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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

EUの財政統合は困難な道

2010年06月27日 15時45分13秒 | ヨーロッパ
対ギリシャ巨額負担 独くすぶる不満 「支援の代わりに神殿よこせ」とも(産経新聞) - goo ニュース
 ギリシャのデフォルト危機を受けて、EUでは、IMFとの協力の下で、ようやくギリシャへの財政支援を決定しました。これを機に、EUの財政を一元化し、財政危機にある加盟国に対して、余裕のある国が財政移転をおこなうという制度、すなわち、財政統合も取り沙汰されているようです。しかしながら、この道は、なかなか険しいのではないかと思うのです。

 そもそも、財政とは、国家主権の根幹にかかわる領域であり、それ故に、EUでは、今日まで、財政権限は、加盟国の政策権限とされてきました。しかしながら、もし、財政権限をEUレベルで一元化するとしますと、加盟国の国民は、自らが納めた税金を自らのために使うことはできなくなります(全てではないにせよ・・・)。もちろん、ギリシャを始めとした財政危機にある諸国は、赤字財政を続けていても、EUから財政補填を受けられるのですから、この案には、大賛成であるかもしれません。一方、負担を強いられる加盟国にとりましては、一方的にEUに財源を吸い上げられてしまうことを意味します。しかも、財政負担能力が、政府が財政規律を守り、国民が勤勉に経済活動に勤しんだ結果であるならば、モラル・ハザードに対する不満はさらに高まります。

 かつて、イタリアでは、北部の「レガ・ノルド」という政党が、過剰な財政負担を理由に、南部との分離を主張したことがありました。EUレベルでも、ドイツをはじめとした負担国の国民が、たとえ”神殿”を提供されたとしても、財政統合案に容易に合意するとは思えないのです。

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コメント (4)
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