ミャオの家より

今はいないネコの飼い主だった男の日常

ワタシはネコである(130)

2010-01-30 17:53:46 | Weblog



1月30日

 暖かい日が続いて、ワタシは飼い主と散歩に出るほかは、ベランダで寝て過ごし、夕方、いつものサカナをもらってからは元気になり、夜の闇の中を1時間、2時間と出歩くようになった。
 なんだか、春が近づいて来ているような気がするのだ。これほど、気温の変化がワタシの行動を左右するなら、北から南まで、長く連なる日本列島に住んでいるそれぞれの地域の日本ネコたちにとっても、少しはその体や生態に差が出てくるのではないのだろうか。
 今も、大雪の中に閉じ込められている北国のネコと、桜が咲いて20度を超える気温の中で暮らしている沖縄のネコとでは、きっと違いがあるはずだ。

 飼い主から話を聞いたことがあるのだが、鳥たちの世界でも、住む地域によっては、個体差以上に、地域全体として明らかに差があって、それらは、同種の中の亜種(あしゅ)として認められているそうだ。
 例えば、南北間や地域で違うものには、カケスとミヤマカケス(北海道)、エナガとシマエナガ(北海道)、メジロとメグロ(小笠原諸島他)などいろいろとあるそうだ。

 ということで、ここ九州の山の中の、土俗ネコを父親に持つワタシの場合は、外国種であるタイのシャムの血筋を母親から受け継ぎ、時々半ノラになる雑種の家ネコだから、もうそれは、亜種だとか個体差だとかいうところの話ではなく、ただのフツーのドラネコにすぎないのだ。
 それでどうした、と言いたい。ワタシは、別に有名でなくてもいい、珍しい種類だとか血統書つきだとか、もてはやされなくてもいい。
 ただ、毎日ちゃんとエサにありついて、安全に寝ることさえできれば、そうして生きながらえていければ、それで十分なのだ。

 「なんという暖かさだろうか、もうホウジロのさえずりの声が聞こえている。
 朝は0度だったものの、日中は12度までも上がり、黄砂のようにかすんだ空を見ると、もう春先のような気分になる。ミャオと散歩に出ると、いつもの日当たりの良い斜面には、あのオオイヌノフグリ(1月22日の項)の小さな花が、五つも六つも咲いていた。

 北国の方では、雪が多いそうだが、この九州の山の中では、明らかに今年は雪の日が少なく暖かいのだ。やはり、地球温暖化なのではと思ってしまう。
 一昨日、NHK教育で放送された『極寒シベリア犬ぞりで8000キロ』。(それは興味深いドキュメンタリー番組だったが、40分というのは短かすぎだ。)その中で、犬ぞりの旅での妨(さまた)げとなった、暖冬で凍らない河のことをあわせて思い出した。
 むしろ一般的には、暖かくて良いことの方が多いのだろうが、ただ、私は、山が雪に被われる冬の寒さも好きなのだ。これから、そんな厳しい雪の日がまたやって来るだろうか。

 さて、いつもの私のCDベスト10だが、今年は少し遅くなってしまった(’08は1.22、’09は1.10の項)。それは、去年買っておいたCDで、まだ全部聴き終えていないものがあったからでもある。
 昔、購入していたCDは、ほとんどが一枚ものだった。まあ、たまに3,4枚のセットものがあるくらいで、すぐに聴き終えていたのだが、最近、といってももう十年くらいになるが、ボックスに収められた廉価盤全集の出現で、その数十枚にも及ぶセットものを聴き終えるのに、すっかり時間がかかるようになってしまったのだ。
 とは言っても、われわれ音楽ファンにとっては、一枚当たり何百円にしかならないという、このクラッシックCD価格のデフレ状態は、実にありがたいことだ。
 もちろんそんな値段だから、ほとんどが、再発売ものや古い録音の廉価盤ばかりであり、新録音のいわゆる新譜CDは、買っても年に2,3枚にしかすぎず、最近CDが売れないというのは、そんなところに原因の一つがあるのかもしれない。
 さらに、私も、昔はあんなに熱心な音楽雑誌の読者だったのに、今では、年に一冊買うのがやっとというありさまで、つまりは、新しい音楽家たちのものより、昔の良く知っている、確かな評価のCDしか買わなくなったということだ。
 というわけで、これは、今さら自分の好みを変えようとはしない、全く、ガンコでケチでしみったれなオヤジが買った、去年のクラッシック音楽CDベスト10なのである。

1.”SACRED MUSIC” (『宗教音楽』 ヤコブ、クリスティー、ヘレヴェッヘ他 ハルモニア・ムンディ 30枚組、7989円 写真左)
2.”A SECRET LABYRINTH” (『秘密の迷宮』 ウェルガス・アンサンブル パウル・ファン・ネーヴェル ソニー・ミュージック 15枚組 6490円 写真右)
3.”MASTERS FLANDERS” (『フランダースの名匠たち』 エリック・ファン・ネーヴェル エトセトラ 10枚組 6690円)
4.”HAYDN THE COMPLETE SYMPHONIES” (『ハイドン交響曲全集』 アンタル・ドラティ指揮フィルハーモニア・フンガリカ デッカ 33枚組 6990円)
5.”HAYDN string quartets op.64,76&77” (『ハイドン弦楽四重奏曲集』 モザイクSQ ナイーフ  5枚組 5390円)
6.”ANTON BRUCNER The Symphonies”  (『ブルックナー交響曲全集』 パーテルノストロ指揮ヴュルテンベルグ・フィル ドキュメンツ 11枚組 1432円)
7.”MUSIC OF THE MIDDLE AGES” (『中世の音楽』 アルバ メンブラン  4枚組 980円)
8.”J.S.BACH Sonatas for violin and harpsichord ” (『バッハ、ヴァイオリン・ソナタ集』 ローテンバッハー ヴォックス 2枚組 1290円)
9.”RAMEAU Complete works for harpicord” (『ラモー、ハープシコード全集』 ピーター・ヤン・ベルダー ブリリアント 3枚組 1490円)
10.”FRESCOBALDI Fiori Musicali ” (『フレスコバルディ オルガン・ミサ集』 ロレッジャン ブリリアント 690円)

 以上、すべて輸入盤である。他に買ったものは10点ほどで、年間購入点数は、あわせても20点ほどにしかならない。ただし、箱ものが多いから、枚数は合計すると、130枚程にもなる。以下簡単に説明すると。

 (1) 今年、最大の収穫であり、去年の50周年記念50枚組ボックスと同じく、ハルモニア・ムンディ・レーベルの30枚組のセットものである。宗教音楽の名曲だけを選んだわけではなく、箱にも書いてあるように、コーナー・ストーン(基礎、土台)となったそれぞれのジャンルでの宗教曲を集めている。ただし、オラトリオの大作3曲は多すぎる気もするし、バーンスタインの『ミサ曲』だけは、余りにも異質な感じがしたが。
 しかし全般的に言って、演奏陣も、曲目も素晴らしいし、分厚い解説書とそれぞれの楽曲についてのPDF版CD(30枚目)も添付されている。
 一枚目の『キリスト教初期の聖歌』からルネッサンスを経て、『バロック時代の晩課』までの10枚は、特に良かったし、最後の29枚目の、ポール・ヒリアー指揮、エストニア・フィルハーモニー室内合唱団による、『17,8世紀教会音楽選』とラフマニノフの『晩祷(ばんとう)』の見事な合唱力は脱帽ものだった。
 すでに持っていたCDとの重複は2枚だけ、不必要なバーンスタインの2枚と併せても、残り25枚もあり、買ったことの喜びを十分に満足してさせてくれたボックス・セットである。
 (2)については、去年の9月5日の項を参照。
 (3) 上記(2)の指揮者パウル・ファン・ネーヴェルの甥(おい)にあたるエリック・ファン・ネーヴェルによる、15~16世紀のフランドル(フランダース)地方にまつわる音楽家たちの宗教曲を集めている。
 あの(2)のパウルの洗練された指揮と比べれば、どこか素朴な温かみが感じられるけれど、それは彼の地元でもある、フランドル地方への思いが込められているからなのだろうか。
 (4) ドラティ指揮のハイドン交響曲全集は、レコード時代、録音に定評のあるデッカから、数枚づつのセットものとして販売されていて、私は、そのうちの2セットを持っていたのだが、今回、全集として購入して、やはり、ハイドンの交響曲そのものにも、ドラティの演奏にも改めて感心した。
 (5) ’08年12月13日、18日の項で書いていたCDであり、ハイドンの室内楽を心やさしく味わうことができる。
 (6) 驚異的な価格というだけでなく、十分に聞きごたえのある演奏である。確かにオーケストラ編成規模が小さくて、響きが少し薄い気もするが、ブルックナーの時代当時のことを考えれば、ご当地での演奏であることも含めて、まずは十分に納得できるものである。
 (7) これは、スーパー店内の催事場での、CD特売コーナーで見つけたものだが、あの古楽演奏団のアルバによる、ヒルデガルト・フォン・ビンゲン等の中世の音楽を聴くことができる。
 (8) 去年の11月23日の項を参照。
 (9)、(10) ブリリアント・レーベルによる廉価盤新譜CDであり、この会社の企画力には、いつも感心させられる。ラモーの『コンセール集』は、それまではトリオ・ソネリーのものを聴いていたが、それ以上に穏やかで心地よく聴くことができる。ハープシコードのベルダーは、このブリリアント・レーベルではおなじみの奏者であるが、他にも、バッハの『平均律』(4枚組)も新譜として出ている。(10)は、フレスコバルディ全集の1枚だが、これからも続く楽しみな企画である。

 以上、私のささやかな楽しみでもあるクラッシック音楽だが、今では、自然界の音、鳥の声や風に吹かれる梢(こずえ)の音、水の流れる音や波の音などとともに、私をいやしてくれる音の一つなのだが、若いころには、それに加えて、もうひとつ、若い恋人のやさしい声があったというのに・・・。ミャーオ。
 おー、そうだった。ミャオ、今は、オマエの声があるからね。時々うるさい時もあるけれど、聞こえなくなると心配してしまう。そんなものなのだろう。」