公共交通機関を利用してマンハッタンを訪れた。平日の晴天の朝であるが通勤ラッシュはなく活気の無い空気が漂っている。それは、日中最高気温が氷点下のニューヨークの真冬の気温が影響しているのであろう。そして、病の長期的な流行に対する恐怖心。更にアメリカ新政権の白けた発足等がからみ合っている様だ。街の繁華街であるタイムズスクエァー周辺の御店も閉店が目立つ。ABC 放送がモーニングニュースの公開中継を行っていたが、立ち止まって観ていたのは僕一人だけという有様。約束の時間まで余裕があったので、どこぞでコーヒーを頼んで時間を調整しようと思い、凍て付く通りを暫く歩いてみたが、暖かい店内で寛げる場所や店は一つも無かった。また、トイレも無い。街は人を拒んでいるかの様相である。少し遠回りではあったが街の中心にあるグランドセントラルステーション(駅)に立ち寄って寒さをしのぎ時間を調整する事にした。建物の中の広いホールには複数の警察と武装した軍人が立ち並び警戒態勢中であり、居辛い雰囲気であった。
マンハッタンを歩くと首を揚げてビルを眺める機会が多いので首が疲れる。路上の角に一台の使い込んだBMWのGSが停められていた。街を歩いていて時々自分の波動に合う対象があると気持ちがホットする。凍える外気の中でこういった一台のバイクを目にする事によって、閉塞感を感じるこの時代だからこそ夢のある事を考えよう、準備しよう。そんな声援を感じるのである。
マンハッタンでの帰り道、あちらこちらからビル工事のノイズが聞こえてくる。高層ビルがリノベートされたり新築されている。このノイズを確認しながら、今朝に感じた、街は死んでいるんじゃないのか。という感情を否定した。時代の進行とは複数の事が同時進行でからみ合うが、街はアフターコロナを見据えている。街は冬眠状態の様に停滞している様に感じるが、同時に真冬の極寒の中で春に開く蕾が準備されているというニューヨークの鼓動を感じた機会であった。