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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ワクチン・リスクこそ国民が知るべき情報では

2021年02月19日 11時30分46秒 | 日本政治

 今月17日より、日本国内でも医療従事者を対象としたワクチン接種が始まりました。‘全国民接種’を目指す日本国政府としては、できる限り多くのワクチン接種を願っているのでしょう。そして、同時に、早くも‘ワクチン警察’ならぬ‘ワクチン安全警察’なる人々がネット上に出現してきているように思えます。

 

 ‘マスク警察’とは、マスクをしていない人を見つけ出しては、装着を強要しようとする民間の人々のことを言います。この前例に倣い、ワクチンを打っていない人々発見しては接種を迫る‘ワクチン警察’の登場が既に予測されていたのですが、‘ワクチン安全警察’とは、それに先立って出現してきた‘世論取り締まり隊’を意味します。それでは、この‘警察’、何を取り締まろうとしているのかと申しますと、メディアであれ、ネット上の情報であれ、何であれ、ワクチンに対する危険性を伝える警告や疑問等です。

 

 例えば、先日、国立感染症研究所が、ワクチン効果の弱体化が懸念される新種の変異株の発見を報告しましたが、同報告を報じる記事に対しても、‘無責任’として非難するコメントが付されていました。この情報は科学的な事実ですので、国民が知るべきことは言うまでもありません。むしろ、‘報道しない自由’を発揮して、もみ消してしまう方が国民に対して無責任となりましょう。これらの人々は、僅かなりとも国民がワクチンのリスクに気が付くような内容があれば、‘無責任’、‘国民にリスクを煽っている’、‘コロナ禍収束の邪魔をしている’として、非難の言葉を浴びせかけるのです。

 

 現実には、今般のワクチンには、短期的なリスクのみならず、中長期的なリスクが存在していることは、否定のしようもないような事実です。例えば、昨年の12月28日に公表された日本感染症学会の提言書において指摘されているリスクも無視できるものではありません。臨床試験におけるアジア系の被験者の率が少ないとする指摘に加え(アジア系の人々に対する有効性は未知数…)、mRNAワクチンは比較的安全であると評価しながらも、繰り返しの投与やLNP(mRNA鎖の分解を防ぐための脂質でできた脂質ナノ粒子)の長期的な安全性については、明らかになっていないとしています。短期的なリスクについても、とりわけ2回目の接種にあっては、若年層に高い頻度で38度以上の発熱が見られたそうです(16%)。

 

 それでは、多くの人々が最も関心を寄せている中・長期的リスクについては、どのようにレポートされているのでしょうか。大変重要な部分ですので、以下に、そのまま引用いたします。

 

「また、ワクチンによる直接的な副反応とは言えませんが、接種を受けた人が標的とした病原体による病気を発症した場合に、接種を受けていない人よりも症状が増悪するワクチン関連疾患増悪(vaccine-associated enhanced disease, VAED)という現象にも注意が必要です。過去には、RS ウイルスワクチンや不活化麻疹ワクチン導入時に実際にみられています。またデング熱ワクチンでは、ワクチンによって誘導された抗体によって感染が増強する抗体依存性増強(antibody-dependent enhancement, ADE)という現象の可能性が疑われ、接種が中止されました 14)。COVID-19 と同じコロナウイルスが原因である SARS(重症急性呼吸器症候群)や MERS(中東呼吸器症候群)のワクチンの動物実験でも、一部にVAED を示す結果がみられています。COVID-19 ワクチンの動物実験や臨床試験では、これまでのところ VAED を示唆する証拠は報告されていませんが、将来的に注意深い観察が必要です。」

 

 同文章に見られるワクチン関連疾患増悪や抗体依存性増強は、遺伝子ワクチンに限らず他の従来型のワクチンでも起きてきたことなのですが、新型コロナウイルスが変異しやすいRNAウイルスであればこそ、こうした有害事象が発生するリスクは高まることとなりましょう。ワクチンを接種すれば、‘ウイルス感染ストレス’から脱却できるとする説もあるものの、中長期的なリスクを考慮すれば、接種した人々は、‘ワクチン接種ストレス’という、新たなストレスに晒されることにもなりかねないのです(変異株出現の情報の度に不安になってしまう…)。

 

科学的な情報までも否定する態度と、客観的なリスクを正直に指摘する態度とでは、後者の方が信頼に値するのは言うまでもありません。接種の可否の選択は、最終的には個人のリスク評価に委ねられることとなるのでしょうが、少なくとも、‘ワクチン安全警察’のような活動は、人々のワクチンに対する科学的、かつ、客観的な評価さえ歪めてしまうのではないかと懸念するのです。

コメント (2)
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