万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

G7は悪循環を止められる?

2008年02月11日 18時21分17秒 | 国際経済
G7声明文の要旨(ロイター) - goo ニュース

 現在、各国とも株式市場の相場が下落傾向にあり、その原因の一つとして、ヘッジ・ファンドなどによる原油買い・株式売りによる値ざや稼ぎが指摘されています。国際投資家の投資先の多様化は、これに呼応する証券取引所の取引商品の拡大にも及び、アジア市場にも、排出権などにも巨額のマネーが流れ込みそうです(本日付日経朝刊)。それでは、この傾向が続きますと、どのような結果が待ち受けているのでしょうか?

 まず言えることは、製造業にとっては、冬の時代が到来しそうということです。原料や排出権価格の上昇は、企業の収益を悪化させます。また、証券市場からのマネーの逃避は、企業の資金調達を難しくしますし、設備投資が減少しますと、生産性のアップや温暖化対策の速度も遅くなるかもしれません。

 そうして、何よりも心配されることは、商品市場発の輸入インフレが、世界規模で発生することです。商品市場へのマネー流入は、全ての国の物価水準を押し上げる効果があります。膨張した投資マネーが、経済成長によって充分に吸収されなかったり、あるいは、経済の効率化をもたらす投資に向かわない場合には、全般的なインフレ、あるいは、バブルを招いてしまうのです。インフレは、国民生活を直撃しますので、決して望ましいことではありません。

 この現象は、経済のメカニズムにおける悪循環と言えそうです。商品市場に資金が集まれば集まるほど、経済活動の方は衰退するのですから。今回のG7の話し合いを見ましても、どうやら、こうした悪循環を断ち切る政策協調は打ち出されていないようです。もとより、外因性のインフレに対しては、中央銀行の政策には限界がありますし、財政政策も、国庫に余裕のある国にしかできません。果たして、誰が、この悪循環を止めるのでしょうか。もしかしますと、それは、投資の流れを健全化するための商品市場の規制政策かもしれません。

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