万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

権力分立が人類を救う?-バイデン大統領次男の訴追

2023年06月21日 10時03分23秒 | 統治制度論
 ジョー・バイデン米大統領の次男であるハンター・バイデン氏については、かねてより黒い噂が付きまとっておりました。その始まりは、同氏が修理に出していたノート型パソコンの受け取りを忘れた2019年4月のことなのですが、パソコンに保存されていたデータの内容が明らかになりますと、アメリカのみならず全人類を巻き込む大スキャンダルに発展しかねないとして、全世界が一時騒然となりました。何故ならば、流出したデータは、公職にあるアメリカの大物政治家が権力を私物化し、親族総出で海外にて利権を漁っていた姿を明るみにしたからです。しかも、疑惑の舞台がウクライナ並びに中国であったのですから事は重大です。

 もっとも、ハンター氏のウクライナ疑惑並びに中国疑惑につきましては、リベラル系大手メディアのみならずFacebookやTwitterといったSNSも火消しに奔走したために有耶無耶にされ、父バイデン氏も、不正選挙疑惑に起因する混乱の末に大統領に就任しています。いわば、火種が燻る状態が続いてきたのですが、今般、ハンター氏が自らの罪を認めたことで、少なくとも同氏が違法行為に関わっていたことだけは事実として確認されることとなりました。疑惑の段階から事実へと移行したことにより、バイデン政権時代にウクライナ紛争がロシアの軍事介入により激化し、中国による台湾有事のリスクが高まったのも、単なる偶然とは思えなくなってきます。

 それでは、ハンター氏のウクライナ疑惑とはどのようなものであったのでしょうか。同疑惑は、単なる政治家親族によるコネ就職や利権漁りに留まりません。ハンター氏は、2014年にウクライナの国営天然ガス会社ブリスマの取締役に就任し、コンサルタントとして年間100万ドルの報酬を得ていたとされます。ここまでは、国民の誰もが眉をひそめる政治家一般に見られる‘悪しき習性’です。ところが、同社に対して汚職の嫌疑で同国の検察の調査が及ぶと、父バイデン氏はアメリカ合衆国副大統領の地位を利用して外部から圧力をかけ、疑惑をもみ消すために同社の調査を担当していた検察官を辞任させてしまったというのです。

 ハンター氏がブリスマ社の幹部となった背景には、ウクライナのシェールガス開発計画があったとも指摘されています。ドイツをはじめEU諸国は、エネルギー資源の供給をロシアからの輸入に依存していたのですが、ウクライナにあってシェールガスの大量採掘に成功しますと対ロ依存の構図は一変します。ここに高いシェールガス採掘技術を有するアメリカとウクライナが結びつく理由が見出せるのです。そして、同開発計画に際して両国間の仲介に当たった両国の政治家の懐にも多額の利益が転がり込む仕組みが用意されていたことでしょう。有望なガス田は、目下、ロシア軍の占領下にある東南部地域にあるとされていますので、ウクライナ紛争には、エネルギー資源の争奪戦という側面が見えてくるのです。

 あるいは、世界権力がアメリカとロシアの両国を操っているとしますと、同権力は、どちら側が勝利しても同地のガス田に関して一定の利権を確保すると共に、自らの資金源となるエネルギー資源の価格をつり上げるために同紛争を利用しているのかもしれません。さらには、激しい戦闘やミサイル等による破壊を演出することで、兵器や復興資金を含めた巨額の支援を各国から引き出すと共に、第三次世界大戦へと紛争を拡大させることで(中国には、戦略物資となる石油等を経済制裁中のロシアから安価で入手させ、台湾侵攻を準備させる・・・)、有事体制、すなわち全世界の諸国における全体主義体制への転換による人類支配を目論んでいるとする推測も、あり得ないわけではありません。

 かくしてハンター氏の訴追は陰謀の実在性を証明し、人類支配の計画を頓挫させるチャンスとなるのですが、この展開を可能としたのは、アメリカ合衆国憲法に定められた権力分立体制であった点は注目されます。仮に、共産党一党独裁体制の中国であったならば、トップの座にある習近平国家主席の家族や親族が訴追されるという事態は到底あり得ないことでしょう。司法の独立性が保障される体制であればこそ、政治家による権力の濫用や私物化が阻止され、アメリカ国民のみならず、全人類が救われるかもしれないのですから。皮肉なことに、ウクライナにおいて権力分立の原則を破壊した行為が、バイデン大統領にブーメランの如くに返ってきているのかもしれません。

 もっとも、今般の訴追については、ハンター氏が司法取引に応じたためとされており、直接に有罪を認めたのは、故意の納税怠慢や薬物依存状態における違法な銃所持など、ウクライナ並びに中国疑惑との直接的な関連性は薄いとされています。この点については、共和党からも手ぬるいとする批判が上がっており、同氏に関連する疑惑の解明がどこまで進むのかは今後の展開を見てゆくしかありません。ロシア発とは言え、ハンター氏は、ウクライナにおける生物化学兵器開発の資金提供にも関わったとする情報もあり、ハンター氏の闇は底なしに深いようにも思えます。そして、政界の闇が深いからこそ、人類の危機を前にして、建国に際して世界に先駆けて権力分立の原則を導入したアメリカの統治制度の真価が問われているとも言えましょう。

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