即席の足跡《CURIO DAYS》

毎日の不思議に思ったことを感じるままに。キーワードは、知的?好奇心、生活者発想。観る将棋ファン。線路内人立ち入り研究。

反則負けのその後

2008年05月17日 16時57分49秒 | 将棋
あのアクシデントの後、「羽生ニング」などのオヤジギャグも含め、いろいろあって連盟の公式見解が出ました。

この件は、ゴトゲンさんのブログに詳しくいろいろ書かれていますし、コメント欄で議論や情報交換が行われています。
「羽生二冠の切れ負けなど(追記あり)」「その後の話…など」

一部引用させていただきます。
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ここからは、いくつかの情報や事実を総合したうえでの、僕の見立てになります。

(1)指し手確認はデフォルトでチェックが入っているが、開始後すぐに外すことが出来る。

(2)羽生二冠は初手から切れ負けの場面まで指し手確認ありで進めていた。トラ
ブルが起こらないかぎり、指し手確認が原因で切れたとは考えにくい。

(3)羽生二冠のマウス操作のミス、もしくは常駐ソフトが起動して、予期せぬ動作があった。

(4)羽生二冠が使用していたノートPCは大和証券杯の対局にだけ使われるもの。トラブルを回避するため、余計なソフトやアプリケーションは入っていない。(自宅対局者には、同様の代替ノートPCを送付している)

(5)それでもパソコンの性質上、電源が入っている限り100%ハプニングを防ぐことは難しい。

(6)今回のトラブルは対局システムの不備ではなく、個別のパソコンに(もしくは羽生二冠の操作によって)起こったハプニングである可能性が非常に高い。

では、今後どうするべきか。それは結局のところ連盟の発表の通り、ハプニングが起こる可能性が少なくなるよう対局者に注意を促し、対局用マシンのチェックを怠らないということになるのだと思います。もっとも、羽生-渡辺戦を楽しみにしていたファンが納得できるようにもう少し詳細を書いてもいいかなとは思いますが。
渡辺竜王もブログで書いていたように、パソコンを使う以上はトラブルを完全に排除することは難しい。しかしインターネットが持っている可能性は、現在の将棋界において非常に大きなものです。
スポンサーの皆様、将棋ファンの皆様には、将棋を暖かい目で見守っていただきたいと思っています。よろしくお願いします。
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そして、最近どうも熱くなりやすくなったssayさんは、「納得いかない」及び「やっぱり、納得いかない」という記事で、根本的な疑問を感じ、問題提起しています。
少し引用させてもらいますね。
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さて、羽生二冠の時間切れ負けだが、全然納得いかない。
これも勝負の内とか、ルールの内というご意見もあろうが、こういう事が十分に起こり得るという事は、この棋戦が始まる前から分かっていた事だ。

<中略>

我々シロートが、縁台将棋よろしくネット将棋で遊んでいるのと、職業棋士が対局するのでは、訳が違う。

<中略>

話が少しそれ気味だが、ネット棋戦をいきなり公式戦で、しかもぼくの中では超黄金カードである、羽生-渡辺戦でああいう事が起こってしまうと、一気に興ざめ、理不尽な怒りすら湧いてくる。

<中略>

>>将棋のプロであってPC操作には必ずしも習熟していない人達に、公式戦でPC操作を強要するのもどこか理不尽な気がします。やっぱり、ほんとうの将棋は盤駒を使って指すものだと思うし。プロの公式戦では、少なくとも対局者は盤駒を使って欲しいと願う次第です。

プロ同士の対決って、我々シロートが将棋で遊ぶのとは、違う次元で捉える必要があると思う。
駒の並べ方だって、まず上位者が駒袋から駒を盤の上に開けて、王将を手に取ってパシッと置き、その後の並べ方だってちゃんと順番が決まっている。
もうその時点から、場は緊張感に包まれ、勝負はすでに始まっていると言ってよいのではないだろうか?

<中略>

そういうの、ぜ~んぶひっくるめて、我々はプロの将棋に魅力を感じるのだし、谷川先生が人気がおありになるのも、立ち振る舞いやしぐさなど、そういう面も含めてのことだと思っている。

我々がネット観戦をすることと、プロ棋士がネット対局をするということは、同義ではないはずだ。
我々は、プロの将棋が観たいのであって、単なる将棋の勝ち負けを観たいのではない。
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要は、プロの将棋は、ネット対局でなく、実際に対局場で対面して、伝統的な作法に則ってやっていってほしい、それがファンの見たいプロの将棋だ、という意見です。

これ、ほんと、よくわかります。
まあ、でもssayさん、そんなに熱くならないで。

タイトル戦とか、既存の棋戦をネット対局でやるのはもちろん論外だと思います。

でもまあ、これだけネットが普及し、将棋ファンとしてネット対局という新たな楽しみ方ができたことは大きいです。

わざわざ相手を探してどこか場所(街の道場とか、誰かの家とか)を設定して、駒と盤を用意して対局するしかなかったのが、好きな相手を選んだ上で、気軽に家でできるネット対局。

ちょっと別物かもしれないけど、全く新しい将棋の文化が生まれたわけです。

その気軽さ、とか、魅力を伝えるために、新たなプロの棋戦を、という発想はあってもいいと思う。

いいと思った事、面白いと思った事は、とりあえずやってみる。
やってみてうまくいかなかったところは修正していけばいい。
修正してもどうにもうまくいかず、評判が悪ければやめればいい。

ということで、今回のことは、

『昨日の対局では中盤の最も見ごたえのある局面で対局が終了してしまい、観戦していた方々には不満の残る結果となりました。
  今後、下記のように対応して観戦の皆様に満足いただけるよう努力いたします。』

1. 今後、時間切れ負けが起こらないよう対局者への注意徹底を行う。
2. 万が一、時間切れが起きた場合、勝敗が決した局面からの指し継ぎを検討するなど、感想戦におけるファンへのサービス向上を計る。

という素早い対応はいいのではないだろうか。

楽しみにして見ていたら、変なところで終わってしまい、消化不良、なにこれ、つまんないよ、っていうファンに対してきちんと真摯にできる限りの対応をするCSの姿勢。
要はファンの心理をきちんと理解しようとすること。

世紀の対決を楽しみにして、TVをつけたら、
「花束を投げつけてゴングが鳴った途端に、凶器を取り出してレフリーを暴行しあっという間に反則負け」
「最初から4人ともリング内に入ってもみ合い殴り合い、客席にまで入り込み、ものの5分で両者リングアウト」、とか、
「片方はずっとリングに寝そべってばかりで立ち上がらない」
とか、そういうことを続けていくとファンは離れていくという古今東西の真理。

渡辺竜王ブログでも、この件に関してあれこれや書かれています。

「将棋界での本格的なネット公式戦は今年が2年目なので、こういったトラブルはある程度は仕方がないと思います。失敗を糧にして、完成形に近づいて行ければ良いのではないでしょうか。
これでいいのでは、と思います。」

はい、同感です。

前に書いた、《名人戦の記事》の中で、芥川賞作家・奥泉光さんが書いた記事を紹介しました。
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古くから続いてきたものがただ続いていくことが伝統ではない。
伝統とは、今を生きる人間の営みを活気づけ、豊かにしてくれる過去の制度のことである。
伝統を守るには、絶えず伝統を選び直す必要があり、それはときにラジカルな変革となって現れることすらある。
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ということで、今の時代を象徴するネットというものと、将棋というもののリンクがどうできるのか。

それを皆で考え、検証していく事が、

皆で今の時代を生きている事の証であり、楽しみではないかとも思う。
コメント (3)
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