花と緑を追いかけて

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いっぱいの主婦の日記です

映画「劔岳・点の記」を観て・・・

2009年07月12日 | 映画、観劇

「甘利山&千頭星山」登山の前日に、ご近所仲間と三人で映画を観に行きました。
「劔岳・点の記」と「愛を読むひと」の二本でしたが、今回は「劔岳」のお話です。

あらすじ
明治40年、地図の測量手として、実績を上げていた柴崎芳太郎は、突然、陸軍参謀本部から呼び出される。「日本地図最後の空白地点、劔岳の頂点を目指せ」―当時、ほとんどの山は陸地測量部によって初登頂されてきたが、未だに登頂されていないのは劔岳だけだった。柴崎らは山の案内人、宇治長次郎や助手の生田信らと頂への登り口を探す。その頃、創立間もない日本山岳会の小島鳥水も剱岳の登頂を計画していた。

原作は「孤高の人」や「強力伝」、「八甲田山死の彷徨」などで御馴染みの新田次郎による同名小説で、劔・立山連峰の山中27ヶ所に三角点を設置した実在の人物、柴崎芳太郎の仕事への熱意、生き様を描いた作品です。

映画化の監督・脚本は、「八甲田山」など数多くの作品でカメラマンを務めてきた木村大作氏・・・
50年の映画人生で初めての監督作品だそうです。
リアリズムにこだわり、いっさいのCGは使わず、およそ100年前に柴崎たち測量隊がたどった劔岳への険しいルートを、ほぼ順を追いながら行なわれたという現地撮影。その時間は延べ200日を越えたそうです。


久しぶりに観た日本映画でした。
少々脚本が消化不良気味かな?屋内の描写が弱いかな?
そんな思いも、岩の殿堂「劔岳」の圧倒的な迫力ある姿に吹き飛びます。
熊・猿・雷鳥など、たくさんの動物達も登場し、自然の驚異とそしてその神秘的なまでの美しさに感動させられます。

一列になって歩く人々が山の自然の中に溶け込んで、人間も自然の一部なんだと感じるような描写の連続で・・・
さすがカメラマン出身の監督さんのカメラワークは冴えています

物語は断崖絶壁の続く「劔岳」の頂上に向かって、ろくな装備もない時代、道なき道をたどりながら、山岳会よりも早く頂上にたどり付き「三角点・設置」をするようにとの軍の命令の元、難儀を重ねる柴崎と長次郎の人間模様が描かれています。

沈着冷静な柴崎を演じた浅野忠信さんも良かったけど、断然光っていたのが劔岳測量登山の案内人・宇治長次郎役の香川照之さん。上手いですね~、役者です

上映中、隣の席に座った友人のNさんが「こんな怖い山にわざわざ登るなんて、私には考えられない」と話しかけてきました。
確かに、山を知らない人には理解できないかも知れません。
柴崎のように仕事ならイザ知らず、遊びで山に行くなんて
晴れの日ばかりではありません。
強風や大雨に見舞われ、滑落や雪崩などの命の危険とも常に隣り合わせ・・・

でもね、あの雄大な風景の中に身を置いたときの、心昂ぶる清冽なる気持ちを一度味わってしまうと、どんなに苦しくても叉行きたくなるのが「山」なんですね。
そして圧倒的なまでに大きな自然の中で、自分の小ささを痛感し、クヨクヨ悩んだりする事が無意味に思えてきます。
つまり「無の境地」になれるということでしょうか・・・

ですから日本では昔から「山岳信仰」が栄えたのでしょう。
この映画も、最後は思わぬ展開となりますが、山の世界では有名なお話です。


こちらは北アルプスに通いだしてすぐに登った「唐松岳」頂上から眺めた「劔岳」です。
この時は「五竜岳」まで縦走しましたが、午後はずっとガスの中でした。

同じ職場の仲間たちと月に一回は山に行き、夏のアルプスと秋の紅葉登山が一大イベントでした。
40代前半のこの頃は、技術さえ身に付けたら登れない山はないと思っていました。
「いつかは必ず行こうね、劔岳へ」、そんな会話をしたのを覚えています。


同じく後立山連峰の「蓮華岳~針の木岳~赤沢岳~爺岳」と縦走した時の「鳴沢岳頂上」から見た劔岳です。
黒部湖を挟んで正面に見えました。
測量隊山案内人の長次郎さんの名前の付いた頭や谷もあるはずです。

断崖と絶壁が続く中での最後の難関、有名な鎖場「カニの立てばい」「横ばい」は頂上直下のどの辺でしょうか?
最初の一歩さえ足が置ければ大丈夫!と聞いていますが・・・


このコースを歩いた数年後に「白馬から雪倉~朝日」と縦走して、後立山連峰がほとんど繫がりました。
色々な角度から「劔岳」を見ましたが、ここからの姿が一番豪快に見えますね。
そして白馬から望む「劔岳」は優美でした。

この頃は、三人揃って「白馬山荘」で買った山のお花がプリントされたTシャツを着て・・・
すれ違う登山者を振り返えらせる若さも体力もありましたね。
モチロン劔岳もトーゼン登れるものと信じておりました。
山を一番楽しんでいた頃の私たちです



こちらは立山の「奥大日岳」付近から見た「劔岳」です。
三人とも同じ職場を退職した後は、それぞれ違う道に進み、年老いた親のことや孫の誕生などでも忙しくなり、中々スケジュールが合わなくなりました。
50代後半に行った立山「大日三山登山」以後、三人一緒のアルプスは遠のいています

この前年に行った「雪倉~朝日」の縦走でヘロヘロと成り、体力の限界を感じて自信をなくし、「もう劔は無理ね」と口に出ました
「劔岳」は私たちが一番最初に諦めた山なのです。


つぎはぎだらけの古い紙焼きの連続写真で恐縮ですが、一番左が劔岳、そして真ん中が「別山」、右端が「雄山・大汝・富士ノ折立」です
今年はせめて、立山の雄山から歩いて「劔岳」が目の前に迫る「別山」まで行ってみようかしらと思う今日この頃なんですよ。

7月13日追記
もう1本の映画「愛を読むひと」は、世界中が涙した小説『朗読者』を映画化したものです。
今年のアカデミー賞で、主人公ハンナ役のケイト・ウィンスレットは主演女優賞を獲得しました。
哀しい女の生き様を、見事にそして淡々と演じていましたね。
彼女の秘密は、命をかけるほどに守らなくてはならなかったのか?
余韻の残る上質な作品でした。
詳しい内容や感想などはブログ仲間のmarriさんが6月26日の記事で語っていますので、ご興味のある方はご覧下さい。

コメント (31)
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