Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『からくり民主主義』

2015-09-28 23:09:32 | 読書。
読書。
『からくり民主主義』 橋秀実
を読んだ。

「からくり・民主主義」ではなくて、「からくり民主・主義」だそうです。
内容に関しては、巻末の村上春樹さんの解説によってすっきりしました。

ノンフィクションなんだけれど、各章に結論というものがない。
それが悪く言えば、著者の意見や考え方が無いように映るのだけれど、
よく言えば、白黒決めずにそのままのかたちで問題をあぶり出していて
真実性があるということになる、というところに、
もやもやがあるんですね、読んでいて。

そういう気持ちわるさを序盤から感じながら、
距離を置いた視点だなあ、だとか、考えちゃうんです。
だけれど、安易に結論や意見をおしつけるような手法というのは、
実はほんとうじゃなくて、著者のように、
深くなるまで深めていく、それも自然にあるがままを見て、
というやり方を経てこそ、言えることってでてくるのでしょう。
村上春樹さんが解説でそのようなことを書かれていて、
「ああ!」と思いました。
物書きとはかくありたいですね。

また、もう10年以上前の本だから、トピックが古いのです。
しかし、いまに繋がる「しがらんだ世界」がそこにはあるのでした。
そして、春樹さんがいうように、
それが「ぼくらが生きている困った世界」なのでした。

短気をおこさず、困ったものは困ったものだとして、
正統に弱りはててみる。
そういう姿勢だってあるんだよって、
この本で教えられたような気がします。

ぼくはけっこう、場合のよっては気の長いところがあるというか、
物事を留保しながら考えるところがある人なのですが、
著者の橋秀実さんほど徹底して、
弱っちゃうくらい困るまで、現実をありのまま見ることって、
たぶん耐えられないんですよ。

こういう橋さんの姿勢っていうのは、
声高にものを言って、主張を押し通そうとするような、
パワーで意のままにしようとする、
いま流行にみえる風潮とは正反対だなあと思いました。


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