万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

東アジアとEUは違い過ぎる

2009年08月17日 15時42分28秒 | 国際経済
東アジア経済連携協定締結へ、検討開始で合意(読売新聞) - goo ニュース
 東アジアの経済圏が論じられる度に、欧州市場を造り上げたEUが、参考とすべきモデルとして取り上げあられてきました。しかしながら、東アジアとEUとでは、あまりに政治・社会状況が違い過ぎると思うのです。

 そもそも、EUは、自由主義国の集まりとして発足し、現在でも、加盟条件として、経済的な条件の他に、民主主義、基本的自由と権利の尊重、法の支配・・・といった政治的な価値を実現することが求めらています。こうした政治的な条件は、単なるスローガンではなく、EUの機構設計の原則となりますし、また、こうした価値観が加盟国に定着していませんと、加盟国間、あるいは、加盟国と個人との間で紛争やトラブルが発生してしまうのです。翻って東アジアを見ますと、これらの条件が満たされているとは思えません。しかも、もし、EUに倣って”人の自由移動”を認めるとしますと、東アジアの労働市場は、政治力をバックとした中国からの移民で占められてしまうかもしれないのです。また、中国政府が、長野での聖火リレーで起きたように、海外に居住する自国民を政治目的で動員する可能性も否定できません。経済協力の枠組みは、中国による周辺諸国支配の便利な道具と化すかもしれないのです。

 中国では、自国の国内ですら”人の移動”は自由化されておりません。この状態で、海外への自由移動だけは許可するとなりますと、その先の展開は見えています。EUの場合、中国のような人口大国であり、かつ、突出した軍事力を持つ国がなかったわけですから(むしろ、結束によるソ連邦への対抗の側面が・・・)、東アジアに覇権国を誕生させるような経済協力のあり方は、回避した方が賢明なのではないかと思うのです。

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