Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『潔く柔く きよくやわく』

2013-11-01 14:59:49 | 映画
長澤まさみさんの主演映画『潔く柔く』を観てきました。
原作はいくえみ綾さんのコミックで、女性の間ではかなりのヒットした作品のようです。

そういう女性向け漫画が原作なので、
女性が特に楽しめるような、男性はなんとなくしかわからないような
映画になっていやしないかなと少しばかり心配していましたが、
それはまったくの杞憂で、頭の先からつま先まで映画の世界に浸かりながら観られて、
心が静かにしゅわしゅわするような感じで感動したり泣きそうになったり、
ときにはくすっと笑えたりと、充分に楽しませてもらって帰ってきました。
傑作です。

主人公カンナ(長澤まさみ)の、罪が無くさわやかで甘い青春が突然の終わりを告げる。
そして抱えた苦しみ、痛み。
一方、ロクも独自の苦しみを抱え持っていたわけで。
そんな二人を中心に話は進んでいって終わっていきますが、
全編にわたって、フィルムの淡い感じの色遣い、セピアがかった色遣いがやさしいのです。
あれは苦しみや痛みのみの色遣いではありませんね。
彼らから発せられる、苦しみを抱えたうえでの切なさややさしさ、そしてそれとリンクして、
見守るほうの(これは監督や観客の視点であり、神の視点です)暖かさや慰めやよりそう感じを
表しているでしょう。そしてそれは、人生の苦みを通り越した上での「潔く柔く」
つまり、潔くて柔らかい感じでもあると思います。
映画が終わって流れてくる斎藤和義さんの「かげろう」という曲のテンポやサウンドも、
それらとピッタリでした。そういうわけでこの映画の世界観の構築面は抜群です。

また、ここでは紹介しませんが、印象的なセリフも多数ありました。
哲学的、というと堅苦しく聞こえてしまいますが、
カンナたちが人生や苦しみに真正面から向かいあったからこそでてくるような
思いや達観やらがときにセリフになって彼らの口から発せられます。
そういうところを流してみてしまわないように、ぜひとも
観に行く方はなるべく途中でトイレに立たないでほしいですね。

それにしたって、長澤まさみちゃんは美しいわかわいいわスタイルがいいわで、
ストーリーの導入時は彼女に魅了されていて、そのうちにいつのまにか
映画に引き込まれていました。素晴らしい女優さんです。

一昔前は、秋になると女性が好きそうな切なかったり
コミカルだったりしながらちょっと泣けるような
ハリウッド製の恋愛映画が公開されたものですが、
邦画でもこんなに観ていて夢中になってしまう恋愛映画が
公開されるようになったなぁと感じていました。

お金を払って、時間を作って観るだけの価値のある映画でした。
それでリターンが倍返しです。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする