Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『図書館の神様』

2015-12-16 23:16:55 | 読書。
読書。
『図書館の神様』 瀬尾まいこ
を読んだ。

『図書館の神様』というタイトルですが、
舞台は高校の図書室です。
こまかいことを言う、とは思いますけども。

ときおり、うそ臭さや無理を感じるような場面がありますが、
それでも、おもしろく最後まで読めてしまった。
小説って、やっぱりフィクションだね、架空のものを楽しむものだね、
という気分になる種類の小説です。

主人公が国語の講師なので、
川端康成や山本周五郎、夏目漱石らの作品についての、
ひとこと、ふたこと、があるのですが、
著者はそういう文学を経て、こういう小説を書いているのかなあと思いました。
あとがきを書いている作家の人は、夏目漱石こそかなり読んでいるけれど、
川端康成や山本周五郎については、それほど知らない(といいつつ、
読んだものがちらほらあるみたいでした)と言っていた。
作家を目指す者はやはりブンガクというものに多く触れているものなのかな、
と祭り上げ的に、作家の人たちの存在を高く感じてしまいました。

そうそう、そのあとがきを書いた作家の人、山本幸久さんは、
自分が短編を書く前や執筆最中に、
ペラペラとめくる川端作品や山本作品があるということでした。
そういうのって、文体がうつってきたりするんじゃないかな、と
そういうのをあまり好まないぼくは頭をかしげたところです。
そんな堅いことを言うなよ、という種類のものなのかなぁ。

小説の内容のほうは、その文体とともにさっぱりとしていて軽く、
10代の子たちこそ楽しめるのかな、と思えました。
YA(ヤングアダルト)文学って言うのがあるじゃないですか、
あれに当てはまるのかな、なんてちらと脳裏をよぎりました。
そんな軽い読み心地なのに、
細かい固有名詞だとか、なにかの過程だとか順序のおこなわれる描写は
堂々としてリアリティを持っていました。
そうなんですよね、最初に「うそ臭さや無理を感じる」といいましたが、
そういうリアリティのある描写や設定が土台にあるから、
展開やキャラクターのうそ臭さによって、どっかに飛んでいってしまわないのです。
ふわりとしていても、しっかり重りがついている。

ぼくが書くと、重りを何kgにするかにこだわった末に、
かなりの重さのものにしてしまうきらいがあるなぁと、
自らを客観的に眺めるきっかけになりました。
ふわり感ってぼくには大事なのかもしれない。

というようなところですかね。
面白かったし、あっという間に読めてしまいました。


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