栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第64回有馬記念回顧~エヴァーグリーン・ハイペリオン(2)

2019-12-23 14:54:43 | 血統予想
中山11R 有馬記念
◎14.ヴェロックス
○9.アーモンドアイ
△16.シュヴァルグラン
今年の有馬記念はたしかに豪華メンバーが揃ったが中山より東京向きの馬だらけで、展開も微妙なので難しい。◎はヴェロックス。昨年のブラストワンピースと似た戦績で、菊花賞のパドックを見た印象だと3000mを走るには少し肉付きが良すぎるので距離短縮はプラス。渋った馬場もOKだし、母父モンズンで揉まれ弱い面が垣間見られるので、好位から捲っていける外枠のほうがレースはしやすいだろう。3歳を狙うならこれだと思う。シュヴァルグランは昨年◎にしたので今年も印は入れる。

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金土日とひだかに足を運び、静内青年部のみなさんの前で配合大喜利をやったり、パカラ岩倉に同行して浦河の牧場を訪問したりという3日間で、有馬記念はテイエムオペラオーの杵臼牧場さんちで見せていただきました(川越ファームさんともども、パカラの特集「牧場の歴史シリーズ」をお楽しみに)

そんなわけで有馬のパドックも返し馬も、それどころか土日の競馬もあんまり見てないんですが(^ ^;)、まずは例によってNETKEIBAの全頭血統解説より、序文と1~3着を再掲

過去5年の有馬記念において、上がり3Fとも11秒台だったのが14年(5人気-9人気-1人気で決着)。2Fが11秒台だったのが17年(1人気-8人気-3人気)と15年(8人気-5人気-4人気)。1Fだけ11秒台だったのが18年(3人気-1人気-9人気)と16年(1人気-2人気-3人気)。上がりのケイバになると波乱の目、流れて持続戦になると力どおりという傾向

リスグラシュー
母リリサイドはLyphard4×3とMill Reef5×3を持ち、仏1000ギニーで1位入線も6着降着となった。晩成ハーツクライ産駒の典型で、4歳秋についに本格化。重厚なナスペリオン斬れは大箱向きだが、宝塚記念ではアッと驚く先行策で完勝。まさに父がディープを破った有馬を彷彿させる勝利だった。タフな馬場もOKだが、阪神2200はポケット奥からのスタートで1角までが長い。中山2500で同じように先行するのは難しいか。(距離◎スピード○底力◎コース○)



サートゥルナーリア
リオンディーズの3/4弟でエピファネイアの半弟。母シーザリオはオークス馬で名繁殖。父がキンカメからカナロアに替ったが、Northern Dancer血脈が強い父母相似配合なのは同じで、リオンディーズをしなやか体質にしたような、まさに父と母を足して割ったような馬に出た。しなやかでアクションが大きいので、秋天のように力んで走ると消耗も大きい。中山内回りはプラスとはいえないから、いろいろとスミヨンの手腕頼みに。(距離○スピード◎底力◎コース○)



ワールドプレミア
ワールドエースの全弟でヴェルトライゼンデの3/4兄で、ジャックルマロワ賞(仏G1・芝1600m)などに勝ったManduroロの甥。母マンデラは独オークス(独G1・芝2200m)3着。母父Acatenangoは独リーディングサイアー。母方にはドイツとHyperionのスタミナが強く、全兄よりも持続力を感じさせる体質脚質。春は未完成だったが、ステイヤーとしての資質を菊花賞でついに開花させた。持続力勝負ならヒケは取らない。(距離◎スピード○底力◎コース○)



今年の有馬は差し馬が人気になっていたし、キセキがムーアに乗り替わるので、案外アエロリットはジワッと行けるんじゃないかとも思っていたんですが、100m通過から11.1-11.4-11.4-11.5ですから秋天や毎日王冠よりも前がかりで行ってしまったほどで、レース上がりは13.4-12.2-12.0

この全頭評価で距離と底力の項目を◎としたのがシュヴァルグラン、フィエールマン、リスグラシュー、ワールドプレミアで、その4頭が1,3,4,6着を占めるほどには持続力を問われるレースになったし、最初の入りで10番手以降の馬が1~6着を占めるほどには前崩れになりました

これでリスグラシューは2000以上でゴール前の上がりが12秒以上かかったときは有馬①宝塚①秋華②、前半力んでしまったアーモンドは最後脚が上がってしまいましたが、2~4人気が1~3着を占めて、やはりHペースの有馬は固かったのかという結末に

今年のメンバーは中山内回り向きの機動力あるタイプが少ないとみていましたが、前の馬が止まりはじめても3~4角で一気にスパートするような馬は見当たらず、みんな同じぐらいの脚でジワジワ捲り上げる感じ

だから直線まであんまりタテのスペースはなかったんですが、道中はラチ沿いの10番手でジッと機をうかがい、4角を回りながら斜めに持ち出して横一線の馬群を横切って一番外に持ち出しながら差すというのは、中山内回りをナスペリオン的ストライドで差すにはこれしかないという乗り方で、やりすぎるとドゥラメンテの皐月賞のようになってしまいますが(^ ^;)、老害としてはエアグルーヴとマーベラスサンデーをゴール前で差し切る藤田シルクジャスティスを思い出しましたね

鞍上のレーンは小回り内回りでは神と言っていい成績を残しており(以下の芝コース別成績)、しわくちゃウィリアムズも重厚ストライドのルーラーシップを宝塚や有馬でもってきたし、名手ボウマンも東京より中山のプレーが光り、凄腕パートンは短期免許できたときは小倉で無双、アヴちゃんも小倉の短距離は上手ですよね(・∀・)




リスグラとのコンビ続行で挑んだコックスプレートでは直線170mの長方形のムーニーヴァレー競馬場で後方一気で捲り差してみせましたが、この人のオセアニアで育まれた騎乗技術は小回り内回りの差しでこそ最も光り輝くというべきで、中山内回りでは仏よりも豪に従え、という名騎乗やったと思います

まあしかし、そんなことを全て抜きにして、とにかくリスグラシューは強かったと言いたくなる有馬記念でした

この名牝について書いてきたことを、引退を前にザッと振り返ってみると

「細身で小柄でMill Reef的な斬れで差す大箱向き中距離馬=女ローズキングダムや!」(2歳時)

「レース上がりと着順がきれいにリンクするタイプで、上がり12.8の桜花賞と12.4の秋華賞と12.2の阪神JFが2着、12.0のローズSと11.9のチューリップが3着、上がり11.6のオークスが5着、同じく上がり11.6のエリ女が7着」(3歳時)

「お尻の小さいリスグラはスピードの乗り方もマイラーではないから、マイル戦だと60秒で追走して33秒で上がってそれで間に合うかどうかというレースになる」(4歳時)

「+12キロで出てきた府中牝馬でまた馬が変わった印象で、ジャスタウェイやハーツクライやトニービンと同じ成長曲線に乗りまさに本格化」(5歳時)

サートゥルナーリアについては「返し馬でもしっかりコンタクトとれて冷静に見えました。スミヨンが上手いのもありますが、やはり間隔開けたほうがいいんでしょうね」というクレバーさんの評をそのまま

秋天では引っかかるサートゥルの直後で折り合ったアーモンドが有馬ではうなりながら追走してしまい、今度はその直後でサートゥルが折り合いをつけたというね、カナロア産駒は2400級を走るにはちょっとスピードが豊かすぎるところはあり、引っかかるというのはスピードが有り余ってる証左ですからね

母父Monsunのヴェロックスは馬群に入ると戦意を殺がれるところがあり、あの形だと直線追っても反応しないし、同期のライバル2頭が2着3着に好走しているのでこの馬で足りないことはないだろうと思います

リスグラシューの配合については宝塚の回顧も読んでいただきたいですが、ほんとにこれで引退なのかもったいない…とみんなが言いたくなるほどのド圧勝で有馬を制し去っていくというのは、リスグラシュー然りオルフェーヴル然りで、トニービンやノーザンテーストのHyperionが完全に開花するのは5歳の有馬なのだなあ…と

というわけで、また宝塚と同じタイトルでいきたいと思います

第60回宝塚記念回顧~エヴァーグリーン・ハイペリオン
https://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/07cf64866cd03a75bd9f48bca104a66c

コメント (8)
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