Fish On The Boat

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『在宅介護』

2017-02-26 00:21:59 | 読書。
読書。
『在宅介護』 結城康博
を読んだ。

介護士のひとだとか、主介護者じゃない介護者のひとだとかが、
介護をざっくりと勉強するのにはいいかもしれない読み物です。

介護関連について知りたいひとは切羽詰まったひとが多いと思うから、
わかりやすく階層化されていて参照しやすい構造の本が喜ばれると思う。
その点で言うと、本書はちょっと難しくてシンプルではないかなあ。

在宅介護や施設介護の例を紹介しつつ、
特別養護老人ホームや有料老人ホームなどなどについてのこと、
介護保険サービスはどんなものなのか、
その使い方や実はけっこう複雑なシステムなどについて、
いろいろと書いてあります。

最近は、入院してもすぐに退院させられたり、
医療費の節約のための入院90日ルールと呼ばれるものがあるようですが、
医療療養病床や介護療養病床を備えている病院ならば、
それ以上の長期入院が可能なのだというのを知りました。
このうち、介護療養病床は廃止されるようです。

グレーサービスや劣悪な施設などについても、
ページを割いて説明していました。
やっぱりたくさん、人権を無視したような施設はあるようです。
そして、経済的にも体力的・精神的にも追い込まれた家族なんかが、
そういうサービスでもしょうがなく被介護者を
入所させたりしちゃうんですね。
ほんと難しいんですよ、この介護という事象は。

最後の方では、
介護士の賃金が安すぎることにもふれ、
その打開策を探る部分もあり、
また、ベトナム人を例に、
外国人介護士にしてみれば、
日本人には安い賃金も大金だったりすることも
明らかにしています。

2025年には、
現在10兆円規模の介護保険給付費が、
二倍の20兆円規模まで膨らむと考えられているそうです。
団塊の世代が75歳以上になるからなんですが、
またそこで、人材不足の問題もあり、
たとえば40年後などには、
はたして介護の分野は破たんしていないかと
著者は心配しています。

介護士の賃金が低すぎること、
介護サービスの事業所の経営が成り立つこと、
介護保険の費用を国民の大きな負担にしないこと、
安価で上質の介護サービスが多くのひとに与えられるものであること、
そういったことを顧慮するには、
財源をどうするか、という大問題から目をそらすことはできません。

介護保険料をあげすぎずにやっていくには、
消費税をもっと上げるだとか、
インフラに投資する何割かを介護の分野に回すだとか、
著者はいろいろと提言していますが、
なかなか難しそうな印象を受けましたね。

社会の有りようが変わっていくこと、
それも低成長時代に突入したこの時期に、
ブラック企業やニートや少子化などなど、
僕にはそういうことも絡み合っているように思えてきます。

まああれこれ書きましたが、
この一冊でかなり介護の分野を知ることができます。
以前、講談社新書の超高齢社会についての本を読んで、
ここでも紹介したのですが、
併せて読むと、奥行きのある
「介護について」の知識が得られると思います。

市役所に相談するなり、
ケアマネージャーに相談するなり、
もはやそういう状況のひとにも役に立つと思います。

それにしても、
デイサービスやショートステイって便利なんですけども、
介護しているうちの母は病状や薬なんかの関係で、
これらを利用できずにずっと家で見てなきゃならないのが
大変なんです。
親父のタガがたまにはずれて、
それはやめろといっているんですけども、
そうなる一因に、こういう状況もあるんですよね。
難解な問題ですよ、本当に。

ぼくは椎間板ヘルニアがあるからそういう仕事は無理ではあるんですが、
意欲的に介護の仕事をされているひとを知ると、
すげえなあと感謝と尊敬の念を持ちます。
光が射せばいいなあという分野です。
なにか力になれるアイデアなんかがでてこないかなあ・・・。


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