波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

野見山暁治さん逝く

2023年06月26日 | 日記・エッセイ・コラム

野見山暁治さんが22日に102歳で亡くなった。
画集や画像の絵はさっぱりわからない。だが、形や色や線は全部初めて見るものばかりで、本物を見たらきっと圧倒される。ポケットから富士山を出すことはできないけれど、その存在感を描くのが絵だ、というこの画家の言葉を思い出す。あまたの業績は検索したら一杯出てくるし、新聞やテレビも特集を組むだろうから略。

 

絵と違い言葉はわかりやすい。伸び伸びした精神が紡ぐ優しく鋭く豊かな言葉。家にあるエッセーは全て持ち出し禁止。名高い『四百字のデッサン』、妻との別離を描く『パリ・キュリイー病院』、画論・画家論『空のかたち』、老いの中で思い出す女性『とこしえの(記憶の中の人)お嬢さん』、『野見山暁治 絵とことば』、選りすぐりの言葉による『のこす言葉 野見山暁治 人はどこまでいけるか』。ゆっくり再読してみよう。高峰秀子さんと野見山暁治さんの2人が小説家ではない達人エッセイストの双璧だろう。

 

ールの大きさが日本の画家のイメージと桁が違う。一番は「何を描いたかわからない」絵だが、暮らし方も、人間関係も、画家の社会的使命も、文章表現も、あらゆるものが想像を超える。嘘と本物を見抜くというか、その目が美を捉えそれを表現する才能を思うと同時に、それを良しとする日本という国もそれほど悪くは無いのではないかと思ってしまう。
いやー本物を見たい。死ぬまでに一度、人の評価や絵の値段に全く拘束されずに描き続けた画家に触れたいなあ。最も高齢で、高名で、戦争反対と平和の尊さをはっきりと発言し生き方にもした画家の絵を。それにしても、大江健三郎氏、坂本龍一氏、が亡くなる今年だ。


画像は東京近代美術館蔵『岩上の人』(1958年)。この頃は、未だわかりやすい(笑)。この画家の画集や文章を読むと、絵を職業にする画家にはなれても本物の画家にはめったになれるものではないなあと思う昨日、波風食堂で読書交流会。神様と話が出来るという著者の本が登場。こういうのが出回っている今の困難さの時代を思う。

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