万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国にはストレートに国際法の遵守を要求すべき

2015年07月23日 15時07分33秒 | 国際政治
中国は建設的対応を=菅官房長官―ガス田開発、自民が懸念
 東シナ海において、中国が新たに12基もの海洋施設を建設している実態が明るみとなり、日本国の懸念が深まっております。日本国側の非難に対して、中国側は、”争いのない中国の管轄海域で行っており、中国の主権の範囲内だ”と述べておりますが、中国による一方的な採掘施設建設は、明らかに国際法に違反しております。

 「海洋法に関する国際連合条約」の第63条には、資源が複数の国の排他的経済水域に広がっている場合に関する行動規範を定めています。この条文によりますと、沿岸国には、地域的機関等を通じて、当該資源の保存及び開発を調整・確保するために必要な措置について合意するよう努める義務があります。東シナ海のガス田は地下で繋がっているですから、中国の管轄海域の如何に拘わらず、中国は、日本国との合意なくしてガス田の開発はできないはずです。第二に、東シナ海に関しては、中国が沖縄トラフまでを自国の大陸棚を主張する一方で、日本国は、等分の日中中間線を以って境界線としておりますので、”争いがある海域(係争海域)”であることは、中国側は百も承知なはずです。”争いがある海域”においては、同条約の第74条3項と第83条3項において、大陸棚であれ、排他的経済水域であれ、境界が確定するまでの間、一方的な開発を控える義務があると解釈されています。”一方的開発抑止義務”については、禁止説と条件付き許容説がありますが、後者にあっても、両国間の合意を阻害する場合には違法とされています。鉱床が地下で繋がっているようなケースにおける一方的な資源採掘は、何れの説でも禁じられているのです。これらの点に鑑みますと、日本国政府は、日中共同開発で合意した「2008年6月合意」の遵守を求めているものの、日本国が中国に強く要求すべきは、一般的な国際ルールとしての国際法(「海洋法に関する公債連合条約」…)の遵守です。中国の脅威の本質は遵法精神の欠如にあるのですから、この根本原因を取り除かないことには、チャイナ・リスクが消えるはずもないのです。そしてk、中国が、この要求を拒めば拒むほど、中国は、国際社会において、自らが犯罪国家であることを認めることにもなります。

 とは申しますものの、仮に中国が日本国からの抗議や要求を無視して施設建設を継続させた場合、日本国政府としては、何らかの対抗策を講じる必要があります。第一の手段は、上述したように、中国は国際法上の違法行為によって天然ガスを採掘したことになりますので、ICJといった国際司法制度を通して、損害賠償の訴えを提起することです。第二に、中国が、違法行為ではないと主張する場合には(現状ではこの主張)、日本国もまた、東シナ海において採掘を開始するのも一案です。中国側から抗議された場合には司法解決を提案し、中国側が採掘を中止しない限り、日本国側も採掘も停止しなければ、日本国だけが一方的に資源を奪われるという不正義を防ぐことができます。もっとも、仮に海洋施設の真の建設目的が軍事的使用にあるとしますと、海洋安全保障に関わる問題として、さらなるオプションを準備する事態となることを覚悟しなければならないと思うのです。

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コメント (2)
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