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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

朝鮮半島の南北逆転現象-仕掛け合う米中?

2019年08月29日 14時01分24秒 | 国際政治
 韓国の文在寅大統領による突然のGSOMIA破棄は、日本国政府のみならず、アメリカ政府に対しても相当の衝撃を与えたようです。本日も、シュライバー米国防次官補が強い口調で「韓国に即座にGSOMIAに戻るよう求める」と述べたと報じられています。

 トランプ米大統領による発言ではありませんので、同政権の公式見解であるかどうかは分からないのですが、少なくとも国防省内部では、アメリカを中心とした日米間の情報共有体制から韓国が離脱することは、アメリカの安全保障体制を揺るがす事態として認識されているのでしょう。常識的に考えても、中国が軍事力の増強に努め、北朝鮮もまた核・ミサイル開発を諦めていない中でのGSOMIAの破棄はあり得ないことです。文大統領によるスキャンダル隠しではないか、とする指摘もありますが、自己保身のために安全保障を蔑にする大統領が存在するとすれば、それはもう私益のために国民を犠牲に供する‘売国奴’とも称されても致しかたない背信行為です。

 傍から見ますと信じがたい愚行なのですが、文大統領がGSOMIA破棄の決断に至った背景には、表からは見えない別の公算があったように思えます。政権発足当初から、文大統領の親北姿勢は際立っており、他の如何なる国との友好関係を犠牲にしても北朝鮮を優先しているかのようです。米韓関係が揺らぐのも文大統領の過剰な親北傾斜にあるのですが、親族関係等、北朝鮮に対して個人的な思い入れがあるにせよ、あまりにも不自然です。北朝鮮の金正恩委員長から罵倒されても、笑顔で同国にすり寄るのですからマゾヒストでない限り、あり得ないお話です。

 そこで考えられるのは、文大統領を動かしているのは、北朝鮮に対するシンパシーではなく、強大な軍事力を以って東アジアで覇権を築きつつある中国、あるいは、そのバックとなる勢力ではないか、という推測です。韓国の親中政策は文政権に始まったことではありませんが、朴槿恵政権の時代に開いた中韓の二国間関係をさらに発展させ、中北韓の三国による緊密な三国間関係を構築することこそ、文政権の‘至上命題’であったかもしれないのです。つまり、現下の韓国の怪しげな動きは、中国による朝鮮半島併呑政策の一環なのです。

 その一方で、アメリカが、朝鮮半島全域を自勢力に取り込もうとする中国の動きを黙認するはずもありません。中国が韓国に食指を動かすならば、アメリカは、対中対抗措置として北朝鮮にアプローチした可能性も否定はできません。そして、同国としては、米韓の同盟関係を維持しつつ、あるいは、米軍撤退後にあっても韓国を親米勢力圏に留めながら、北朝鮮をも自陣営に組み込むのが最も望ましい策であったことでしょう(親米でさえあれば、北朝鮮主導の南北統一も許容範囲であったかもしれない…)。同政策を想定しますと、トランプ米大統領が北朝鮮に対してすこぶる‘甘い’理由も理解されます。

 以上の推測がただしければ、朝鮮半島では、奇妙な逆転現象が起きていることとなります。朝鮮戦争における敵味方関係が逆になるのですから。果たして、このねじれ現象は、どのような結末を迎えるのでしょうか。この結末には、朝鮮半島全域が中国、あるいは、アメリカの勢力下に置かれる、南北逆転において両国が対立する、元の鞘に収まって対立が継続する、の4通りのシナリオが考えられます。朝鮮半島の両国とも信頼性に乏しい不安的な国であることを考慮しますと、日米が匙を投げる形で中国の支配下に入る可能性も否定はできないように思えるのです。

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コメント (8)
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