memories on the sea 海の記録

海、船、港、魚、人々、食・・・などなんでもありを前提に、想い出すこと思いつくこと自由に載せます。

漁に出るのに船は要らない   ベトナム

2012-12-31 00:04:44 | 亜細亜海道
漁師はぴんと張ったロープを伝いTra Vinh省の海上の小屋にたどり着く。これは海中に立てた杭の上の小屋で、漁師はそれを家と呼ぶが、たどり着くには垂直に近いロープの上を歩かねばならない(12月9日TNN)

これはベトナム南部のTra Vinh省のこと。男の仕事は張られている眼下の網を見守り,漁獲を集める船がやってきたら網を引き揚げることだ。その網具はロープに結ばれ海底には錨が入っている。だからその名前はベトナム語で“hang day” (海底へのロープ とこの仕事では呼ばれ、メコン地帯では一般的なものだ。この省のDuyen Hai 地区にはこの “hang day”が岸辺から20 kmも先にある。この仕掛けは2平方キロの中に12基ある。漁師等は彼らの小屋をハノイの一本柱のパゴダ(仏塔)にたとえる。

それぞれの小屋はおよそ6平方米で、海面から15mたかさにあり板張りの床で3人が寝る広さがある。小屋には枕、薪ストーブ、鍋、どんぶり、があり石油ランプを夜間に使用する。食料は船で運ばれてくる、しかし彼らの娯楽は携帯ラジオだけである。陸地に脚をつけるのは一月のうちの数日に過ぎず、潮が低いときに限られる。この仕掛けの漁師のHaiは少なくとも10日間は連続してここにとどまらねばならないという。3人で一組でこのロープと杭でできた仕掛けの仕事をする。これが12基ある。彼らの仕事は網を引き揚げ、ボートに魚を渡し網をきれいにしたあと網を海に戻す

「でもこの仕事の稼ぎはよい。一日あたりひとり70万ドン、月に1400万ドン(672米ドルになる」と彼はいう。しかし危険に比べればそう大金ではないという。網の点検に降りた漁師が海中で網やロープに絡まり戻ってこないことがある。だから漁師等はそうした事故に備えてナイフを常時携帯しているもののそれでは不十分だ。また小屋が海中に落下することもある。

この“day”漁法のためには海上で暮らさないもののもっと困難な仕事の仕事が必要だ。魚がいる場所を見付け、そこに杭を立てるのだ。彼らはほとんどボートの上で生活する。漁期の開始(デルタ地帯の洪水は秋だ)にあたり彼らは沖に出て魚群を探し場所を選定する。それぞれの杭は海底に50~70センチ埋められているが、それを維持するためにワイヤーの針立てが必要だ。その技は家族ごとに伝承され、ベテランが教える。

杭たて作業者のBui Van Cuongはボートあたり4人が乗り4本の杭を一日でたてることが出来るが,波の荒い日には2本となる。「すべてを設置するには半月はかかる」という。くいとワイヤーの費用は3億ドン($14,400)だから Cuongは新しい杭を立てるより古い壊れたものを補修したほうがよいというが、補修はなかなか大変だ。「我われは魚を追ってくいと網を仕掛ける。だから機動性が求められる」危険な仕事にかかわらず、猟師たちは辞めようとはしない。

小屋が壊れて負傷しTeo Emは数ヶ月ベッドですごした。でもまたボートに戻りたいと「海が恋しいという」Dong Hai集落ではCuongを含め多くの家族がこの仕事を3世代続けている。かれは15歳のときに父につれられ海に出た、だから二人の息子もそうするという。「時にはこの仕事をやる気がしないこともあるが、これはしなければならない仕事で運命だ」と。

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