすんだので、イルーシヴパンサーやソウルラッシュなどは道中身動きがとれず、ポジションを上げられず直線も前がカベで苦しかった



ソングラインはキズナ×シンボリクリスエスですからアカイイトと同じで、キズナ産駒はStorm Catの血脈構成(Northern Dancer、Bold Ruler+Princequillo、Tom Fool、Eight Thirty)を押さえた配合をすればだいたい走るので、そしてシンボリクリスエスはBold Ruler+PrincequilloとTom FoolとEight Thirtyをもつので、Northern Dancerの血を引くシンボリクリスエス牝馬と配合すればだいたい走るともいえます



上は「キズナ×シンボリクリスエス×母母Northern Dancer」ですが、ここでもフィリーサイアーぶりが顕著ですな

ソングラインとアカイイトの場合は、母系にリマンドやハイハットが入って、キズナのスタミナ源ともいえるAcropolisの血と「Hyperion+Donatello」の組み合わせで脈絡しているのもポイントで、ロジーナの母系にもメジロマックイーン経由でリマンドが入ります






母母父Highest Honorでフレンチの鉄人を背にフレンチな斬れで差してきたシュネルマイスター、母母父デインヒルでオセアニアの名手を背にパワー全開のサリオス

この2頭を封じたのは、最も日本向きの高速マイラーで、日本で大成功したソニンク牝系と日本で大成功したサンデーサイレンス父系を通じるサンデーサイレンス3×4で、Halo的脚捌きで軽快に走るソングラインでした

和顔の名手・池添謙一の存在感を示す一戦でもあったと思います

コメント (10)
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