万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

マイクロソフトのAIデータセンター対日投資の先にあるもの

2024年04月19日 10時56分59秒 | 日本政治
 先日、日本経済新聞においてアメリカのマイクロソフト社が、AIデータセンターを拡充するために凡そ4400億円の対日投資を行なうとの記事が掲載されていました。生成AIの利用拡大を見越した大型投資であり、日本国内に置かれることで個人情報や機密が護られるとして概ね好意的に紹介されています。しかしながら、同記事も指摘しているように、データセンターが稼働すると大量の電力を消費するという大問題があります。

 生成AIの電力消費量は、検索等の利用の数倍ともされますので、同サービスの普及は、電力問題と直結します。‘AIが奪うのは仕事ではなく電力ではないか’とする指摘が既に見られますが、2024年1月にIEA(国際エネルギー機関)が公表した試算によれば、2022年に約460TWh(テラワット時)であったデータセンターの消費電力量は、4年後の2026年には凡そ倍となる約1,000TWhに跳ね上がるそうです(同電力量は、日本国の総消費電力に匹敵・・・)。つまり、生成AIの利用拡大と比例して、電力使用量も増大してゆくことが予測されるのです。

 この問題に対しては、新たなテクノロジーの開発による省力化によって克服できるとする見解もあります。実際に、NTTが開発中のtsuzumihaはChatGPTと比較して学習時で300分の1、推論時で70分の1にコストダウンできるとされます。しかしながら、一端、データセンターが建設されますと、省力テクノロジーの発展に合わせて頻繁に設備を更新するのも難しくなりますので、日本国内におけるAIデーターセンターの設置は、電力問題と切り離すのは困難です。目下、日本国政府は、マイクロソフト社のみならず、国内で事業を行なう海外IT企業に対して安全保障や国民の情報保護の観点からデータセンターの国内設置を求めていますが、電力の問題に注目しますと、必ずしも‘問題なし’とは言えなくなるのです(もちろん、国内データセンターが設けられていたとしても、必ずしも情報が海外に漏洩・流出しないとは限らない・・・)。

 生成AIの利用増加に伴うデータセンター数の増加とそれに伴う電力消費量の急速な伸張が予測される一方で、日本国内では、原発再稼働の遅れ、再生エネルギーの普及、急激な円安、ウクライナ紛争などの要因が重なって電力料金の高騰に見舞われると共に、電力需要の増加する夏期や冬期では電力不足も懸念されています。この状態にあって、データセンターが続々と日本国内に建設されるとしますと、一体、何が起きるのでしょうか。

 今日、電力市場の自由化が進み、電力市場が開設されていますので、電力料金もおよそ市場の需要と供給のバランスで決まるようになっています(再生エネの買取制度も、FIP制度の導入により一先ず市場価格を織り込むように改革・・・)。供給不足が予測されている以上、生成AIの利用拡大は、さらに電力事情を逼迫化させ、価格の上昇を招く要因ともなりましょう。

 電力逼迫に伴い、電力供給量が一定であるとすれば、水利と同様に、電力の配分に関する議論が生じる可能性もあります。仮に、政府が国民生活を重視し、家庭向けの電力供給を優先するとしますと、データーセンターの設置数を制限する、同センターの電力使用量に上限を設ける、省力型への転換を義務付ける、生成AIのサービス提供を制限する、あるいは、国民や企業に対しても生成AIの使用の自粛を呼びかける・・・といった対策を講じるかもしれません。その一方で、政府は自ら積極的にデジタル化やAI導入を推進してきましたので、IT大手の事業拡大や利益を優先し、国民向けの電力供給を制限しようとすることでしょう(家庭用電力料金のみの値上げなど・・・)。近年の国民軽視グローバリスト重視の姿勢からしますと、後者の可能性の方が高いようにも思えます。

 そして、電力料金の高騰と電力不足は、中国国営企業のロゴ発覚問題で取り沙汰されることとなった「アジアスーパーグリッド構想」の推進に口実を与えるかもしれません。同構想は、今では中国の一帯一路構想に組み込まれていますが、おそらく、世界経済フォーラムに象徴される世界権力が狙っている全世界を対象としたエネルギー戦略の一環なのでしょう。同構想の存在を想定しますと、日本国内の電力問題は、あるいは、同構想への参加を迫る‘追い込み作戦’であるとも考えられます(あるいは、ワクチンビジネスから推測すれば、次世代型の原子炉開発に乗り出しているビル・ゲイツ氏の先行投資?)。

 このように考えますと、マイクロソフト社による対日巨額投資は、岸田首相が語るほど歓迎すべきことではなく、むしろ、警戒すべき予兆のようにも思えてきます。もっとも、生成AIは期待されているほどには使い勝手も利便性も高くはなく(所謂‘コスパ’が悪い・・・)、EVと同様に失速してしまう、という展開もあるかもしれません。その一方で、最も恐れるべき未来は、マイクロソフト社の生成AIサービスにおける最大の顧客が、国民監視を目的とした日本政府、否、その背後に控えている世界権力であるというものです。このケースでは、対日巨額投資は、エネルギー分野を超えて世界支配の問題へと広がってゆくことになりましょう。

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