先日、今回の名人戦についての「ものぐさ将棋観戦ブログ」の記事の事、書きました。
そして、(遅くなりましたが)将棋世界6月号、やっと読み終え、
20Pを越える巻頭カラー特集にまでなった先崎八段の「千駄ヶ谷市場」スペシャル版について書きます。
相変わらずの切れ味です。
さらに円熟して、かつ鋭くなった感もあります。
名人戦の第一局と、マイナビ女子オープンの第一局を取り上げて、棋譜解説も含め、詳しく書かれています。
さて、名人戦について。
今回、羽生はどうしても名人になりたい。負けられない、と主張する。
それも(先に永世名人位を取った)森内を負かして。
そして、将棋の内容については、
12年前、初めて名人戦の舞台で二人が闘った時と比べ、尖ったきらめきから、丸みを帯びた円熟した将棋が見られるはず、と語っている。
そして、第一局の内容。
「気を遣う消耗戦。」
「双方の主張する点が全く違うので、こういう将棋は心から疲れるのだ。」
「神経をすり減らし、苦心に苦心を積み重ねた序盤戦。」
「長い長い神経戦で疲れた羽生が選んだのは信じられないような順だった。」
などと形容しています。
shogitygooさんが、
「この深遠感、難解感、晦渋感、重苦しい感、駆け引き感、繊細感、哲学感、手細工の工芸品感、緻密感等」
と表現した部分ですね。
「評論家山崎元の「王様の耳はロバの耳!」」の将棋名人戦の楽しみという記事でも、先ちゃんのこの記事のことが取り上げられています。(一部引用させてもらいます。)
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ここまでの3局も、羽生挑戦者側の「動き」が目立つ。
第1局は、後手番であるにも関わらず羽生挑戦者が優位に序中盤を進めたが、中盤戦で、無理に決めに行って(飛車切りが決定的に拙かったようだが、だとすると、その前の8六歩がおかしかった)、惜しい将棋を落とした。「将棋世界」6月号の先崎八段の解説によると「気が短くなって、えいっと魔が差したような手を指してしまう」類型的な悪手で「棋士としての継続年齢と共に多くなる事象」だそうだ。両対局者と同世代の先崎八段が、羽生挑戦者の年齢的衰えをはっきり指摘している。そうだと思ったが、やっぱりそうか。先崎八段はここのところすっかり解説がはまり役になってしまった観があるが、両対局者と同世代の一流棋士だけに、彼の解説には、さすがという説得力がある(ただし、「週刊文春」の連載エッセイは近年さっぱり面白くない。将棋指しか碁打ちがだらだらと酒を飲む話が多くネタ切れ気味だし、話の切れ味が落ちている)。だが、今期の名人戦は、羽生挑戦者がどのようなスタイルで戦うかが見所だ。
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やはり先ちゃんならではの魅力、持ち味は、ズケズケ感、ズバズバ感、アッケラ感なのでしょう。
何より控え室を完全に手の内にしている事が強い。
・控え室では○○八段、●●七段が、この一手と見て研究している。
・最高の検討陣だから出しえた結論。
などと、自分だけの意見ではなく、控え室の検討陣を巻き込んで、どんな対局者にでも、自信を持って、言い切れるのが快感だ。
先日のA級順位戦最終局の、佐藤・木村戦、終局直後の、
あの言い方の「あれ、詰んでたよ」、ですね。
この観戦記でも、
・気合が悪い。
・この手は大変な悪手だったのだ。
・ひねり出した手は、控え室絶賛の一手だった。
・後手は良形で「おいでおいで」ができる局勢である。
・後手は勝てない。
などと、しっかり説得力ある解説を、気持ちいいほど明確に言い放ってくれてます。
この局面は、難解だ、とか、なんとも言えない、とか、そういうわかりにくいストレスが溜まるような表現ではなく、素人にとって胸のすくようなスカッとした書き方が心地よい。
切れ味鋭い棋界の論客として、そして独特の表現力を持つ観戦記者として、
先ちゃんは確固たるポジションを作り上げているし、ますます磨きをかけています。
ファンとしては、まだまだ同じ羽生世代なわけだから、
そっちの方にばかり行かず、
そっちの方が目立たないくらいの活躍をしてほしいと心から願っています。
そして、(遅くなりましたが)将棋世界6月号、やっと読み終え、
20Pを越える巻頭カラー特集にまでなった先崎八段の「千駄ヶ谷市場」スペシャル版について書きます。
相変わらずの切れ味です。
さらに円熟して、かつ鋭くなった感もあります。
名人戦の第一局と、マイナビ女子オープンの第一局を取り上げて、棋譜解説も含め、詳しく書かれています。
さて、名人戦について。
今回、羽生はどうしても名人になりたい。負けられない、と主張する。
それも(先に永世名人位を取った)森内を負かして。
そして、将棋の内容については、
12年前、初めて名人戦の舞台で二人が闘った時と比べ、尖ったきらめきから、丸みを帯びた円熟した将棋が見られるはず、と語っている。
そして、第一局の内容。
「気を遣う消耗戦。」
「双方の主張する点が全く違うので、こういう将棋は心から疲れるのだ。」
「神経をすり減らし、苦心に苦心を積み重ねた序盤戦。」
「長い長い神経戦で疲れた羽生が選んだのは信じられないような順だった。」
などと形容しています。
shogitygooさんが、
「この深遠感、難解感、晦渋感、重苦しい感、駆け引き感、繊細感、哲学感、手細工の工芸品感、緻密感等」
と表現した部分ですね。
「評論家山崎元の「王様の耳はロバの耳!」」の将棋名人戦の楽しみという記事でも、先ちゃんのこの記事のことが取り上げられています。(一部引用させてもらいます。)
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ここまでの3局も、羽生挑戦者側の「動き」が目立つ。
第1局は、後手番であるにも関わらず羽生挑戦者が優位に序中盤を進めたが、中盤戦で、無理に決めに行って(飛車切りが決定的に拙かったようだが、だとすると、その前の8六歩がおかしかった)、惜しい将棋を落とした。「将棋世界」6月号の先崎八段の解説によると「気が短くなって、えいっと魔が差したような手を指してしまう」類型的な悪手で「棋士としての継続年齢と共に多くなる事象」だそうだ。両対局者と同世代の先崎八段が、羽生挑戦者の年齢的衰えをはっきり指摘している。そうだと思ったが、やっぱりそうか。先崎八段はここのところすっかり解説がはまり役になってしまった観があるが、両対局者と同世代の一流棋士だけに、彼の解説には、さすがという説得力がある(ただし、「週刊文春」の連載エッセイは近年さっぱり面白くない。将棋指しか碁打ちがだらだらと酒を飲む話が多くネタ切れ気味だし、話の切れ味が落ちている)。だが、今期の名人戦は、羽生挑戦者がどのようなスタイルで戦うかが見所だ。
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やはり先ちゃんならではの魅力、持ち味は、ズケズケ感、ズバズバ感、アッケラ感なのでしょう。
何より控え室を完全に手の内にしている事が強い。
・控え室では○○八段、●●七段が、この一手と見て研究している。
・最高の検討陣だから出しえた結論。
などと、自分だけの意見ではなく、控え室の検討陣を巻き込んで、どんな対局者にでも、自信を持って、言い切れるのが快感だ。
先日のA級順位戦最終局の、佐藤・木村戦、終局直後の、
あの言い方の「あれ、詰んでたよ」、ですね。
この観戦記でも、
・気合が悪い。
・この手は大変な悪手だったのだ。
・ひねり出した手は、控え室絶賛の一手だった。
・後手は良形で「おいでおいで」ができる局勢である。
・後手は勝てない。
などと、しっかり説得力ある解説を、気持ちいいほど明確に言い放ってくれてます。
この局面は、難解だ、とか、なんとも言えない、とか、そういうわかりにくいストレスが溜まるような表現ではなく、素人にとって胸のすくようなスカッとした書き方が心地よい。
切れ味鋭い棋界の論客として、そして独特の表現力を持つ観戦記者として、
先ちゃんは確固たるポジションを作り上げているし、ますます磨きをかけています。
ファンとしては、まだまだ同じ羽生世代なわけだから、
そっちの方にばかり行かず、
そっちの方が目立たないくらいの活躍をしてほしいと心から願っています。