最近、仕事で関係している会社はかなり業績不振で苦しんでいるところが多い。
少しでも多く売り上げを取りたい、集客したい。
その必死な気持ちはよくわかるし、いろいろ気づいたことを言ったりアドバイスもしているのだけど、なかなか改善できないでいる。
もっと売りたいという気持ちが、あの層にも、あの人たちにも、とターゲットを広げていく。
あの年代にも買ってもらえるように、その層にも来てもらえるように、と手を変え品を変え媚を売るがごとくアプローチする。
しまいには、オールターゲットです。
万人受けする王道のやり方で。
皆が茶の間に集まってテレビを見ていた頃とは違うし、どんどん多様化し、ニッチになっていってる世の中。
でも、悲しいかな、ターゲットを絞り込むことは不安がつきまとうし、怖くてできない。
上からの数字の締め付けがますます過酷になる。
わかっちゃいるけどやめられない。
売り上げ増やすには、もっと買ってもらえる層を増やすしかない。
その年代にも嫌われないような商品に修正しよう。
その年代向けのコピーも入れといて。
パッケージも、どこかの層だけに偏らないようなデザインを。
そんなことが多い昨今、こんな記事がありました。
イノベーションを起こすには「孤独」が必須だ
「20代は捨て」と説く、四角大輔氏に聞く
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大きなイノベーションを起こせるような、例えばジョブズだったら全部自分1人の感性で突き進んだと思うんですが、僕はそんなすごい人じゃなかったので。「これほど、これに本気で惚れ込んでいるなら、ちょっとこの人の熱狂に賭けてみよう」と。大切なのは、肩書きとか年齢とか関係ない「1人の熱狂」です。その手法が、結果的にはヒットにつながった。
例えば100万人に届けようと思って作られた曲というのは、誰1人にも届かない。名曲って必ず誰か1人に向けて歌われているんですね。これは独自でリサーチしたんですが。日本でずっと歌い継がれているいろいろな名曲ってありますよね。それを創り出した人、それこそほとんどがビッグアーティストですが、彼らと仕事をしたり、話す機会があったら必ずこっそり聞いていたんですよ。そうすると、ほとんどの人の答えが、「あの曲は、実は◯◯、もしくは自分自身のために書いた」だった。誰か1人のための、作者の「熱狂」がそこに込められている。漠然と、こういう人たちに受ければいいな、という答えはほとんどなかった。
人間が本気で熱狂できるのは「何か(誰か)と1対1で対峙するとき」なのです。
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理屈では理解できても、どうしても安全運転になってしまいがちなんですよね。
徹底的に絞り込む勇気がない。
思い切りが悪い。
あっちからもこっちからも水が流れ込むような安全策を選んでしまうのが自分も含めた弱い人間。
もうひとつ、
さとなおさんのブログから
執筆でぶちあたる3つの壁(ボクの場合)という記事。
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人によって違うだろうけど、ボクが執筆においてぶちあたる壁は大きく3つ。
1)伝えたい相手を絞る壁
2)書き出しの壁
3)破壊の壁
1の「伝えたい相手を絞る」なんて、そんなもん最初から決まってないのー!? と思う方も多いかもしれない。
でもね、広告もそうだけど、伝えたい相手がきちんと絞れているコンテンツって実は意外と少ないと思うですね。
作り手(書き手)はどうしても広く大勢に伝えたいと思ってしまう。
でも、99.996%の情報はスルーされる(2011年総務省「情報流通インデックス調査」)と言われるこの情報洪水時代、そんな「伝える対象が広くぼんやりとしているコンテンツ」なんてなかなかヒトに届かない。伝えたい相手にちゃんと「自分ごと」と思われないと届かない。つまりシャープに絞る必要がある。
とはいえ、作り手が伝えたい内容はそこそこ「広い」ことが多いので、相手を絞りきれないわけですよ。
たとえば広告についての本を書こうと思ったら、広告マンから宣伝部員、経営者から学生、一般人までターゲットはいくらでも広げられる。でも、絞りきれないまま書き始めると、なんだか「芯」が入らない。ぼんやりふわふわした原稿になる(当社比)。なので「どんな人を中心に読んでもらうのか」をもっともっとシャープに絞らないといけない。
今回も、なんかふわふわしてんなー、と思いながら年末まで書き進めてきて、予想通り壁にぶち当たったですね。
で、元旦に反省をして、具体的に伝えたい相手の顔まで思い浮かべて絞りきる作業をしたんです。いやほんと、何冊書いたら教訓にするんだって話ですよまったく。
ちなみに、伝えたい相手を絞るということは、その絞った少数にしか伝わらないかというとそうでもなくて、それだけ主張がシャープになるから、逆に内容的にはおもしろくなり、結果的に多くの人に伝わったりします。
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その通りですよね。
僕もブログを書く時は(最近かなりサボってるけど・・)、極力誰かの顔を思い浮かべて書くようにしてる。
“このオチは彼だったらすごく受けるだろうな。”
“この記事は彼女ならすごく共感してくれるに違いない。顔が見たいくらい。”
“ここでこのネタ出せば、あいつはもっと興奮するな、きっと。”
でも、仕事となると、莫大な金とか首がかかってるとかなると、そう簡単にはいかない。
最初は思い浮かんでいたとしても、どんどん広がって茫洋として相手の顔がどっか行っちゃうようになる。
さらに秋元康のこんな言葉も。
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「人数が少なくとも、ある人にグッと刺さるものが必要。興味を集めさせることが大事で、100人のうち一人にしか刺さらないものを作ること、ある世代だけで大ヒットするものをつくること、それにより話題が他の世代に広がる」
「記憶に残る「幕の内弁当」はない。いろいろなおかずがあると記憶に残らない。」
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誰か一人のために開発した商品。
誰か一人を幸せにするための事業。
誰か一人に対するラブレターが広告。
彼に受けてほしい。
彼女に笑い転げてほしい。
あの人に感動してほしい、もう死んでもいいと言ってほしい。
仕事に限らず、たった一人の熱狂を生み出すために熱狂する毎日が送れたらと思う。
ということで、今日のこの記事、そう、あなたのことを思って一人で熱狂しつつ、あなたに心から熱狂してほしくて書いたのですよ。そこのあなた!