梅田望夫さんの
「シリコンバレーから将棋を観る」について、(やっとのことで)第二弾です。
前回は、
「指さない将棋ファン宣言」について書いたので、今回は
「将棋を観る楽しみについて」についてです。
以前
スポーツと将棋と言う記事の中に、こんな事を書いてます。
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渡辺竜王が「頭脳勝負」で言った、
「将棋をスポーツと同じように楽しんでほしい」という名言。
この言葉には多くの共感、賛同が集まっています。
将棋って、どうも小難しい、暗い、のようなイメージがまだまだあり、普及の妨げになっている。
そこから脱するためにも、また新しい時代の将棋のイメージを作るためにも、
この本に出てきたような各種スポーツの比喩を使って、将棋の戦術や楽しさ、奥深さを伝えたら、僕らにとってはよりわかりやすいと思う。
ほんと、そんな気軽な感じで、将棋が広まっていったら・・・。
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要は、かなり高度で難しそう、とっつきにくそう、というマイナスイメージを、どう払拭していくか。
将棋を知らない人、将棋に興味のない人に対して、いかに将棋って面白いよ、って伝えられるか、説得できるか、っていうこと。
梅田さんはこう言っている。
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将棋を観て楽しむために必要最小限のハードルはもっと低い。将棋のある局面の最善手や好手やその先の変化手順を、自分で思いつけなくても、それらを教えてもらったときにその意味が理解できればいいのである。
ただ、それには前提条件がある。一局の将棋がただ棋譜として提供されるのでなく、たくさんの言葉が付随して提供されなければならない、ということだ。
テレビ放送やネット中継であれば実況解説だし、新聞や本であれば観戦記や将棋解説といった、将棋を語る芳醇な言葉が必要なのである。逆にそれさえ充実すれば、「将棋を観る」ことのできる人の数は「将棋を指して強くなれる人」の潜在数を大きく上回る。そしてそうなったときにはじめて、「野球をやる」に対する「野球を見る」と、「将棋を指す」に対する「将棋を観る」とが、近い意味になってくるはずなのである。そしてたとえば、別の芸術に対する審美眼を持った人が、必要な将棋の知識と素晴らしい解説を得た時に、将棋の強い人よりも「見巧者」になる可能性は十分にあるのだ。
<中略>
一局の将棋はさまざまな言葉によって補われる必要がある。
それが「将棋を観る楽しみ」を考える時のカギなのだ。
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そしてもう一箇所。
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将棋を観る楽しみは奥が深い。
芸術の鑑賞と同じく、将棋の素晴らしさや棋士の個性を堪能することにある。最高峰の将棋を観る楽しみとは、個々に複雑な局面ごとの「最善手に近い手」が二人の棋士によって指され続けた結果の連なりが作り出す、勝負の面白さとその将棋全体の美を鑑賞することにある。
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スポーツや芸術や学問や趣味など。
それぞれの特殊性があるわけだけど、要はこれらのものと比較して、将棋と言うものの特殊性をどう捕らえるのか。
コミュニケーションするにあたって、そのメリット、デメリットをどうきちんと整理していくのか。
メリットの部分をより強調し、デメリットの部分を目立たないように工夫する。
スポーツでもパソコンでも園芸でもいいけど、それぞれのジャンルのわかりやすい入門書とか、手引きとかいうものがあるはずです。
NHK教育テレビでもいろんな番組をやってます。
例えばだけど、神社仏閣の見学、観光。
初めて京都奈良を回るに際して、
歴史も何も知らない入門者に対するわかりやすい解説書、ガイドがあるとないとは大きく違う。
もちろんその場にも説明はあるかもしれないけど、お寺を訪ねてこういうことを念頭に置いてこういう見方で見ていくと、こんなに楽しいですよ。
こんなにワクワクする事はないですよ、というガイド。
そんな事を考えていたら、そうだ!と思った。
『将棋を指すための入門書はゴマンとあるけど、
将棋を観て楽しむための入門書はない。』
まあいろんな本の中に、それに準じた話はもちろん出てくるものの、全くそれを切り口にしたものはないのでは、と思った。(
岡田さん、どうでしょうか?)
(もちろん本でなくても、サイトでもいいし、NHKの番組でもいいのだけれど。)
例えば、
棋士の個性とか、人間性とか、対局を観て楽しむ上での背景情報など。
癖とか、食べ物の好き嫌いとかも含め。(おやつが好き、虫が嫌い、とか。)
よくタイトル戦が行われる各地の旅館やホテルのいろんな情報。
過去のいろんなエピソード。
名物女将の話とか、名物料理とか。
勝負の面白さ、醍醐味は、決して技術面の解説だけではないわけで、
対局者の心理とか、かけひきとか、過去の因縁とかジンクスとかいろいろな要素が観る楽しみを倍加する。
そして、もっとミーハーで無責任な楽しみ方も含めて、
こうすればもっと将棋を観て楽しめる。
こんな観方をすれば、百倍楽しくなる。
言わば、
見巧者への案内書。
プロの鑑賞者へのナビゲーション。
あるいは、どこかのポイントに拘ったマニアの鑑賞者でもいいし。
梅田さんの言う『たくさんの言葉が付随して提供されなければならない』というのもわかるけど、もっと身近でわかりやすいのは、映像、画像、音声のはず。
そういう意味では、現在行われているテレビ中継やネット中継においても、技術的な解説ばかりに終始せず、どんどん間口を広げるような演出をしていって欲しい。
前に
ファンサービスプロジェクトと言う記事に書いたけど、千葉ロッテでは女性ファンを呼び込むために、イケメン選手の写真集を出したりもしていたらしい。
将棋の魅力というのは、やはり棋士の魅力に負うところが大きいと思うので、
一人の人間としての棋士の魅力にいろいろな角度から迫ったコンテンツは必要だと思う。
ということで、せっかく梅田さんが提唱してくれた、「指さない将棋ファン」という新たなポジション。
棋界が挙って、将棋の普及という大命題に立ち向かっていくのであれば、
「将棋を観る」ことの楽しさや醍醐味を、もっと広く伝えていくべきだと思うわけで、
「将棋を観るのってほんと楽しいよ!」のコンテンツ強化拡充に取り組んで行くべきだと思った次第です。
(まだ(多分)つづく)