万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

円・人民元直接取引―”中国版ブレトン・ウッズ体制”への布石?

2012年05月27日 15時06分49秒 | 国際経済
円と人民元6月にも直接取引…米ドル介在させず(読売新聞) - goo ニュース
 日中韓の貿易量が増加する中、東京に人民元の取引市場が開設され、米ドルを介在させてきた決済方式から、円と人民元の直接取引への転換が始まるそうです。一見、外国為替市場の自由化政策とも受け取られるのですが、中国側が、元の相場管理政策を継続するとしますと、日本国にとりましては、必ずしもメリットばかりではなさそうです。

 ブレトン・ウッズ体制崩壊後の世界は、変動相場制と固定相場制が併存する、不安的な状態にあります。日本国は、円の取引を自由化していますが、中国は、”調整可能な固定相場制”を選択し、人民元の変動幅には上限が設けられています。異なる通貨体制を敷いている二つの国が、直接取引を開始するとしますと、これまで以上に、日本国は、中国の対外通貨政策の影響をストレートに受けることになります。否、両通貨間の相場は、中国政府が、一方的に決定することになりかねないのです。人民元には金兌換性はありませんが、直接取引は、一定の変動幅は認められたとしても、人民元に対して各国通貨の相場が固定化される、一種の”中国版ブレトン・ウッズ体制”に、日本国が組み込まれる布石となるかもしれません。両国とも、基本的には輸出志向の傾向がありますので、中国は、元安に誘導して、圧倒的に優位な立場を確保するかもしれませんし、あるいは逆に、対外投資を拡大するために元高に誘導すれば、日本国企業は、中国系資本の格好のターゲットとなる可能性もあります。

 民主党政権は、日中韓FTAをも推進させたいようですが、相手国が、積極的に為替相場の管理を行っている場合には、相手国中心の体制に取り込まれる怖れがあります。ロンドンやシンガポールに先駆けての画期的な試みとされていますが、予め、将来を予測したリスク管理を準備しませんと、思わぬ罠に嵌るのではないでしょうか。

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コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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友愛は亡国へのキーワード?? (通りすがりのおじ様)
2012-05-27 23:17:28
反日国家と結びつこうなんて、自分達の外交能力がそれ程高いとの自己評価なのでしょうか?

領土が侵食されつつあっても、相手を刺激するのを避けて放置状態。

いい加減な事を言って回る鳩もきっちりと鳩小屋に戻す事も出来ない。

国内の問題も何一つ進展しない。

遊び感覚で国政をやってもらっては、こっちはたまったもんじゃないですよね・・・
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通りすがりのおじさんさま (kuranishi masako)
2012-05-28 15:01:05
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 日本国政府は、中国や韓国に対して、経済政策や対外通貨政策などについて、強く是正を求めることは、めったにはありません。この調子ですと、日中韓FTAにしましても、円と元との直接取引にしましても、中国ペースで進み、中国側の”構想”に巻き込まれてしまうかもしれません。かの国は、”国家百年の計”、あるいは、それ以上のタイムスパンで物事を進めますので、民主党政権のように、パフォーマンス型の政治では、簡単に、相手の計略に絡め取られてしまいます。まことに、心配な限りです…。
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