万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

電力料金の高さは決定的な不利条件-復興予算から補填を

2013年01月24日 16時09分02秒 | 国際経済
昨年の貿易赤字、過去最大の6兆9273億円(読売新聞) - goo ニュース
 原発稼働停止と再生エネの拡大は、確実に日本国の経済競争力を削いでいます。昨日は、電力値上げで悲鳴を挙げている鉄鋼業への支援について書いたのですが、この案は、政府の支援を自由競争の原則に反するアンフェアな行為と見なす立場からは、批判を受けるかもしれません。

 しかしながら、企業間の自由競争も、競争条件が等しくなければ、公平とは言い難い側面があります。実際には、グローバル市場といえども、競争条件が平準化しているわけではなく、国ごとに、著しい違いがあります。賃金、物価水準、資源調達力、人材などは、国によって格差があり、たとえ、資本規模や技術力などにおいて同レベルであったとしても、どの国で所在するかによって、企業間の競争力に、決定的な差が生じてしまうのです。競争条件において不利な国に所在する企業は、それだけで、最初からハンディーを負っています。電力料金もまた、国家間競争力を決定する要素の一つであり、電力料金の高さは、即、その国の企業の先天的な不利条件を意味するのです。このハンディーを是正するために、政府が支援を行ったとしても、この国に固有の不利条件は、企業努力では克服できませんので、フェアな企業間競争を歪めているとは、一概には言えないのではないかと思うのです。

 現実のグローバル市場は、国ごとに競争条件に違いがあり、むしろ、その格差が、企業の配置戦略の判断材料となっています。このため、製造拠点は、労働コストが低く、不動産価格が安く、そして、電力料金も廉価な国…に流れてゆきます。こうした厳しい現実があるのですから、不利な条件にある国の政府は、出来る限り、不利条件を緩和し、企業がフェアに闘えるような政策を実施しませんと、産業の衰退は避けられないのではないでしょうか。このように考えますと、電力危機は、大震災に起因していますので、原発が再稼働されるまでの間、復興予算から、電力価格の値上がり分を補填するような対策があってもよいのではないかと思うのです。

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8 コメント

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Unknown (ねむ太)
2013-01-24 19:38:17
こんばんは。規制改革・自由競争の意味を一面でしか捉えられない連中が、マスコミに出演し勝手な言説を振りまき、官僚として表面だけしか見る能力のなかった者は元官僚の肩書きで自治体や政治家秘書として世論を形成しようとする事が大問題でしょう。
競争には自由競争と切磋琢磨があり、我が国で製造される製品の品質・サービスが世界でトップクラスになれたのは、各分野に数社づつの企業が参入し品質向上の競争を繰り広げてきたからに他なりません。
自由競争と言っているのは、価格競争を繰り広げ最終的には寡占状態になれば経済が強くなると、現実乖離も甚だしい馬鹿な考えでしかありません。
寡占状態になれば、品質は低下し価格は上昇する、消費者にとって利益は全くありません。
構造改革も行き過ぎた規制緩和を引き締めるところは引き締め、細部まで規制の網がかかって国民に不利益をもたらす分野は慎重に規制緩和をすることも必要です。
外国との競争は国の利益を守り、国民が恩恵を受ける事が出来なければ意味はありません。
但し安全保障の観点から寡占状態にしておく事が必要な産業もあります。
電力の自由化や発送電分離は百害あって一利なしです。(セイの法則が成り立たない事を理解できないのでしょう)
電力の自由化や発送電分離で価格が安くなると、言っているのは店頭で買う商品と、使用して初めて不良品か良品か分かるエネルギーの区別もつかない馬鹿でしかありません。
事故が起きてからでは遅いのです。
無責任に反原発を叫び、当面は火力で凌ぐと、言っていた連中はアルジェリアや中東の危険性をどれだけ判っていたのか疑問です。
ここに至っても自衛隊法改正反対・憲法改正反対を叫ぶ連中は国民の安全など全く考えず、海外に行くのは自己責任、死者が出ても悲痛な表情で最もらしい事を言っておけば国民を騙せると思い上がっている国賊でしかありません。
活断層の問題で原発再稼働が危ぶまれますが、地質学者程度のことなら遺跡発掘の作業員でもわかります
遺跡発掘も地層を調べ、どれくらい昔に、どのような事が起きたか、わからなければ調査は出来ません。
考古学の先生に解説を受けながら一年もすれば分かるようになります。地質学者は、その程度です。
原発の安全性を高めるためには、土木・建築・原発、各分野で豊富な実務経験者で無ければ危険だから廃炉にしようで終わってしまいます。
実務経験の豊富な者は危険性の予測と同時に対策を立てる事が出来ます。
学歴中心社会ではその事が理解されないのが問題です
緊急時でありますから、ピンチをチャンスに変える為に発想を変えればいいのです。
ロシアが売りたがっている、天然ガスを購入し国が補助金を出すことです。
プーチンも求心力が下がり始め、財政的にも苦境に立たされていますので、ロシアに恩を売って中国に対する牽制に協力させるのも一つの方策でしょう。
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ねむ太さま (kuranishi masako)
2013-01-24 20:34:05
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 競争条件が等しい場合の自由競争と、競争条件がまちまちである場合の自由競争とを峻別して対処しませんと、結局、独り負けとなる可能性もあると思うのです。国内市場は、前者ですが、グローバル市場との名称でぼやかされていますが、実際の国際市場での競争は、後者ですので、多様性を知り尽くした上で、相当に戦略を練らなければ、製造拠点も、人材も、技術も、資本も、全てが流出して、貧困化してしまうのです。民主党政権時代には、政府が自ら、自国の経済をこの方法で潰していました。
 ロシアから天然ガスを購入することは、価格競争を働かせこともできますので、有望な案ではあると思いますが、まずは、原発を早期に再稼働させませんと、貿易赤字が長期化するのではないかと思うのです。
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経営者がヘタレすぎる (兼業農家)
2013-01-25 10:08:35
理論としては仰るとおり菜のですが、何故か当事者たる産業界が全く声を上げません。

ここにも、今現在の日本の経営者のヘタレぶりが伺えます。何故正論を言うのに世論を気にするのか。自分たちのしていることはそんなに後ろ暗いこととでも思っているのか?

現在の経営者の体たらくではこのようなことを議論する必要すらないと思います。

企業経営者は、自覚しろ、お前たちの代わりなどいくらで居るし、フジテレビの末路を。
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兼業農家さま (kuranishi masako)
2013-01-25 12:42:59
 コメントをいただきまして、ありがとうございまいした。
 民主党政権時代には、政府が、発言の機会を与えず、意図的に産業界の声を排除しようとしておりました。政権が交代したのですから、今後は、産業界にも、発言のチャンスに恵まれるものと、期待しております。もっとも、もう少しは、経営者の方々にも積極性があってもよいとは思うのですが…。
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今は電気が主役 (坂東 平家)
2013-01-25 17:05:51
電気がなければ何事も始まらない。ご飯も炊けないし、マンションでは水も出ない、トイレが使えない・・・。
産業界では電気がなければ何にも作れない今や産業界の主食は産業のコメと言われた鉄から電気に変わりつつあるのである。その電気代金が高くなれば外国との競争に負けて会社はなくなる・・失業者があふれる・・。それもでいいのが反日左翼と脱・反原発を掲げる似非市民たち。困った存在であるが。でもこの前の選挙では惨敗、世間は、日本人の多くはそれを知っている。それにしても産業界は弱腰すぎる、必要なものは必要、代替えエネルギーはまだ当分先、コストも不明・・と言うべきである。兼業農家さんのコメントも当然と思える。
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坂東平家さま (kuranishi masako)
2013-01-25 22:26:11
コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 産業界が弱腰であることも一因なのですが、原発をめぐっては、マスコミと原子力規制委員会の両者も、原発再稼働の障害になっていると思うのです。マスコミの背後に、中韓が潜んでいるのでしょうが、国民世論が、今なお、反脱原発であるかのような幻想をふりまいております。一方、原子力規制委員会も、中立的な科学者を装いながら、メンバーの信条によるものなのか、あるいは、何らかの背景があるのか、はじめに結論ありきで、再稼働させないために仕事をしているようなものです。菅前首相は、自民党政権になっても、原発を簡単には再稼働できないように細工をしたと発言したそうですが、政府も国民も、こうした陰湿な細工こそ、見破るべきと思うのです。
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Unknown (Unknown)
2013-10-30 03:55:19
快方快挙が人並みに支度されたら果たせて想像つく感銘の取り柄になります。
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Unknownさま (kuranishi masako)
2013-10-30 07:47:51
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 せっかくに、コメントをいただいたのですが、本記事との関連性が掴み兼ねず、ご返事を差し上げることができませんでした。なにとぞ、ご了承くださいませ。
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