栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第71回朝日杯FS回顧~今年もデインヒル!Hペースを涼しい顔で

2019-12-16 10:42:21 | 血統予想
阪神11R 朝日杯FS
◎2.ビアンフェ
○3.ペールエール
▲9.グランレイ
△4.トリプルエース
△6.サリオス
×8.タイセイビジョン
×12.レッドベルジュール
注5.マイネルグリット
注16.ラウダシオン
この5回阪神1~5日において、芝で逃げた馬は[11-11-1-6](土曜はなんと[4-1-0-1])。先週のJFもレシステンシアが猛ラップで逃げ切ったが、とにかくラチ沿いの馬場状態がずっといい。
となると、逃げ馬の隣の枠を引いてその直後を取れそうなペールエールから入る手があるが、ダイワメジャー産駒は母父がマイラーより中距離型のほうが大物が出やすい。母父がマイラーのセルカークというのが最後まで引っかかった。
今年の2歳はディープインパクト×ストームキャット×アンブライドルズソングの配合パターンが空前の大当たりで、暮れのホープフルの大本命になりそうなコントレイルがまさにその配合だし、ここにはビアンフェ、ラウダシオン、レッドベルジュールと3頭も出てくる。
◎はビアンフェ。父キズナがディープ×ストームキャットのダービー馬で、母母アジアンミーティアはアンブライドルズソングの全妹にあたる。母ルシュクルは全3勝が芝1200のスプリンターだったが、そこにキズナならマイルの先行になるのが順当だろう。
たしかに前向きで単調な面はあるので、外マイルのG1を逃げて押し切れるのかという心配はあるのだが、レシステンシアにしても1400寄りのスピード型という馬だ。
前走京王杯はタイセイビジョンに完敗の2着も、自身は止まっているわけではなく上がりが速くて斬れ負けしたという格好で、ここは58秒で行って35秒で上がれれば机上の計算では勝ち負け。
キズナとエピファネイアは現役時のライバル関係そのままにハイレベルな新種牡馬リーディング争いを繰り広げている。初年度からノースヒルズの最高レベルの繁殖に配し、セリでも高値で産駒を落札しつづける前田オーナーの愛に、ビアンフェが渾身の逃げで応えるだろう。

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いつもどおり好発から気合十分に行ったビアンフェを、1400を56秒台で先行しレコ勝ちしてきたメイショウチタンがつつく形で、前後半45.4-47.6というのは前週のJF(45.5-47.2)を凌ぐほどの前傾ラップ(馬場差的には先週のほうが少し速かったと思うのでね)

結果先行勢はビアンフェ7着、ウイングレイテスト9着、トリプルエース11着、エグレムニ14着、メイショウチタン15着と総崩れとなり、3角9番手以下の馬たちが2~6着に差してきたわけですが、そんなラップを3番手で嬉々として追走し残り200mではもう先頭に立ってそこからも突き放す一方という、サリオスの強さが図抜けていた今年の朝日杯でした

「サウジアラビアは59.6-33.1で勝ったけど、ハーツクライ×サロミナやからな~、JFのようなマイラーのゾーンのレースに持ち込まれたらわからんよ」と斜めに構えていただけに完全に脱帽です…

このラップをこの勝ち方はマイラーじゃないとなかなか出来ない芸当やと思うんですが、でも実馬はデインヒルを少し胴長で巨大にしそこにハーツやドイツ血脈のしなやかな筋肉をつけた感じで、うなりをあげるマイラーには見えないから恐れ入ったと言うしかない

とはいえ、リスグラシューのような典型的なスタンダードなハーツクライではなくて、ベースはデインヒルという馬やと思うし、しかもこれで540キロもありますからね、ダノンプレミアムしかりサトノアレスしかりで、しなやかなハーツ産駒やディープ産駒はデインヒルのプリケツを早めに受け継いだもん勝ちというね、今年もそんな朝日杯ではあったかと

1~3着馬については、例によってNETKEIBAの重賞出走予定馬血統解説より再掲します

サリオス
サラキアの3/4同血の弟で、サンタフェチーフの甥。母サロミナは独オークス(独G1・芝2200m)馬。母父Lomitasはドイツの年度代表馬でリーディングサイアー。アウトブリードのハーツクライ産駒だから決して仕上がり早の血統ではなく、デインヒルを大型で長手にしたような体型もマイラー然としない。マイル戦をレコ勝ちは器の大きさゆえだろう。まだまだ良くなってきそうな奥深い中距離馬だ。(距離○スピード○底力◎コース◎)



タイセイビジョン
クッカーニャの甥で、母ソムニアは函館2歳S3着。近親にユートピアやアロハドリーム。母系にKingmamboとサンデーサイレンスとノーザンテーストが入るのでアンデスクイーンと配合の輪郭が似ていて、Northern Dancerクロスが強い母にアウトブリードのタートルボウルが配された点が良い。Night Shift≒ノーザンテーストが強いマイラー体型で距離は1600もOK。G1級の爆発力があるかどうかだがここも圏内。(距離○スピード○底力○コース◎)



グランレイ
ダイワキャグニーやフサイチオーレの近親で、3代母トリプルワウはネクストムーヴH(米G3・ダ9.5F)勝ち馬。ルーラーシップ×ファルブラヴはNureyev≒Fairy Kingの3/4同血クロス5×3になり、JRAに5頭が出走しテトラドラクマやヒシゲッコウなど4頭が勝ち馬になっている。キングマンボとフェアリーキングが強いマイラーで、前向きな気性なので前走のように好位で我慢できるかがカギだろう。(距離○スピード○底力◎コース◎)



タイセイビジョンはタートルボウルの日本代表牝駒アンデスクイーンと配合が酷似していて、ソムニアはNorthern Dancer5×4・5・6、レイナカスターニャはNorthern Dancer5・5・7×4、どちらも主流血脈が強いNorthern Dancerクロスでやや煮詰まり気味の母に、アウトサイダー血脈が強くアウトブリードのタートルボウルを配したのがまず成功の因

トリオンフの母もNorthern Dancer4×4だし、海外の代表産駒もLucayan(仏1000ギニー)の母はNorthern Dancer4×4・5、French Fifteen(英2000ギニー2着)の母はHabitat4×3です



またタイセイもアンデスも母系にノーザンテーストを持ちますが、このNight Shift≒ノーザンテーストのニアリークロスはJRA勝ち馬率でいうと27%ですから、タートルボウル産駒として特に成功しているとまでは言えず(タートルボウル産駒全体では28%)、タートルボウルの配合のポイントは、クロスのうるさい繁殖との配合で緊張→緩和のリズムをつくることにまずあると考えています

グランレイは知り合いが配合を考案した馬で、ダイワキャグニーとテトラドラクマとウラヌスチャームを足して割ったところを狙いましたという配合(・∀・)

生産者の前谷さんにセリに出すときの映像を見せてもらったら、配合どおりにナスペリオン的なしなやかな歩きをするので感心して、パカラさんちの「サマープレミアムセールの注目配合馬」で取り上げ、血統屋のPOG書籍でも推奨しました
https://pacalla.com/article/article-1718/



体型はファルブラヴの影響も強くてマイラーっぽいんですが、昨日のパドックでも歩きはいいけどまだまだ緩さを感じさせ、ナスペリオンなルーラーやからまあまあイメージどおりなんやけど、完成度でいうと下から数えたほうが早いわなあ…と

緩いのでダッシュつかず後方からになったのは結果オーライでしたが、今後の良化度という点では一番じゃないかとも思うのでこれも楽しみが広がります(・∀・)
コメント (3)
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