引っ越し日の4月18日は雨だった
晴れ女のはずなのにおかしいな、おっとが「涙雨か」とからかう
それでも昼前には滞りなく搬出がすみ、宅急便を送ってすべての作業が終了した
午後1時、荷物と鳥かご2つを車に積みこみ、すこし早いけど出発することにする
男子のスッチは助手席に、コッチとあたしは後部座席に乗り込み「大洗」に向け走りだす
カゴは、防寒と怖がらせないために「段ボール箱」の中に収納した
扉の部分など上手く開閉させられるようにして..............
コッチのかごにはあたしの片手をいれ、宥めながら行こうとしたんだけど
予想より遥かに怖がって大暴れ、すぐにSAに入って落ちつかせたけど
走りだすと再び大暴れ、そのうち息も絶え絶えになってきて慌てる
カゴの中であたしの手にしがみ付いてるんだけど、少しすると暴れだす
これでは大洗に着く前に死んでしまうと判断し.................
だめもとで、あたしが抱きかかえて行くことにした
両手を合唱するようにしてコッチを抱き、顎の下あたりに乗せ、あたしの頬にコッチの頬(顔)を密着させる
そうしたら不思議と大人しくなってジッとしているので、そのままノンストップで走ってもらった
怖がるときは顔を手で隠すようにしてあげたり、揺れやカーブなどでは両手を狭めて支えてあげたり
平たん道とか暑そうだったら緩めてあげたり、「自動制御装置」と化すあたしの両手...........
常に顔はあたしの頬につけ動かない、ときどき頭を指で撫でたり声をかけてみたり
手や指の間から外を伺ったりしてたけど、時々フニャ~ッとなって身体を預けてくるので「寝落ち」してるなと解った
そのまま2時間以上、ずっと「抱っこ」したまま大洗港に到着する......................
時間が早かったので車でしばらく待機、乗船10分前に嫌がるのを宥めてカゴに入れ、ターミナルへと向かう
そのかん男スッチは籠の中で黙って頑張りとおす、運転席のおっとが声をかけながら2時間45分
ふたりして「えらいえらい」と褒めちぎってやるが、疲れ果てて沈黙していた.................
同乗者は車で乗船できないので、わたしたちは一足お先に乗り込む
さぁ~いくぞっ!
騒いだら困るなと思ったので、「だいじょうぶだいじょうぶ」と声をかけつつ
だけど船に近づくにつれ轟音はするし、知らない人の声は聞こえるし揺れるし
恐怖でふたりともひと鳴きも発せず........................
船の乗務員の方達はとても親切で、部屋まで誘導してくれ速やかに入室できる
ホッとするまもなくコッチが騒ぎだし、カゴからだして宥めてるうちにおっとも到着
船の振動がカゴに伝わり可哀想なので、カゴはソファーに置いてあげた
それでもスッチは元気がなく、エサもあまり食べない...........
・・・出港前・甲板から・・・
出港前に夕食(ビュッフェ)をすませ、おっとは大浴場へ.........気づいたら出港していた
やけに揺れるなと思ったら静かに出港、さよなら関東さん
どうやら海がすこし荒れていたらしく、思っていたより揺れた
船酔いしそうなので、あたしはずっとコッチと一緒に横になっていた
そのうちおっとが酔っ払って大鼾、コッチはおっとの胸の上でテコでも動かない
仕方がないからそのまま灯りを落とし、あたしも薄いハイボールをちびちびと呑む
窓からは、対岸の灯りが一列に並んで静かに左へ流れていくのが見える
気づいたら船酔いは消え、眠くなってきた、コッチをそっと抱きカゴに入れる
疲れていたのだろう、まったく抵抗せず寝てしまった
あたしも疲れた
ここ数日のクセで、夜明け前に目が覚める
みんなを起こすと悪いから、暗いままで考えごと
白々と明けてきたのでカーテンをひくと
スマホで調べたら、宮古の手前あたりのよう
美しい海岸線、山がじかに海へ流れこんでいるような
景色をながめながら、いろんな思いが胸をよぎる
オカメ達も起きる
おっとにべったり
スッチにも外の景色をみせてやろうとしたけど、余計なお世話だったよう
海は、ふたりには恐ろしいだけの存在のようだ(海鳥は並走して飛ぶし)
6時半になったので大浴場へいく、2~3人しかいなくて気持ちよかった
湯船につかりながら、朝の海の景色を眺めるのは最高に贅沢なことだった
眺めすぎて湯あたりし、そのまま甲板にでて海風で火照った身体を冷やす
だ~れもいなくて、贅沢に貸し切りで、海はどこまでも青くキラキラと光って
朝の太陽はびっくりするくらい強く輝いていて、関東とはぜんぜん違った
もう東北にいるんだなって自覚した
ぐんぐんぐんぐん、北へ向かって進むのに身を任せていたら
初めてあたしは、「北海道へ帰るんだな」って心の底から思った
思えば私達の結婚生活は、北海道よりも関東でのほうがずっと長く
そのせいか「北海道へ行く」ってふうにしか思えなかったから
違うんだな、帰るんだ私達はって思った
船旅っていうのも良いもんだな、ゆっくりと気持ちが切り替えられる
強引にスウィッチを押すんじゃなくて、優しくチェンジする感じ
部屋へ戻っておっとと交代(コッチを)、おっとの入浴後は朝食へ
ちょうど八戸あたりだったかな
・・・なにかが泳いでる・・・
下北半島の突端を通過
さよなら~本州ぅ~
・・・午後、苫小牧港・・・
下りる時はみんな一緒に車に乗り込める
ペット同伴組は、みなより早く誘導され駐車場へ
午後2時前、札幌へむけ車を出発
またまた「抱っこ作戦」、しかもタオルやショールを追加して「おくるみ」で(笑)
高速を50分ほどで「新さっぽろ」の不動産屋へ行って契約、そのご「すすき野」のペット同伴OKのホテルに入る
あんまりキレイじゃないし環境も良くなかったけど、みんな一緒で気を使わなくていい
本当は妹宅の予定だったんだけど、こちらのほうが気がラク~と変更させてもらった
ここでも一緒に寝たがり「添い寝」を強要するコッチ(布団をめくって撮ってもらった)
このあと近所にラーメンを食べにいく
ほうりゅう本店って書いてあって、そういえば店主とか女性の従業員とかTVで見たことある
壁には色紙がズラッ、ミシュランがどうのと宣伝ポスター、玄関前もこれ見よがしに自慢もの
不味かなかったけど、たいして美味しくもなかった
嫌味な店、あたしは好きじゃない...........
翌朝、早朝に新居へ向かい引っ越しをすませる
ほぼ4日ぶりにカゴからでたスッチ(疲れ果てているし怒っている)
お疲れ様でした~みんなっ
荷ほどき作業・新居づくりへとつづく