波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

「父の晩年」(山口瞳著)

2013年12月28日 | 読書

    「父の晩年」(山口薫著:河出書房新社)読んだ。その合間合間のPhoto_2
年賀状も書き終わった。随筆みたいな短編12。人間への共感、生きる悲しみ、自身へのちゃんとした値踏みを、鋭い言葉と文体で洒落た感じで綴るからついつい読んでしまった。肉親のことを材料にこうも冷徹に書くのが小説家なのか。平成7年没。
    まともな「戦中派」が醸す昭和の上質な空気、真っ当な男の言い分がある。立男はこういうのに惹かれる。恐れ多いが、出世作「江分利満氏の優雅な生活」と、「波風立男氏の生活と意見」は題名だけだが何だか似ている。

 

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 ちょっと長いが引いておく。「2兆9437億円という防衛費を『飢えるアフリカ』に進呈する。専守防衛という名の軍隊を解散する。日本はマルハダカになる。こうなったとき、どの国が、どうやって攻めてくるか、その結果がどうなるのか…私は知らないが、こういう国を攻め滅ぼそうとする国が存在するならば、そういう世界は生きるに値しないと考える。私の根本思想の芯の芯なるものはそういうことだ。」(「男性自身 木槿の花」の中の「私の根本思想」)中曽根内閣の時にこれ書かれて17年経つ、平成14年度予算の軍事費4.9兆円。別に冷徹に考えなくとも、事態は着々と進んでいる。


前出「男性自身  木槿の花」は向田邦子氏追悼で名高いが久世光彦氏の巻末解説もいい。才能と美貌に恵まれた好きな異性を失った時の深い悲しみをこんなふうに言葉で表現できるものなのか…一昨日出した賀状が住所間違いで3枚戻ってきた。向こうから来たら封筒に入れて…と思う。早い内に出すと年内に戻ってくるんだ、初めて知った。

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