万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ロシアの先制攻撃はMDの必要性を証明する

2012年05月22日 17時38分21秒 | 国際政治
欧州MD運用 露反発「先制攻撃も」(産経新聞) - goo ニュース
 ミサイル防衛(MD)は、攻撃からの防御手段であることを考えますと、他国に対して、然したる脅威を与えるわけではないはずです。攻撃の意図を持つ国を除いては・・・。

 先日、NATO首脳会議において、欧州MDの初期段階の運用の開始が決定されたそうです。NATO側の宣言には、”MDはロシアの戦略抑止力を損なわない”との一文が加えられたそうですが、ロシアは、最新ミサイルの使用によるMD施設の先制攻撃まで示唆し、この計画を阻止する構えです。欧州MDの現段階では、移動式のICBMによる攻撃には充分に対応できないそうですので、ロシアは、今のうちに、暴力で破壊を試みようとしているのかもしれません。しかしながら、ロシアの”先制攻撃発言”は、実のところ、欧州MDの必要性を自ら証明しているようなものではないかと思うのです。核兵器を搭載したミサイルによって先制攻撃が行われるとしますと、最初の着弾の時点で、先制攻撃を受けた側は、破滅的な被害を受けるからです。防衛施設の攻撃をも辞さないとする国が存在するからこそ、MDは、脅威に晒されている周辺諸国にとって、不可欠な技術なのです。

 ロシアは、先制攻撃を示唆してMD配備を撤回するよう脅しているのでしょうが、恫喝は、むしろ、NATOにMD配備を急がせる方向に作用するのではないでしょうか。誰もが、核の恐怖による支配から逃れたいものなのですから。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2012-05-23 07:54:35
おはようございます。核兵器は抑止力と云うより外交交渉の為のカードでしかありません。
核攻撃をしたとしても、あとはどうなるのでしょうか、占領するにしても放射性物質の除染や最低限のインフラの整備・・戦争に勝っても費用がかかりすぎ採算が取れないのです。
先年、北朝鮮が砲撃事件を起こしましたが、あのような事件を起こすような狂気の指導者や政権が出来た時に侵略を防ぐための保険のようなものです。
欧州の国防上の危機は、天然痘など空気感染で広がる病原体を使用したテロの方が大きいのです。
通貨統合により各国の往来が自由になった反面、感染者を送り込み病原体を拡散しやすくなっています。
ロシアより怖いのは北朝鮮です。
旧ソ連から購入した病原体を大量に保有している可能性が高くアラブのテロリストに渡る可能性も捨てきれません。
欧州は移民政策を取ったことにより、イスラム教徒とキリスト教徒の対立が激化しています。
ビザの簡略化などで国境の垣根を低くする事は防疫の弱体化につながります。
MDや核戦略の裏で防疫体制の強化はされていると思うのですが、ギリシアをユーロから追い出せないのはクルド人を大量に送り込むと言っているからです。
そのためにギリシアが自らユーロ圏を出てくれるように仕向けている面もあります。
もう一つ怖いのは広範囲に渡る暴動が起きることです。
流言飛語を流し不安を煽り人々を暴徒化させれば大混乱が起き経済を崩壊させ世界恐慌を引き起こすことも可能なのです。
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ねむ太さま (kuranishi masako)
2012-05-23 09:27:53
 コメント、並びに、貴重な情報をいただきまして、ありがとうございました。
 コメントの内容を拝読いたしますと、欧州の危機は、日本国にとりましても、対岸の火事では済まされないように思えます。生物化学兵器によるテロ、移民政策推進による社会的対立、無責任な政府の下における暴動…。ミサイル防衛の必要性も然ることながら、日本国もまた、様々な脅威に直面しております。民主党政権は、危機対応能力を発揮するどころか、逆に危機を煽り、助長する方向に動いていますので、まことに心配な限りです。
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